遺族は「死因は元交際相手の暴行」と主張 検察に再捜査を申し入れ 一度は「嫌疑不十分」で不起訴も… 新証拠の“医師の意見書”は採用されるか 2022年07月27日
2015年、兵庫県芦屋市の路上で、20代の女性が倒れて亡くなりました。
その女性の死は元交際相手の暴行によるものだったとして、母親が検察に再捜査を求めました。
有友尚子さん(当時27歳)は、7年前、芦屋市の路上で倒れて心肺停止の状態になり、その後、亡くなりました。
尚子さんが倒れる10分ほど前、タクシーのドライブレコーダーに記録された映像には…
【尚子さん】
「早く降りなさいよ」
【元交際相手】
「うるさいやめな」
【尚子さん】
「しつこいから降りてよ」
【元交際相手】
「うるさいやめなさい」
【尚子さん】
「もう会いたくないから」
尚子さんと元交際相手の男性が口論している様子が映っています。
2人はJR芦屋駅の近くでタクシーを降りて外に出ました。そして…
【元交際相手】
「おらぁ!やめろ!」
男性の大きな声が聞こえた直後、尚子さんは路上に倒れます。
タクシーの運転手は、「男性の手が女性の顔に当たった後、女性が崩れるように倒れた」と証言。
元交際相手の男性は、尚子さんに暴行を加えてけがをさせた疑いで逮捕されました。
しかし、男性は容疑を否認。
司法解剖の結果、「死因は脳機能不全と考えられるがその原因は明らかではない」として、暴行によるものとは断定されず、神戸地検は「嫌疑不十分」で男性を不起訴処分としました。
検察は、遺族に「病死だった可能性がなかったとはいえない」と説明したということです。
【有友裕子さん(71)】(7月27日)
「ほんとに悔しいの一言です。もっと、こちら側にとって納得のできる証拠を提示してほしかったです」
有友さんはその後、男性に損害賠償を求める民事裁判を起こしました。
この中で、尚子さんが脳機能不全を起こしたのは「殴られたことによってくも膜下出血が生じたと考えられる」とする新たな脳外科医の意見書を提出。
男性の暴行と尚子さんが亡くなったことの因果関係が認められ、損害賠償を命じる判決が確定しました。
新しい証拠を元に真相を明らかにしてほしい。
有友裕子さんは7月27日、神戸地検尼崎支部に対し、再捜査を申し入れました。
【有友裕子さん】
「意見書を読んでいただいて、細かくもう一度調べ直していただきたいとお願いしてきました。もう娘は言いたくても何も言えないので、私が代わってするしかないと思うので。娘の代わりに私が一生懸命頑張ろうと思う」
神戸地検は「申し入れの内容を検討の上、適切に対処したい」とコメントしています。
刑事としては不起訴になった事件ですが、民事裁判では「死因は殴打によるくも膜下出血」という新証拠が採用され、尚子さんは男性の暴行により死亡したと認められました。
一度不起訴になった事件を、刑事事件として再捜査することは可能なのでしょうか。
関西テレビ「報道ランナー」出演の菊地幸夫弁護士は…
【菊地弁護士】
「判決で無罪になったわけではないので、刑事事件として再捜査することは、法的には可能です。問題は、新証拠として提出された医師の意見書をどう見るかです。刑事は民事より認定のレベルが高いと言われています。そのハードルを越えるにふさわしい意見書であれば、検察側も再捜査をすると思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月27日放送)