神戸どうぶつ王国に新エリア「オッターサンクチュアリ」が7月22日にオープンしました。
コツメカワウソを間近に見ることができる展示エリア。
飼育規模としては、“国内最大級”となります。
その仕掛け人たちのオープンまでの”奮闘”を取材しました。
■野性味あふれるコツメカワウソ 神戸に”日本最大級”展示エリア
神戸どうぶつ王国で人気のコツメカワウソを間近に見ることができる新エリア「オッターサンクチュアリ」がオープンしました。
広い敷地内で、泳いだり、水草から顔出したり野性味あふれるコツメカワウソの姿を間近で見ることができます。
見に来た子どもたちは、「あっ、いた!!あそこにいるよ!」と草の茂みから続々と出てくるコツメカワウソたちの姿を目で追うのに必死です。
■コツメカワウソの楽園 仕掛け人は植物のスペシャリスト!?
このエリアを手掛けたのは、神戸どうぶつ王国の南都善彦(なんと・よしひこ)さん (37)。
南都さん、実は動物ではなく、”植物のスペシャリスト”です。
できる限り、動物たちの本来の生息地に近い環境を作り上げるのが南都さんの仕事です。
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都善彦さん】
「新しい植物を入れたときに、その植物がここのエリアの環境でどう育つかはやってみないと分からない。動物がいるエリアで、どういう風に植物が育つのか、動物が(その植物で)遊ぶのか、それを見るスタッフはそういないんじゃないですかね」
■コツメカワウソをより野生に近い形で 新エリア構想は”東南アジアの湿地帯”イメージ
そんな南都さんが、今回のミッション「人気のコツメカワウソをより野生に近い形で見てもらう」に取り組み始めたのは、5か月前のことでした。
“様々な動物と直接触れあえる”ことで、人気の神戸どうぶつ王国ですが、飼育されている8匹のコツメカワウソたちは、これまで屋内のガラス張りのスペースで飼育されていました。
佐藤哲也園長は、神戸どうぶつ王国の新たな目玉として、この人気者のカワウソたちをより野生に近い形で見てもらえるようにと屋外の広大な敷地に移すことにしました。
【神戸どうぶつ王国 佐藤哲也園長】
「いわゆる東南アジアの湿地帯に人が紛れ込んだような、紛れ込んだ湿地帯の中でコツメカワウソたちに出会う、そんなイメージ。私が前に行ったところ(東南アジアの湿地帯)の写真とか映像を見せて、『これだ、これをこのまま作れ!』と(南都さんに対し)言ったんです」
そう話す佐藤園長の隣で、南都さんは苦笑しながら
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「なかなか…難しいですけど」
6月、たくさんの樹木を積んだトラックが神戸どうぶつ王国に届きました。
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「きょうって九州の方ですか?産地?」
【樹木を運んだスタッフ】
「はい、鹿児島です!」
南鹿児島からコツメカワウソたちの新エリアの中に植える樹木が、たくさん届いてます。
積まれている樹木を見て・・・
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「思ったより大きかったですね」
■世界的にも”絶滅危機”コツメカワウソ 「ほぼ野生に近い状態で・・・」 園長の思い
元気に活動する8匹のコツメカワウソたち。
実はこのうち2匹は、数年前に東南アジアから日本へ密輸されたところを保護されたのを、神戸どうぶつ王国が引き取り育てました。
乱獲や生息地の状況悪化により、世界的にも絶滅の危機にあると指摘されているコツメカワウソは、国際自然保護連合のレッドリスト「危急種」に指定されています。
また、佐藤園長には、新たな展示場にかける“もう一つの思い”があります。
【神戸どうぶつ王国 佐藤園長】
「東南アジアの森林地帯は我々日本人が木材資源とかゴム、パーム油のプランテーション、それらから得られるものを利用してきて、それに対して、実際の生息地は荒廃している現状があるわけですから。ほぼ野生に近い状態で飼ってあげる、それが福祉にも繋がるし、繁殖にもつながるし、やらないといけないことだなと思います」
東南アジアの熱帯雨林を「神戸どうぶつ王国」で再現する。
難題と分かっていても、佐藤園長は妥協を許しません。
新エリアへ樹木を植えた後、佐藤園長は全体を見渡し、入念にチェックします。
【神戸どうぶつ王国 佐藤園長】
「あとはあれな、(植えた木々の)隙間から見える建物。これを早く隠してもらわないと」
これに対し、南都さんは
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「はい…結構隠れたと思うんですけど…まだまだですか?」
【神戸どうぶつ王国 佐藤園長】
「見えるじゃん」
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「(自分の背後にある橋を振り返りながら)橋から見た雰囲気で…」
また、佐藤園長から、”水の中に植物環境を作って”という新たな難しい要望がありました。
【神戸どうぶつ王国 佐藤園長】
「きょう、新たに『水の中の植物環境も作れ』と(南都さんに)言いました。こういう湿地帯には水中環境がとても大事ですからね」
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「ちょっとどうしようかなって、今から対策を考えます」
【神戸どうぶつ王国 佐藤園長】
「対策って、対応だよ(笑)俺に対しての対策みたいな(笑)」
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「しっかり対応できるように取り組んでいきます」
■オープン予定日まで1週間 コツメカワウソ”お引っ越し”完了 しかし・・・
オープンまであと1週間あまり・・・。
新しい展示エリアにコツメカワウソたちが引っ越します。
【神戸どうぶつ王国 佐藤園長】
「(コツメカワウソに)外に行かれちゃうから、あそこに(スタッフが)必ずいろよ!ずっと均等に(スタッフが立って)」
と、佐藤園長がスタッフたちにコツメカワウソが逃げないように念のため注意していました。
いよいよ、コツメカワウソたちの獣舎から展示エリアへとつながる通路の扉を開きます
何匹かのコツメカワウソたちが顔を出しますが、初めての光景に少し戸惑っているようで、なかなか出てきません。
おそるおそる出てきて、きょろきょろしたり、また通路に戻ったり・・・
目の前に広がる自然に興味深々の様子です。
しばらくすると、完全にから出て、あちこちに移動したり、倒木の上に乗ったりして、コツメカワウソたちは慣れてきたようです。
一方、人間たちはというと…
【神戸どうぶつ王国 佐藤園長】
「南都君!こっからあの柵が丸出しなんだよ!この辺(橋のルート)からずっと丸出しなんだよ、あれ隠して見えないように。丸見えなんだよね。(丸見えなのが)ちょっと不細工ね、それが」
コツメカワウソにとって理想の環境に近づけるため、細部までこだわる佐藤園長。
スタッフに何カ所も手直しを求めます。
結局、オープンは1週間延期になりました。
オープンするその日ギリギリまで、作業に取り組みました。
■待ちに待ったオープン! コツメカワウソ”生き生き”と 大人も子供も「かわいい」と大興奮
そして待ちに待った、オープンを迎えました。
ぞくぞくと園児たちが新エリアに入ります。
生き生きとしているコツメカワウソたちの姿を見て、園児たちは口々に「かわいい~」と喜んでいました。
広大な池や滝、そして40種類およそ200本の樹木が、自然豊かなコツメカワウソの生息地を再現しています。
野性味あふれるコツメカワウソの姿を間近で見て、大人も子供も一緒になって、楽しみます。
【お客さん】
「カワウソも適度にいっぱい見られて、泳いでいる姿も陸の姿も見られてすごい可愛かった」
【お客さん】
「すごい広々としていて、いきいきしていて本来の姿が見られたのかなって楽しかったです」
オープン後、南都さんに、お話を聞きました。
–Q:佐藤園長からの”厳しい要求”に応えられましたか?
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「(佐藤園長の要求に応えることは)大変だが、」やっぱり動物にとって自然環境とは非常に大事な部分となります。その中で人工物が極力見えないようにするのがいい展示の場であるという考えは(佐藤園長と)同じでした。その辺を注意して何回も手を入れていきました」
–Q:コツメカワウソのかわいい瞬間は?
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「池の中でカワウソが泳いでいて、潜りつつも池の上にある水草の間から顔をひょっこりとのぞかせている瞬間がかわいいです」
–Q:池の上にある水草についての”こだわり”は?
【神戸どうぶつ王国・植物管理部 南都さん】
「お客さんがコツメカワウソを見やすい形にするなど計算して作り、そして、コツメカワウソが池にある植物に対してどう行動するかによって観察しつつ修正や(植物を)加えていきたい」
オープンを延期してまでもこだわりぬいたコツメカワウソたちの新エリア「オッタ―サンクチュアリ」。
今まではガラス越しでしたが、これからは生き生きとしたコツメカワウソたちに間近で会えるようになりました。
(2022年7月22日放送)