大阪府内に“まさか”の特別天然記念物「ニホンカモシカ」が出現…その“わけ”は? 京都市内では公園にシカが“日常的”に出没…猟友会も「困った」 2022年07月21日
7月21日、関西テレビ取材班が向かったのは、大阪府泉佐野市の山中。
この山に、何があるのか?
【記者リポート】
「今年4月、この辺りで、ニホンカモシカが出現しました。センサーカメラに、その姿が記録されていたということです」
4月8日に撮影された映像には、全身を“ふさふさ”の毛で覆われた「ニホンカモシカ」の姿が映っていました。
ピンと立った耳に、短く鋭い角が特徴のニホンカモシカ。
日本の特定の地域にしか生息しておらず、国の“特別天然記念物”に指定されています。
名前はニホンカモ“シカ”ですが、実は、シカの仲間ではなく、「偶蹄目(ぐうていもく)ウシ科」という“ウシ”の仲間です。
近畿では、京都府の舞鶴市や綾部市、和歌山県の紀伊山地で生息するという情報がありますが、大阪府の泉佐野市で確認されたのは、とても珍しいということです。
【大阪府立環境農林水産総合研究所 生物多様性センター 幸田良介 主任研究員】
「まさか!のという感じでしたね。どう見てもカモシカだったので…大阪府内で見ることなんてまず“あり得ない”」
ただ、ニホンカモシカの姿がカメラに捉えられたのは、4月8日の一度だけ。
7月21日、現地で取材班も探してみましたが…見つかりませんでした。
環境省の調査では、近年、ニホンカモシカの生息地が山の奥から麓の方にまで広がっている傾向があり、今回は、和歌山の紀伊山地から、親離れしたばかりのニホンカモシカが、すみかを探すためにやってきた可能性があるということです。
その背景には…
【生物多様性センター 幸田良介 主任研究員】
「ニホンジカが全国的に増えて、結構、植生被害とかも起こっているんですけど、その中でカモシカと競合するような部分があるんじゃないかということも言われている」
山に野生のシカが急増し、「ニホンカモシカ」の餌場がなくなってきていて、追いやられている可能性もあるということです。
シカは、古来より日本に生息している動物です。
しかし、近年は個体数が増え、生息地も広がっていることから、さまざまな問題が生じています。
7月中旬には北海道札幌市の住宅街にシカが出没。市の職員や警察が出動し、人間に危害を加えないかの“監視”が続けられました。
【札幌市民】
「初めて(見た)。怖いしびっくり。こんなところ(街の中)に出るなんて思わないから」
その後、市の職員が、このシカを麻酔で眠らせて捕獲しました。
札幌市では市街地への出没が相次いでいるということです。
関西でも、身近なところにシカの姿が…
「あ、シカ。逃げる雰囲気もないもんね、平気ですわ」
京都市左京区の宝が池公園。野生のシカが“日常的”に現れます。
【京都府猟友会 洛北支部 今井剛さん】
「昔は、シカの出やすい山が限られてたんやけど、この頃どこでもいます。数が増えすぎて餌が足らんので、しょうがなしに出てきたシカが人慣れてしてしまったってことやと思います」
カメラを向けても草を食べ続けているシカ。
地元猟友会の今井さんによると、10年くらい前から公園にもシカが増え始めたといいます。
管理事務所などが餌付けを禁止する看板を設置していますが、植物を食べるなどの食害が続いています。
隣接する国立京都国際会館でも、つつじなどを食べられる被害が相次ぎました。
2年前からは柵を増設して対策していますが、柵の外側にある植栽は、シカに食べられてしまっています。
地元の猟友会では、市と連携して駆除に乗り出し、半年前に「捕獲檻」を設置しましたが…
【京都府猟友会 洛北支部 今井剛さん】
「設置してから1カ月で6頭くらい餌食いに来とったけど。5頭捕獲したらそれから後は来ない。やっぱり逃がした1頭が仲間うちでしゃべってんのか知らんけども…」
最近では、より住宅街に近い場所でも見かけるようになっているということです。
【京都府猟友会 洛北支部 今井剛さん】
「10年くらい前までは、左京区でいうと大見とか尾越とか山の上にしかおらんかったヤマビルをシカがどんどん運んできて…それが公園に入ったら、憩いの場所やのにどうするんや…」
かわいい仕草で人を魅了するシカ。しかし、一方ではさまざまな被害をもたらすこともあります。
これから、私たちはどう“共存”していけばいいのでしょうか。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月21日放送)