“SOS”発した中学生が自殺 第三者機関「市教委は“機能不全”」異例の会見 「遺族と向き合うよう」求めた報告書を市長は“守秘義務違反”で受け取らず…の異常事態 2022年07月20日
大阪府泉南市で、2022年3月、いじめを訴えていた中学1年の男子生徒が自殺しました。
しかし、4カ月がたった7月現在、教育委員会は詳細な調査を行っておらず、相談を受けた第三者機関が「機能不全だ」と指摘する事態となっています。
【泉南市子どもの権利条例委員会 吉永省三会長】
「何が問題かというと、教育委員会本来の機能が果たされていなかったのではないか」
7月20日午後、市の第三者機関が会見を開き、中学生の自殺を巡る市の教育委員会の“対応のずさんさ”を厳しく非難する、異例の事態となりました。
■小学3年の頃から“いじめ”訴える 教師や教育委員会に相談するも…
3月、泉南市の市立中学校に通っていた、当時中学1年の男子生徒が遺体で発見されました。
現場の状況から自殺とみられています。
男子生徒は、小学3年のころから、同級生らからひやかされるなどのいじめを訴えていました。
母親たちは教師や教育委員会などに相談してきましたが、「誰が言ったのか特定できないと指導できない」などとして聞き入れてもらえなかったということです。
【男子生徒の母親】
「“年少(少年院)帰り”など(事実ではない)ひやかしの言葉はあった。小学校の頃は突き倒されて擦り傷ができて帰ってきたこともあるんです。5年前からずっと市の窓口や教育委員会に相談していますが、結局何もしてくれない」
男子生徒が亡くなった後も教育委員会による詳細な調査は行われず、母親らによると、学校側は男子生徒が亡くなったことを他の生徒に伝えていないということです。
【男子生徒の母親】
「そもそもこの子が存在してなかったように扱うっていうのが非人道的というか。子どもを1人1人預かって育てていくという職業を選んだ人間とは、とても思えません」
■「子どもにやさしいまち」掲げる泉南市 市を検証する第三者機関の存在
「子どもにやさしいまち」の実現を掲げる泉南市は、全国でも珍しい子どもの権利に関する条例を制定しています。
市の事業が条例に反していないか検証する第三者機関も設置されていて、学校や教育委員会に不信感を募らせた母親は、この機関に相談しました。
【男子生徒の母親】
「真実を明らかにして、何が駄目だったのか、どこがいけなかったのかをはっきり、正々堂々としてほしいと思います」
第三者機関は、「生徒がSOSを発しながら自ら死を選んだのは重大だ」などとして、遺族らと向き合うよう求める報告書を市長へ提出しようとしました。
しかし市長は、報告書の受け取りを拒否したのです。
■市長が報告書を「受け取り拒否」 一体“なぜ”…守秘義務違反とは
【泉南市 山本優真市長】
「(守秘義務違反の)可能性もあると教育委員会から言われたら、私としては可能性を排除できない限り、なかなか(報告書を)公表することは難しいと判断しました」
「守秘義務違反」と指摘された第三者機関側は、困惑しています。
【泉南市子どもの権利条例委員会 吉永省三会長】
「(市教委が)合理的な根拠があってそう仰っているのではなく、我々の報告書を市長に提出されたくない、市民に公表されては困るという、そちらが強いのかなと受け止めざるを得ない」
一体なぜ、報告書の受け取りを拒否したのか。
20日午後、教育委員会の事務局が取材に応じました。
【泉南市教育委員会事務局 岡田直樹 教育部長】
――Q:明確な守秘義務違反があったんですか?
「そうだと思います」
――Q:それは具体的にどういう…
「すみません。そこはちょっと申し上げられません」
――Q:明確な守秘義務違反という理由があると、今後も受け取らないという形になる?
「顧問弁護士とも相談しながら市長とも相談して、今後対応を決めていかないといけない」
――Q:6月30日の時点では受け取らない方がいいと?でも今は受け取るか受け取らないかは市長の判断?
「顧問弁護士とも調整しておりますので、そのあたりについてはこれ以上はちょっと申し上げないでおきます。すみません」
さらに、4カ月がたった7月時点で詳細な調査が行われていないことについて聞くと…
【泉南市教育委員会事務局 岡田直樹 教育部長】
「4カ月というのは時間がかかりすぎているとは本当に思います。そういう意味合いでは、いたらなかった部分はあると思います。保護者への接触を試みるとか調査するというのは、一生懸命最善を尽くしているかと思っています」
なぜ、未来ある子どもが自ら命を絶たなければいけなかったのか。
大人が果たすべき役割が問われています。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月20日放送)