日本三大祭の一つ、祇園祭のハイライトの”山鉾巡行”は、新型コロナの影響で去年とおととしは中止になっていましたが、今年は3年ぶりに行われました。
“お稚児さん”に選ばれた11歳が、無事に大役を果たすまで、密着取材しました。
祇園祭の初日の7月1日、今年のお稚児さんが化粧しています。
“お稚児さん”に選ばれたのは、小学5年生の岡本善太(おかもと・ぜんた)くん(11)。
初めての化粧に満足げです。
――Q:自分の顔を見てどう?
【善太くん】
「思ったより似合ってた」
善太くんは、「神の使い」として、山鉾巡行の先頭をいく長刀鉾(なぎなたぼこ)に乗り込み、しめ縄を切るという“大役”を務めます。
お稚児さんとして大役を務めるには、数々の稽古をしなければなりません。
善太くんに稚児舞を指導しているのは、長刀鉾保存会 稚児係代表の井尻浩行(いじり・ひろゆき)さん(53)。
【稚児係代表・井尻浩行さん】
「その時に手をもうちょっと上、奥の方。まだまだまだ。こっから上がる」
井尻さん自身も元・お稚児さんで、”先輩”として、20年以上お稚児さんの指導を担ってきました。
新型コロナによる2年連続の中止を経て、井尻さんは、「疫病退散」という祇園祭の意義を見つめ直しています。
【稚児係代表・井尻さん】
「疫病に近いコロナというものの恐怖を目の当たりにしたし、そういうことを少しでも鎮める気持ちは、今までと違って強い気持ちになってます」
稽古の合間に、善太くんは、弟の弦大(げんた)くん(9)と一緒に、カメラでの”写真撮影”に夢中になっていました。
【善太くんと弟・弦太くん】
「CMとかに出てきそうちゃう?こんなの?」
「あ~ピントが合わへん!」
今回、弟の弦大くんも今回、兄が務めるお稚児さんの補佐役・禿(かむろ)務めます。
そして、本番さながらに鉾の上で、刀を持って、“しめ縄切り”も練習しました。
【しめ縄切りの稚児係】
「久しぶりにやった・・・。すんげ~緊張する。あかん、ブランクがきつい」
父の岡本淳平さんが「本番上手にやんねんな?」と話しかけると
【善太くん】
「上を目指そうと思う」
父・淳平さんが笑いながら「ほんまに?」と聞きます。
そして、7月17日、山鉾巡行の当日。
絢爛豪華な衣装を身にまとった善太くんに稚児係代表の井尻さんが優しく話していました。
お稚児さんが“鉾の上”へ・・・3年ぶりの巡行を待ちわびる京の街に向かいます。
お稚児さんの乗った長刀鉾は徐々に前進し、ついにしめ縄の前へやってきました。
多くの観客が見ている中で、稚児舞を披露・・・そして、刀を勢いよく振り下ろします!
しめ縄を切りを見事に成功させ、山鉾巡行の始まりを告げました。
23基の山や鉾が練り歩き、3年ぶりに観客を沸かせた山鉾巡行・・・
およそ3時間の巡行が無事に終わりました。
メイクを落とし、大役を終えて安堵した顔を浮かべている善太くん。
【善太くん】
「思ったよりも稚児舞がうまくできたのでよかったです」
【稚児係代表・井尻さん】
「やっぱり堂々として凛としてるし、やっぱり自覚を持ってずっと祭に参加してもらえたっていうのはすごく良かったです」
大役を終えた善太くんに夏休みに何がしたいかたずねると・・・
――Q:夏休みは何がしたい?
【善太くん】
「旅行!」
――Q:どこに行きたい?
【善太くん】
「沖縄!」
父親の岡本淳平さんもそれを聞いて、「ご褒美だね」とこたえていました。
3年ぶりに帰ってきた山鉾巡行。
お稚児さんに選ばれた11歳の男の子は立派に大役を務めました。
(2022年7月19日放送)