コロナ禍で急増 SNSを利用し恋愛感情を抱かせる”国際ロマンス詐欺” 多額の現金をだまし取る手口とは? 「日本人は恥ずかしがり屋で被害届を出さない」 背景にガーナの犯罪組織 2022年07月15日
近年、オンライン上で出会いを求めている人が増えつつあります。
マッチングアプリやSNSなどオンラインで外国人を装い、恋愛感情を抱かせ、金をだまし取る『国際ロマンス詐欺』。
特に、中高年が会ったことのない恋人に多額のお金を渡してしまうなど、被害が急増しています。
その実態はどうなのでしょうか。 ”ツイセキ”しました。
■国際ロマンス詐欺の実態とは・・・? 被害女性が語る”巧妙手口”
国際ロマンス詐欺の実態を語ってくれたのは、東京都に住むシングルマザーのAさん(44)。
マッチングアプリを通じて知り合った相手は、高収入で国際弁護士という米国人の男でした。
【Aさん】
「(写真を見て)優しそうな方だったのと印象もいいのかなっていうところで。年収は1500万円以上で、国際弁護士の米国人ウォードと名乗る男です。仕事以外(の時間)はほとんど(2人で)連絡をしているような。楽しさというか、ワクワク感っていうのがありました」
ずっとたわいもないやり取りを1週間続け、ようやくAさんはウォードと日本で会う約束をしました。
しかし、会う前日になって、突然、約束キャンセルの連絡がきたのです。
【ウォード】
「トルコで裁判に出るため会えなくなった。その代わり素敵なプレゼントを君に贈ったよ。僕にとってあなたは特別な人だからね」
会えなくなったのは残念でしたが、Aさんはトルコからのプレゼントの到着を楽しみに待っていました。
しかし、その後、思わぬ展開になりました。
【ウォード】
「プレゼントの輸送にかかる税関代金の支払いが発生した。トルコはインターネット環境が悪いから、パソコンが使えない。僕の銀行口座とか色々伝えるから、あなたのパソコンから代わりに送金してくれないかな?」
半信半疑ながら、指示される通り口座のサイトにアクセスし操作すると・・・。
【Aさん】
「金額も入れて、送金ボタンを”ピッ”と押したら、銀行の画面からストップアラームみたいな赤い信号みたいなのが”ポン”って出てきて銀行口座がロックしたみたいな・・・という(画面)が出て」
自分のせいで口座を凍結させてしまったと誤解しパニックになったAさんに、ウォードは次のように話し、Aさんにお願いをしてきました。
【ウォード】
「1週間くらいで口座の凍結が解けたら、すぐに返すから立て替えてくれないか?」
Aさんは、凍結させてしまったという責任を感じ、申し訳ないという気持ちから、7500ドル(約80万円)を立て替え、指定された口座に振り込みました。
するとその後、ウォードから、領収書が届きました。しかし、その領収書は偽物で、信じてしまうくらい手の込んだものでした。
また、銀行口座のサイトも偽物で、実は必ずアラートが出る仕掛けになっていたのです。
お金を立て替えた日から、ウォードは毎日、「愛してるよ」といったように、愛をささやくようになりました。
【Aさん】
「(ウォードからは)『帰って来たら日本で会って、将来を共にできるように考えていきたい。愛してるよ』(などというメッセージをもらったり)、『もちろん愛してるよ』って毎晩毎晩言ってきますし。本当の恋人同士のような会話は日常だったので・・・。互いにお金も色々やりとりしているので、それ以上の自分のプライバシーを見せているから、もうちょっと深い感じっていうか」
その後も、テロ対策証明書の発行料など、Aさんが金を立て替えることが続きました。
その度にウォードはAさんに対し、不信感を抱かせないよう、巧みな優しさを見せます。
【ウォード】
「僕も友人に半分出してもらうように頼んでいるから、残り半分を出して欲しい。口座が戻ったら、必ず返すから」
証明書などを見せられ、すべて信じこんでいたAさんは、ウォードへの多額の振り込みは、いつしか将来のために二人で乗り越えないといけない“試練”であるかのように思いこんでしまいました。
400万円あった貯金と、消費者金融から借りた200万円をつぎ込み、ついにお金が底をついたとき、Aさんは不信感を覚えはじめウォードを問い詰めます。
【Aさん】
「さすがにおかしいでしょう!」
【ウォード】
「申し訳ない。僕はアメリカ人でもなく、ガーナ人です。詐欺グループの一人で、自分はただただ上の指示通りにメッセージを送っているだけなんだ。グループを抜けると殺されてしまう。でももうこれ以上、あなたから金を取ることはできない」
なんと、ウォードと名乗っていた相手は、アメリカ人の国際弁護士ではなく、ガーナに住む詐欺グループの末端にいる男でした。
【Aさん】
「冷静になれば気づくかもしれない、払うのおかしいだろう怪しいだろうって思うんですけど、当時は感情が入って周りが見えなかった。大金を送金してしまった自分の不甲斐なさを一番引きずっています」
こうした、恋愛感情をもてあそんで、金銭をだまし取る国際ロマンス詐欺。
■大阪府警が日本国内で15人摘発 本体はガーナの”詐欺”犯罪組織 主犯格は日本人か
大阪府警はAさんの被害など、一連の国際ロマンス詐欺事件で、日本国内の15人を摘発しました。
大阪府警によると、犯罪組織の本体があるのはアフリカ大陸にあるガーナ共和国。
SNSを使って日本人に詐欺をしかける役割はガーナ人で、金銭をだまし取る際に登場するのが、日本人名義の口座でした。
Aさんが振り込んだ先もこの“日本人口座”でした。
海外に送金するときの厳しいチェックを避けるため、日本人の仲間を用意したと見られます。
こうしてだまし取った金をまとめて受け取っていたのが、国際指名手配されていて、現在、ガーナにいるとみられる森川光(モリカワ・ヒカル)容疑者です。
【大阪府警・永峰啓次警部】
「犯人側の外国人の被疑者は、『日本人は被害届を出さない、恥ずかし屋やから被害届を出さない』と組織の上層部から言われて、犯行に及んだ」という話もしていました」
大阪府警は、このグループによる被害は、中高年を中心に男女60人以上、あわせて4億円にのぼるとみています。
■会ったこともない恋人にはまって、いつのまにか多額のお金を・・・
3000万円をだまし取られた東京都在主の Bさん(54)は、大手証券会社で部長職を務めていたエリートサラリーマンでした。
仕事でストレスを抱えていたとき、出来心で始めたマッチングアプリで、出会ったのは、世界中で金などを採掘する鉱山会社に勤めている、若くて美しい米国人女性キャサリンでした。
【Bさん】
「3カ月、4カ月もいろんな話をしていると、他愛もない気持ちが愛情みたいなものにだんだん変わっていく。ある日突然、彼女から切り出されたんですよ」
【キャサリン】
「女性は好きな男性には本音を言ってほしい」
【Bさん】
「僕も好きだ」
二人のやり取りは、一気に恋愛モードになり、年甲斐もなく“アイ・ミス・ユー”そんなやりとりをしてしまうほどはまり込んでいたとき…
突然、キャサリンが「ガーナでの金の採掘プロジェクトに行く」と言い出しました。
【Bさん】
「なぜ会社じゃなくて個人で行くの?」
【キャサリン】
「間違いなくもうかる魅力的な案件だからよ!ガーナでの仕事が終わったら、日本に会いに行くわ」
しばらくすると、国際ロマンス詐欺の常とう手段である “トラブル発生”が・・・。
【キャサリン】
「労働者が賃上げを要求していて、80万円必要なの。それを払わないと作業が終わらないわ」
【Bさん】
「それで仕事が終わって、日本で会えるなら払うよ。どうやって送ればいいの?」
【キャサリン】
「私のアドバイザーである銀行員のベンから、日本にある入金先について、あなたに連絡が行くようにするわ。ガーナではアメリカ人は口座を持てないから、そういうやり方をするの」
Bさんはその時の気持ちを話してくれました。
【Bさん】
「すごく僕の中で変な話だというふうに思って自覚あったんですけども、彼女を思う気持ちの方が強かったです」
おかしいと思いつつも、ベンの指示通り、見ず知らずの“日本人名義の口座”に振り込みました。
【Bさん】
「男として、やっぱり女性から頼られるっていう『しょうがねえな』みたいな。女性を守れる部分があるんだったら、しかも金で解決できるのであれば、しょうがないかというふうに思いました」
知り合ってから2年間でBさんが振り込んだのは3000万円以上。
1500万円あった貯金では足りず、銀行からも1500万円借りました。
それでも終わらず、さらにBさんからお金を引き出そうと要求がエスカレートしていきました。
【キャサリン】
「買い手のいるオーストラリアに金を持ち込もうとしたら、ガーナ警察から幼児への違法労働の疑いがかけられて、オーストラリアで金を取り扱えないと言われたの。その疑いを晴らすために、またガーナに戻っての裁判費用が2000万かかるわ」
【Bさん】
「2000万!?もう3000万払っているのにどこにもそんなお金ないよ」
【キャサリン】
「でもこのビジネスが成功すれば相当の金が入ってくるわ」
Bさんは、退職金を充てるため、大手証券会社に辞意を伝えるという、最終手段にでました。
全てを投げ打ってキャサリンとの生活に懸けた直後・・・・
【Bさん】
「大阪府警から電話がかかってきたんですよ。最初『何言ってんの?この人』という思いでしたね。全然まったく理解できない。『(大阪府警から)あなた、詐欺で騙されてますよ』って言われて、ええ!?って。『あなた誰ですか』っていう感じでしたね」
キャサリンと信じていた女性の写真は、フィリピン人女優のインスタグラムから盗用したものでした。
また、身分証明として送られてきたパスポートなどもすべてが偽物でした。
■コロナ禍の影響で世界的な問題になっている”国際ロマンス詐欺” FBIも警告
実は国際ロマンス詐欺は、コロナ禍の影響もあって世界的な問題になっていてFBIもサイトや動画で警告しています。
【FBI警告動画】
「ロマンス詐欺師はプロです。純粋で優しくて誠実そうに見えます。緊急や予想外のお金が必要だと言ってきますが、しかし決して会うことはできません」
今回、摘発されたグループは氷山の一角にすぎず、被害はまだまだ続く恐れが・・・。
一度騙されれば、失うのはお金だけではありません。
被害者たちは、詐欺にあったと分かった時の当時の気持ちを話します
【Bさん】
「人を信じられないっていうのが間違いなく失ったものの一つですね。将来に対しての希望を失わせることが一番悪質だと思います」
【Aさん】
「自分自身が防げなかったというか、自己嫌悪に陥ってしまうというか。結局は誰にも相談ができないので、抱え込んでしまう気持ち。恋愛に関しては関わりたくない」
コロナ渦で、急増するマッチングアプリやSNSなどオンライン上での出会い。
寂しさやストレス、恋愛感情につけ込み、巧妙に優しさで相手を操り、気付いたら多額のお金を失っている。
忍び寄る甘い誘惑・・・待っているのはとんでもない“現実”かもしれません。
(2022年7月14日放送)