7月14日は「泣いてイイよ」の日。
一時期、話題になった「涙活(るいかつ)」から、一緒に“泣いてくれる”ロボットまで。
社会を変えるかもしれない、ナミダの最新事情を、竹上萌奈アナウンサーが調査しました。
■「涙」の最新研究 「笑い」より「泣き」がストレス解消に?
亡くなった母親との思い出の曲を、ピアノで演奏する父親。思いがこみ上げ、涙を流す新婦…の動画を見て、号泣する人たち。
7月9日=「泣く日」に開かれたイベント。
みんなで感動の涙を流す「涙活(るいかつ)」です。
このイベントを企画したのが、吉田英史さん。
これまでに5万人以上泣かせてきた、通称「なみだ先生」です。
【なみだ先生 吉田英史さん】
「泣くとストレス解消になるので、そこからすごく前向きになって。鬱(うつ)が回復して会社帰れるようになったとか、そんな方もいらっしゃいます」
実際、脳の生理学の研究でも、泣くとストレスが解消されることは証明されているそうで…
【脳生理学者 有田秀穂医師】
「自律神経的には副交感神経が優位になります。いわゆるネガティブな気分は解消される」
交感神経は、起きているときに、副交感神経は、寝ている時に活発になる神経です。
この副交感神経が涙を流すと優位に。つまり、リラックスした状態になるのです。
さらに、最新の研究ではこんな結果も。
【脳生理学者 有田秀穂医師】
「『泣きのビデオ』と『笑いのビデオ』でね。脳の中の変化を調べると、『笑い』は1分か2分に1回ずつ笑わせないと、なかなかストレス解消にならないけれども、『泣き』は一旦その大波が押し寄せると、その効果はかなり強いです」
そんな涙活。
新型コロナが流行して以降、社員のメンタルケアに取り入れる企業が増え、なみだ先生への依頼は年間80社以上!
医療従事者からの依頼も多いそうです。
今は、ほとんどがオンラインだということですが…
【竹上アナ】
「オンラインだと、やっぱりちょっと温度感が…。それでも泣けるものですか?」
【なみだ先生 吉田さん】
「そうですね、泣きますね。1人でセミナーに参加できるので、たとえば部屋を暗くしたりだとか、お香をたいたりだとか。『泣き空間』を自由にカスタマイズできますよね。皆さん、泣きやすい状況が作りやすい状態にはなっています」
サプライズでお祝いされても泣けない竹上アナも、ちょっと泣きたくなってきたということで、西の“涙活講師”こと橋本昌人さんに、「泣かせてほしい」とお願いしてみました。
【涙活講師 橋本昌人さん】
「竹上さんに直筆の手紙を書いていただこうかなと」
橋本さんオススメの涙活は、手紙。
文字にすることで、大切な人への想いを、改めて見つめられるということで、竹上アナも挑戦してみました。
【竹上アナの母親への手紙】
高校2年生、夏休み明けぐらいから、私は学校を休みがちになりました。
食べることを極限まで避けることになりました。
二つ掛け持ちしているパートの前に、早起きして作ってくれたお弁当を、
時には目の前でゴミ箱に捨てても、何も言いませんでしたね。
次の日の朝にはまた、栄養を考えられたお弁当ができていました。
ママのおかげで、私は高校を卒業することができました。
そして今、私は毎日楽しく生きています。
恥ずかしくて伝えられなかった「ありがとう」「ごめんね」いまやっと送ります。
「手紙涙活」を終えた竹上アナ。
果たして泣けたのでしょうか?
【竹上アナ】
「泣けなかったですけど、自分が紙の何もない空間に母を投影して記していこうっていう、その行為でけっこうグッとくる、心が震えるなって私は思いました」
竹上アナのように涙が出なくても、ジーンときたら十分効果はあるそうですよ。
この「手紙涙活」は、心のケアとして、介護施設や児童養護施設からも、依頼があるということです。
【竹上アナ】
「今までで、『こんな場所で涙活するんだ』って思ったことはありますか?」
【涙活講師 橋本昌人さん】
「刑務所ですね。泣くという行為で、再犯防止につながるようなプログラムを期待しているというお話があって」
実際に、涙活での更生に取り組む、現役刑務官の本間幹章さんにお話を聞くことができました。
【現役刑務官 本間幹章さん】
「涙を流すことで、『もやもや感』だとか、『思い巡らしていたこと』が、どっかで切り替えていけるのかなと思っております。中には、自分の父親宛てに手紙を書いて、自らの犯罪を悔いて、号泣する男性受刑者もいました。なかなか口を開かない、開けない人だったけれども、書いた後に話を聞くと、思っていること・話したいことがでてきた。なので、すごく効果があったと思います」
涙を流し、心を整理することで、自分自身を見つめ直せる。
実際、涙活プログラムを受けた人たちが出所してから、再び罪を犯したという話を、本間さん自身は聞いたことがないそうです。
【現役刑務官 本間幹章さん】
「刑務所へ行かない、被害者を出さないという気持ちを持ってもらえたのだと思っております」
■「先に泣いてくれる」ロボット 共感がつくる未来
スタジオに登場したのは、「ティアロイド」というロボットです。
一緒に涙を流してくれるということですが、一体どういうことなのか。
開発した関西大学総合情報学部の瀬島吉裕准教授に、気になることを聞いてみました。
ーーQ:そもそも、なぜ「泣くロボット」を開発したのですか?
「ロボットやCGで瞳の感情表現ができないかを研究しています。“究極の感情”は何かと考えたときに、一番感極まったときに出るのは涙なので、涙を流すロボットをつくってみようと思いました」
ーーQ:まだ開発途中ということですが、今後どのような活用を考えていますか?
「一緒に泣くという『涙活』であったり、カウンセリングであったり。先に泣いてくれたら、『あ、泣いていいんだな』という雰囲気ができると思いますので。それが、別に人でなくてもいい、ロボットでできたらいいなと。まるでドラえもんのような、のび太くんと一緒に泣いて、感情を分かち合う。そんなことができたらいいなと考えています」
ーーQ:どんな仕組みで涙を出す?
「人間は泣いていると、どうしても過呼吸気味になる。その呼吸のリズムを読み取って、涙を流す仕組み。マイクで音を拾って、コミュニケーションのボリュームを熱量に変換し、その熱量が高ければ高いほど、『号泣』のような涙を多く出す泣き方になるアルゴリズムになっています」
ーーQ:最終的には見た目もかわいらしく…?
「やはり、人だからこそ涙が出てくるところもあると思うので、これからカスタマイズして、より人に近づけていきたいと思っています」
ーーQ:人間ではない、「ロボットならでは」という観点は?
「人の涙は透明ですが、ロボットの涙が透明である必要はありません。色んな色があっていいかなと思っています。たとえば、悲しみであれば、水色や青色など。悲しみの度合いも、色のトーンで変えていけばいいのでは。喜びの涙であれば、オレンジ色など、色んな感情表現の方法があるのではないかと考えています」
ーーQ:涙を変えることによるメリットは?
「たとえば、人の表情を読み取りにくい、自閉症のような障がいのある方も、感情が読み取りやすくなるのではないか、トレーニングもできるようになるのではないかと思っています」
ーーQ:ロボットが感情を持って動き出す未来も…?
「これからの時代、より「共感」が大切になってくると思う。その「共感」の部分でのアルゴリズムの開発にもつながると考えています」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月14日放送)