新型コロナの感染が各地で拡大する中、期待されているのが、塩野義製薬が開発している飲み薬です。
普及すれば、感染症法上の扱いも、「2類相当」から「5類相当」に切り替わるのではとさえ言われています。
塩野義製薬は、5月に創設された「緊急承認制度」の初めての適用を求めていて、この可否を判断するための会議が、7月20日にも開かれます。
この緊急承認は、安全性が確認されたうえで、有効性が推定されることなどの条件を満たせば認められます。
「第7波や新たな変異株が出てくる恐れもある中で、治療の選択肢を持っておくことは重要」といった賛成意見がある一方で、「効果が曖昧な状況でこの薬を使うのか」といった反対意見も出ています。
塩野義製薬の飲み薬については、現在、3段階の治験のうち2番目の治験の結果まで発表されています。
428人の患者に1日1回投与したところ、3日たつとウイルス量が90%減るという成果がみられました。
さらに5つの症状、鼻水・鼻詰まり、喉の痛み、せき、息切れ、発熱においては、効果がみられています。
一方で、疲労感や頭痛など、7つの症状においては改善が示せず、症状全体の総合評価は「改善は示せていない」とされ、まだ承認には至っていないという経緯があります。
関西医科大学附属病院の宮下修行教授に、この評価について聞いてみます。
【宮下教授】
「オミクロン株もですが、コロナの症状は長く続いてしまうというところがあります。これを「ロングコビット」と言います。コロナが呼吸器の感染症であるという位置付けからすると、重要なのは、治験で改善がみられた5症状です。
ただ当初の薬のゴールを、改善がみられなかった7症状を含めた12症状としたので…。疲労感や頭痛といった7症状は、改善しにくい部分はあると思います。
とりわけオミクロンになってから、デルタまでと異なって症状が軽い。薬を飲んだ人と飲んでない人で、差が出にくいというのはあると思います」
ーーQ:デルタ株の感染が広がっているときに同じテストをしていたら、この7つの方も改善していた可能性も?
「そうですね。この薬の最大の利点は、ウイルス量を早期に減らすことができるという点です。これは、塩野義の他の抗ウイルス薬でも、非常に良い結果が出ています。ウイルス量の減少が症状の軽減に直結するわけではないですが、サイトカインの増強によって重症化を防ぐというポイントにはなってきます。この点からいうと、非常に良い薬であるということは間違いない」
ーーQ:ところが、塩野義側も言っていますが、オミクロンになって軽症化した中で改善に有意な差が示せず、今のところ承認には至っていないと。ただ話を聞いていると、宮下教授としては、もう承認に踏み切ってもいいんじゃないか、ぐらいの結果は出ているということですか?
「この『ウイルス量を減らす』という点で、臨床的には効果はあるというふうに考えられます」
しかし承認には、もう1つの反対意見があります。
口から飲む薬としては3つ目の承認となるため、「緊急性がないのではないか」ということです。
緊急承認は、絶対に承認をしなければならない、替えのきかない存在に適用されます。
新型コロナの飲み薬は、すでに2つが承認されているため、この要件に当てはまらないのではないかという指摘です。
こちらの件についても、宮下教授に聞いてみます。
【宮下教授】
「まず1点は、やはり国産であるということで、安定した供給が得られるはず、いつでも手に入るような薬剤であるという点。
2点目は、メルク社製・ファイザー社製は、どちらかというと重症化の因子のある方に対して使ってきましたが、今回の塩野義の薬というのは、そういった重症化の因子のない方、若年層や基礎疾患のない方にも臨床試験を行っています。そちらでも良い結果が出ていますので、そういう意味では、すごく幅が広く使いやすいかと思います」
ーーQ:また、安全性については、さほど異論なく認められているということですが…
「そうですね。まず安全性の試験というのは第1相、第2相とあり、いわゆる副作用が出るかどうかを見るというのが1つ目の安全性。
ただもう1点、ファイザー社のパクスロビドと同じように、飲み合わせの問題があります。パクスロビドが使いにくいのは、一緒に飲んではいけない薬が多いこと。塩野義の薬は、現時点でこれがはっきりしていません。そこの使い勝手が良ければ、後押し材料になるのですが」
注目の判断は、7月20日にもなされる予定です。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月6日放送)