もなかにおはぎ、大福…
おなじみの和菓子が、最近、驚きの進化を遂げているそうです。
和菓子大好きな吉原功兼アナウンサーが、和菓子のニューノーマルを、取材しました。
■洋菓子に押される和菓子 起死回生の一手とは
さまざまな和菓子が並ぶ、阪神梅田本店。
6月14日にリニューアルオープンした和菓子売り場には、26店舗が集結しました。
開店直後から大にぎわいでしたが、実は“ある危機感”から、「若年層」を意識した売り場づくりにしたそう。
【阪神梅田本店 折谷若子さん】
「世間一般で“和菓子離れ”と言われるんです。ちょっと敷居が高くて、どちらかというとご年配の方によく食べていただくイメージがあるので。『気軽に食べられるお菓子』を意識して、売り場づくりをしています」
総務省の調査によると、洋菓子の年間支出額が増加しているのに対し、和菓子は減少傾向。
週に数回和菓子を食べる人は10代だと2割ほどで、洋菓子の半分にとどまる…というデータもあります。
実際、街で聞いてみても…
【20代男性】
「今はカヌレにハマってます。手軽さが洋菓子の方があるかな」
【20代女性】
「やっぱり、『ちょっと古いもの』っていうイメージはある。友だちと遊んでいて、『和菓子食べに行こうか』とはならないですよね、やっぱり。カフェとかケーキ屋さんとかに行っちゃう」
苦境に立たされる和菓子ですが…
今、そんな若者たちにも受けているのが、「ネオ和菓子」。
「四季を尊ぶ心」など和菓子の伝統を大切にしながらも、洋菓子の要素を自由な発想で取り入れた、お菓子界のニュージャンルです。
実際に、「ネオ和菓子」を買いに来た人に話を聞いてみると…
――Q:何を見て買いに?
【20代女性】
「インスタグラムです。和菓子はあんまり食べなかったけど、ここのはおいしそうだなって。和菓子なのに『洋』と混ざっていて、すごくおいしくて新感覚」
■和菓子との「架け橋」に 老舗出身の店主が作る「ネオ和菓子」
アートのような美しい見た目が人気の理由の1つですが、実際に食べてみないと、その魅力は分かりません。
ということで、吉原アナウンサーがお邪魔したのは、京都の和菓子カフェ「みのり菓子」。
最新の「ネオ和菓子」を試食させてもらいました。
【吉原アナ】
「これが和菓子? 和菓子って聞いてきたけど…」
出てきたのは、まるで創作フレンチのような一皿です。
【みのり菓子 小林優子さん】
「桃のスープにヨーグルトのソースをかけて、スモモのくず餅を浮かべています」
おそるおそる口に運んでみると…
【吉原アナ】
「口の中に桃が広がりますね、おいしい! 見た目だけでなく、桃のスープとヨーグルトですっきりしていて…洋菓子感はありますが、くず餅の食感やあんこの風味を感じられるので、確かに和菓子です!」
もともとは、老舗の和菓子店で働いていたという、店主の小林さん。
「自分にしか作れないお菓子」を求めて、今のカタチに行き着いたそうです。
【吉原アナ】
「『若者の和菓子離れ』を言われたりもしますけど、どう感じますか?」
【みのり菓子 小林優子さん】
「和菓子に触れる機会がなかったり、まだ出会っていないだけだと思うので…その架け橋と言ったら、ちょっと図々しいですけど。和菓子の素材も『こんな風にしたら、おいしく食べられるんだ』と思っていただけたら、きっとお抹茶とか、ちっちゃいお菓子の世界も、もっともっと美しく見えるようになってくるんじゃないかな」
■レースでも使う? ランナーに大人気の和菓子とは
続いて、吉原アナが訪れたのは、なぜか「山の中」。
何も教えられないまま、トレイルランニングが始まりました。
和菓子に何の関係があるのでしょうか。
ようやく見晴らしの良い山頂に到着した吉原アナ。
周りを見ると、休憩中のランナーたちが、何かを口にしています。
【吉原アナ】
「皆さん、何を食べているんですか?」
【ランナー】
「ようかんです」
ランナーの皆さんが食べていた、いや、飲んでいたのは、ジェルタイプのようかん「ANDO(アンドゥー)」です。
大阪で創業74年の老舗和菓子店「福寿堂秀信」が、スポーツをするときの栄養補給用に開発しました。
吉原アナも早速、封を切ったパッケージに口をつけてみます。
【吉原アナ】
「液体のようかんだ! 初めての食感です! 疲れた身体に染みますね。甘さもさっぱりで飲みやすい」
【ランナー】
「あんこは身体にいいですし、添加物も入ってない。自然な甘さで、疲れた身体にいい」
「レースでも使わせてもらっている。走りながら、そのままグイっていける」
あんこは脂質が少なく、エネルギーとなる糖質を効率よく摂取できるため、実はスポーツに適した食材。
小豆の食物繊維も同時に取れるので、血糖値が急上昇することもなく、仕事や勉強中の間食にも向いているそうですよ。
開発のきっかけは、コロナで「手土産需要」が落ち込んでしまったことだったといいます。
【福寿堂秀信 山田真利さん】
「もっと身近にあんこを食べていただけるような商品を開発したいというところで、一番初めはパンに塗っても食べられるチューブタイプのあんこを開発したんです。『このまま飲めるようにできないの?』って、ランナーたちから聞かれたのが、スタートです。『和菓子が好きだから、和菓子の味はそのままにしてほしい』と言うので、スポーツ用に特化した食感で、なおかつ和菓子の味をいかに残すかというところがすごい難しくて、本当に調整、調整の連続でした」
SNSや口コミで徐々に知名度が上がり、注文はどんどん増えているそうです。
和菓子の可能性を広げた「飲めるようかん」。
今後、目指していく道は?
【福寿堂秀信 山田真利さん】
「その人のライフスタイルの中に、ふっと手に取れるあんこがあればいい。ANDOをきっかけに、あんこを世界に発信できるよう目指していきたいと思っています」
■「餅」ならぬ「MOCHI」? フランスで大人気の冷たいWAGASHI
実はもう、海外に進出している和菓子もあるんです。
世界で高まる和菓子需要を、現地で取材しました。
まずは、美食の国フランス。
【記者リポート】
「パリ市内のスーパーに来ています。入り口を入ってすぐのところに置かれているアイスクリーム。『MOCHI』と書かれています」
今、フランスで大人気の和菓子が、「餅」改め「MOCHI」なんです。
砂糖や水あめを練り上げた「求肥(ぎゅうひ)」で、アイスクリームを包んだものが一般的だそう。
塩キャラメル・ピスタチオ・マンゴーなど、さまざまなフレーバーがあります。
値段は、日本円で1個200円ほどです。
【記者リポート】
「ヒマラヤの塩キャラメル味を食べてみます。すごい柔らかくて、本当にお餅の感触…おいしい! アイスクリームを包む求肥にも、塩キャラメルの味がしっかり練り込まれていて、濃厚です」
パリの人たちにも、話を聞いてみました。
【パリの人たち】
「柔らかい食感が大好きなんですよ、甘すぎないし」
「健康にもいいし、ちょっと変わったアイスで、フランス人の僕の味覚にも合いますよ」
記者が訪れたスーパーでは、1年ほど前から販売しているそうです。
――Q:なぜMOCHIを店頭に並べ始めたんですか?
【カルフールシティーの店長】
「けっこうはやっているからね。レストランのメニューに登場することが多くなって、『うちの店にも置いたらどうだろう?』と。本当にヒットしていますよ。たくさん売れすぎて、残念ながら供給が追いつかないので、調達に苦労しているくらいです」
■アメリカでは“食べる宝石”がブーム ASMR動画が人気を後押し
続いては、アメリカでブームになっているWAGASHI。
キラキラと輝く、“食べる宝石”=琥珀糖(こはくとう)です。
現地記者が、ゆずフレーバーを試食してみました。
【記者リポート】
「外はすごくサクサクしていますが、中にはゼリー状のものが入っています。とにかくゆずの香りが口いっぱいに広がって、おいしいです」
今、この琥珀糖のブームをアメリカでつくっているのが、ロサンゼルスに拠点をおくブランド「MISAKY TOKYO」。
琥珀糖の咀嚼(そしゃく)音を録音したASMR動画などがバズり、TikTokのフォロワーは45万人を超えています。
ちなみに、お値段は1粒1000円以上。超高級スイーツです。
「MISAKY TOKYO」を創業したのは、三木アリッサさん。
アメリカ生まれ日本育ちで、「Forbes JAPAN」の「地球で輝く女性100人(2018年)」に最年少で選ばれた、若き起業家です。
なぜ和菓子、それも琥珀糖を、アメリカで販売しようと考えたのでしょうか?
【MISAKY TOKYO 三木アリッサさん】
「アメリカでは、ビーガンやグルテンフリーが今すごくトレンドになっている。和菓子はもともとビーガンだし、グルテンフリーだし、素材も海藻とか、いろんなサステナブルなものでできているので、これは世界のニーズにはまるんじゃないかなと思ってスタートしました」
――Q:なぜ、和菓子の中から琥珀糖を?
「アメリカ人が真っ青なカップケーキを食べているの、想像つくじゃないですか。あれはもうアメリカの食文化で、食の教育を受けてるんです、あれがおいしいって。黒色とか茶色いものがおいしいだなんて、脳が認識しないんですよね。だから、やっぱり色鮮やかにしなきゃいけなかった」
和菓子の魅力をアメリカに広めているアリッサさん。今後の野望は?
【MISAKY TOKYO 三木アリッサさん】
「今すぐ本物の和菓子をお伝えするには、ハードルが高すぎる。だから、お寿司で言うところの『カリフォルニアロール』みたいな『カリフォルニア和菓子』で裾野を広げてから、本物の和菓子をお伝えしたいっていう思いで、この事業をやっています」
「ネオ和菓子」も、「飲めるようかん」も、海外進出した「WAGASHI」も。
裏側には、作り手たちの「和菓子の魅力を知ってほしい」という熱い思いがありました。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年6月30日放送)