今、全国で空き家が増え続けています。
中には老朽化による屋根の崩落などで、近隣住民が危険にさらされているものも。
しかし、行政にも簡単に手を出せない事情があります。
誰もが当事者になるかもしれない空き家問題。その実態を取材しました。
■京都で「行政代執行」 所有者の判明している建物では初
路地の奥にある、20年前から誰も住んでいない家。
建物の中は荒れ果て、柱はボロボロです。
【京都市 空き家対策担当 寺谷淳課長】
「空き家等対策の推進に関する特別措置法第14条第9項の規定に基づく代執行を実施し、保安上危険な本件建築物の除却工事に着手します」
6月14日、京都市が行ったのは、行政代執行。
倒壊する恐れが高い空き家などを、所有者に代わり自治体が取り壊します。
所有者に対して8年ほど指導を続けていましたが、「取り壊す費用を払えない」などとして、放置されていました。
京都市はこれまで4件の行政代執行を行っていますが、所有者が分かっている空き家を取り壊したのは、今回が初めてです。
取り壊し費用のおよそ700万円は、所有者に請求する方針です。
人口の減少が進む中、全国で空き家の数は増え続けています。
「空き家問題」に頭を抱える街は、他にも…
■倒壊の恐れもある「特定空き家」 150軒を抱える町
愛知県・南知多町。知多半島にある漁業の町です。
以前は観光でもにぎわいましたが、今では都市へと人が流れ、人口はピーク時からほぼ半減。5軒に1軒が空き家になっています。
崩れ落ちそうな壁を、生い茂った植物が支えているようにも見える建物や、屋根瓦やむき出しになった土壁が、今にも落ちてきそうな家屋も。
「怖いから上を見て歩く」と話す近隣住民たちは、危険と隣り合わせの生活です。
南知多町の空き家対策の担当者が頭を抱えているのは、所有者のいない空き家です。
ある家のケースでは、住人が2015年に亡くなり、親族は相続権を放棄。それ以降、空き家となり、管理する人がいません。
買い手が見つからずに、今後、倒壊の危険性がさらに高まった場合は「特定空き家」に指定され、“行政代執行”で壊すこともできますが、その費用は税金を使うことになります。
南知多町の「特定空き家」は、150軒にも上ります。
そのすべてを行政代執行で解体する場合は、数億円の税負担が避けられません。
近隣住民に危険を及ぼす空き家は今後も増えていく見込みですが、「今の町の経済状況ではとても対応できない」と、担当者は肩を落とします。
全国で増え続ける空き家問題。地域の状況に応じた対策が求められます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年6月16日放送)