生活習慣病の予防のための取り組み「減塩」。
「コンビニご飯」や「給食」など、身近なところで進むものから、驚きの最新技術「塩味を操るお箸」まで。
減塩食の最新事情を、取材しました。
■コンビニで、保育園で…いつの間にか始まっていた減塩
テーマが「減塩」だと伝えられないまま始まった、今回の取材。
スタッフからお昼ごはんとして出されたのは、ファミリーマートのミートソースパスタでした。
【吉原功兼アナウンサー】
「しっかり肉の味わいも出ていて、『ミートソースパスタといえば、これだよね』って頭の中に思い描く味です」
【スタッフ】
「実はこれ、減塩されてるんですよ」
【吉原アナ】
「減塩されてるんですか? 塩分控えめってこと? 薄いっていう感じは全くなかったです」
吉原アナが鈍感なんじゃなくて、言われなかったら減塩だと気付かないぐらい、おいしいんです!
しかも、普通はパッケージに書くであろう「減塩」の文字もありません。
なぜ「減塩」しているのに、アピールしないのか?
ファミリーマート商品本部・部長の木下さんに話を聞きました。
【ファミリーマート商品本部 木下紀之部長】
「『減塩』って書いたとたんに販売がガクっと落ちることが過去にございましたので、減塩をしながらもパッケージには表示しない『こっそり減塩』活動を進めています」
顧客に健康でいてほしい。
でも、「味が薄くて物足りない」イメージのある減塩商品は、どうしても売り上げが落ちてしまう。
そこで、ファミリーマートが2019年から始めたのが「こっそり減塩」。減塩だと気付かれないよう、コストをかけて製法を工夫していて、今のところ「おいしくなくなった」などネガティブな意見はほとんどないそうです。
さらに、驚くのがその効果。
塩の使用量を年間で約100トン減らすことができているのです。
高血圧などの生活習慣病の予防が呼び掛けられる中、日本人の塩分摂取量はWHOが推奨する基準の約2倍ということもあり…
コンビニだけでなく、こんな場所でも減塩が進められているそうです。
【記者リポート】
「門真市のおおわだ保育園に来ています。こちらでは、『減塩』の給食が作られているということです」
もともと栄養のバランスが考えられている給食でも、減塩の動きが広がっているというんです。
やっぱり気になるのはお味ですが、いっぱい遊んでおなかペコペコの子どもたちは?
ーーQ:給食おいしいですか?
【園児たち】
「おいしい~!」
ーーQ:どれが好きですか?
【園児たち】
「おしる!」「おしる!」「おしる!」
特に人気だったのが「味噌汁」で、みんな次々とおかわり!
子どもたちには、「おいしい」濃さのようです。
ちなみに、濃い味代表の唐揚げが大好きという先生も…。
ーーQ:お味はどうですか?
【先生】
「大人でもおいしいですよ、ちゃんと」
大人でも、ちゃんと満足感があるそうです。
その裏側には、こんな工夫が…。
【おおわだ保育園 管理栄養士 新里梨沙さん】
「味を薄く感じさせないように、おだしをしっかり丁寧に取るようにしています。プラスプラスで調味料を使わなくて済むので」
厚労省が発表している基準では、小児が1日にとる食塩の目標量は、3~3.5グラムまでとされています。
こちらの保育園では、昼ごはんとおやつで合わせて1.5グラムを目標に献立を作成してきましたが、この目標からさらに2割の減塩に成功しているそう。
【おおわだ保育園 管理栄養士 新里梨沙さん】
「基本的に薄味に慣れていたら、大人になってから味の濃いもの食べて、病気になることを防ぐことができると思っています」
■最新技術がもたらす未来 「減塩=おいしくない」の時代は終わり?
身近なところで、実は進んでいた減塩の取り組みですが、技術もどんどん進化しています。
たとえば、こちらの「ブリの照り焼き」。
これまでの「減塩食」は、塩分を抜いた調味料や材料を使って調理するため、どうしても塩味以外の味にも影響が出てしまっていました。
ところが、この「ブリの照り焼き」は、塩分そのままの調味料や材料を使って調理した後の完成品から、特殊な技術を使って塩分のみを除去するため、味への影響が少ないのです。
さらに最新の減塩技術を取材するため、吉原アナが向かったのは、おいしいビールでお馴染みの「KIRIN」。
腕時計のような形をした装置がつながった「箸」が、実は世界初の技術だということで、この箸と普通の箸を使って、減塩の味噌汁を飲み比べてみました。
まずは、普通のお箸を使ってみます。
【吉原アナ】
「塩味はそんなにはない感じがしますね」
では、最新のお箸では…
【吉原アナ】
「分かりましたよ!味が濃くなりました!たとえば、インスタントの味噌汁を飲んだ時って、器の底に味噌が溶け残るとき、ありますよね。それをかきまぜると、途端に味噌の味が濃くなると思うんです。ああいう感じです」
お箸を入れた味噌汁を口に付けると、突然味が濃くなる、なんとも不思議な感覚。
一体、どんなメカニズムなのでしょうか。
【キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部 佐藤愛さん】
「このお箸を使うことで、ナトリウムイオンの動きをコントロールすることが可能になりまして、電流の力を使って、味を感じる細胞に当たりやすくするようにしています」
舌には、味を感じる細胞が多数存在しています。
その中の塩味やうま味を感じる細胞に、お箸から出る弱い電流を使って成分を誘導していくことで、味がダイレクトに伝わるという仕組みなんです。
【キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部 佐藤愛さん】
「食事制限のある方々から、『うす味の食事がつらい』だったり、『食欲がなくなる』っていうお声を、結構お聞きしていました。生活習慣病の予備軍や、生活習慣病になったばかりの方々が『減塩するきっかけ』になるツールになればと考えています」
共同研究者で、明治大学の宮下芳明専任教授は、この技術を応用すれば、「食生活」自体が、大きく変わるかもしれないと話します。
【明治大学 総合数理学部 宮下芳明 専任教授】
「自分が好きな味を思いっきり味わえる世界がやってきます。甘いものも思いっきり食べていいし、もう我慢なんかしなくていい。今までの全生物・全人類が体験したことがない、新しい未来がやってくると思います」
この“塩味を操る”お箸。キリンは、早ければ2023年にも製品化を目指しているということです。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年6月9日放送)