グランピングに熱視線! 福祉連携型、廃校で農業、DIYで再生した廃村… 市場規模1000億円超えで加速する差別化 地方自治体も期待 2022年05月26日
今や、人気が定着した感もある「グランピング」。
「グラマラス」と「キャンプ」を掛け合わせた言葉で、自然を感じながらもホテル並みの快適な空間を楽しめるのが魅力ですが、最近は「新たな価値」をプラスアルファした施設が増えているそうです。
■絶品料理が魅力! 宿泊客が「貢献できている」気になる施設
大阪・貝塚市に今年3月オープンした「かいづか いぶきヴィレッジ」。
もともとは貸し農園や直売所などがあった農業公園をリニューアルし、グランピングもできるようになりました。
ラグジュアリーホテルのような、ゴージャスなテントはもちろん…
【関西テレビ 吉原功兼アナウンサー】
「グラマラス、イッツグラマラス」
緑に囲まれたジャグジーで疲れを癒すことも。今はやりの「テントサウナ」で“ととのう”こともできますよ。
さらに、この施設の一番の売りが…
【ル・クログループ 黒岩功 オーナーシェフ】
「うちのスペシャリテでもあります、ブイヤベースです」
【吉原アナ】
「うわー、おいしそう! うーん、びっくりするような滑らかさとホクホク感、甘みもあって…」
【ル・クログループ 黒岩功 オーナーシェフ】
「いろんな海の幸のうまみのエキスが凝縮されていて、それをお魚が吸ってくれているんですね」
本格的なお料理を楽しむことができるんです!
監修するのは、三ツ星レストランで腕を磨き、大阪やパリなどで5店舗を展開するフレンチレストラン「ル・クロ」の黒岩功シェフ。
ちょっと調理室をのぞかせてもらうと…
【かいづか いぶきヴィレッジ 村川裕一 統括責任者】
「障害のあるスタッフを私どもは『キャスト』と呼んでいるんですけども、キャストが(料理の)準備をしております」
【吉原アナ】
「あっそうですか!シェフの方が作ってらっしゃるっていうイメージがあったんで、ちょっと驚きましたね」
実は、料理の準備をしているのは、軽度の知的障害がある人たち。
ここは「どんな人でも働ける場所」を目指した、福祉連携型のグランピングリゾートなんです。
料理以外にもベッドメイキングなど様々な作業があるグランピングは、個人の特性に合った仕事をしてもらいやすく、福祉との相性がいいそう。
働く場所が限られる過疎地域で、安定した雇用をつくり出しやすいのもポイントです。
【キャスト 高谷思大さん(19)】
「経験したことのないことを経験させてもらっているので、すごく仕事していて楽しいです。これから日本一のサービスマンになりたいなって思っています」
【かいづか いぶきヴィレッジ 村川裕一 統括責任者】
「今では、障害のあるスタッフ『キャスト』は欠かせない存在です。私どもとしては味で勝負したい。おいしいからと買って、それを作っているのが実は障害のある方だった、っていうのが、一番ベストかなと思います」
【お客さんは…】
「うわ! おいしい! めっちゃ海鮮!」
「めっちゃいいだし出てる~」
「これはうまいわ!」
「(障害者を)雇用できているのもすごいことですし、それをおいしく食べられて、いいことやなぁと思います」
「利用する側も、こういったところの方が貢献できてるのかなっていうのがあって、ちょっとだけいいなと思いました」
コンサルティング会社の船井総合研究所によると、グランピング施設は増え続け、市場規模は今や1000億円超え。
今年も200件以上が開業する予定で、他の施設との「違い」が重視される時代に入ってきているそうです。
■廃校で農業体験 将来の担い手探しも
【吉原アナ】
「あれ? これ校舎ですかね? 校舎でグランピング?」
そう、こちらは2年前に廃校になった小学校を再利用したグランピング施設なんです!
グラウンドだった場所には繭のような形のテントが並び…室内もシックにまとめられておしゃれですね~。
【吉原アナ】
「昔懐かしい学校の校舎を見ながらくつろげるっていう感覚が、めちゃくちゃ新しいですよね。でも何で、学校でグランピングを始めようと思ったんですか?」
【越知谷キャンプ アグリヴィレッジ 河村大樹さん】
「もともとはグランピングじゃなくって、校舎を使ってスマート農業の研究所を始めようと思ったのがスタートなんです」
「スマート農業」とは、ロボットやAIなどの先端技術を活用した“新しいカタチ”の農業。
実はこの施設を運営しているのは、お米を販売する会社で、農家を支えるため「スマート農業」を行う中で、より多くの人に知ってもらおうと、グランピング施設をオープンしたそうなんです。
教室の中にある水耕栽培のシステムを見学できたり、自動運転機能が備わった最新トラクターを運転することもできるんです!
【吉原アナ】
「うわわわ、どすんどすんですね!」
【河村さん】
「分からなくなってきますよね」
【吉原アナ】
「分からなくなってくる、真っすぐが全然分からない」
ぬかるみではハンドルを取られ、真っすぐ走行することが難しいトラクターも、自動運転があると…
【吉原アナ】
「勝手にハンドル動いていますよ! えーすご! 何もしてない」
さらに、お米の会社というだけあって、かまどを使った炊飯体験もできるんです!
【河村さん】
「炊くコツとして、お米の中に氷を入れます」
【吉原アナ】
「氷を? 冷やすってことですか?」
【河村さん】
「そうです。中の水温を下げることで、ふっくらと炊けるんです」
おいしく炊けるポイントを教えてもらえるのも、お米の会社ならではですね。
【吉原アナ】
「うわ~、うまい! 本当においしいですね。滑らかでしっかりと粒が立ってて甘味もあって…待ったかいがあった。抜群の味わい」
【河村さん】
「『農業ってかっこいいんだよ』っていうのを広めていこうと思った時に、農業だけじゃ広まらないんですよね。グランピングで来られる方っていうのは若い層だったり、小さなお子さまを一緒に連れて来て下さる方が多いので、そういった方に農業を身近に感じてもらって…やってみたいなって思ってもらえる、一つの選択肢になってくれればいいな」
抜群の集客力を誇るグランピング。
コンサルティングを手掛ける船井総研の成田さんは、今や「地方の自治体も“熱視線”を送っている」と言います。
【船井総合研究所 マネージング・ディレクター 成田優紀さん】
「(年収)700~800万円以上の方が、よく利用されているんではないかというのを感じています。そういった方が来ると、(消費活動で)地域が潤うと。そこに住みたいっていう人もたまにいらっしゃるんですよね。そういうのも含めて相乗効果が2次、3次、4次と続いているので、(グランピングが)地方を救う部分は大いにあり得ると思います」
グランピングが地方を救う!?そんな場所が、兵庫県佐用町の山奥にありました。
■「廃村」を買い取り4カ月待ちの人気施設へ 地方創生のカギは「映え」
【宿泊客は…】
「泊まりたいなって思っていて。念願かないました」
「田舎の雰囲気を味わえたのが良かったなって」
のどかな雰囲気が漂う田舎の風景。でもよく見ると、なんだかオシャレな雰囲気。
ここは、古民家を改装してグランピング要素を加えた、その名も「グラミンカ」。
今では週末の予約が4カ月先まで埋まる人気ぶりだそうです。
【glaminka 大野篤史 共同代表】
「30人の規模で、廃村だった状態から住み込んでDIYで再生してきました。恩返しがしたいなと、僕らだからできる立ち位置で、地域に何か貢献できないかなっていう思いはものすごくあります」
山奥にぽつんと存在するこの集落は、2008年には住む人がいなくなり、一時「廃村」となりました。
そこを買い取り、みんなが憧れる宿泊施設へと復活させたという、かなりスゴイ場所なんです。
部屋の中を見せてもらうと…
【吉原アナ】
「失礼します。あ、中に木が!」
【glaminka 大西猛 共同代表】
「実はこちら、集落の中にあった木を、こうした形でデザインさせてもらいました」
【吉原アナ】
「イマジネーションあふれる建物ですね」
まるでアートギャラリーのようなおしゃれな空間!
室内なのに岩場があったり、テーブルに映った緑を「借景」として取り入れていたり…。
どれだけシャッターを切ってもらえるか、まさに「映え」を意識したお部屋づくりで、それぞれ建物ごとにコンセプトも違うようです。
【吉原アナ】
「え? なにこれ?」
【glaminka 大西猛 共同代表】
「実はこの建物は昔、養蚕業をされていた方の家で…蚕という事でこういった寝室のデザインになっています」
【吉原アナ】
「もともとあった場所の歴史みたいなものも残していきたいっていう、そういう思いなんですね」
消える運命だった集落を、人が集まる場所へと変化させた「グラミンカ」。
今では、地域住民の“交流の場”にもなっているそうで…
【近所の集落に住む 平井良さん】
「コースでこちらに寄らせてもらって…お話を聞くなりして案内してもらって」
この日は車で10分ほどの集落に住む方が、地域のウォーキングイベントの経由地にしたいと相談に来ました。
【吉原アナ】
「グラミンカができたことで、どうですか?」
【近所の集落に住む 平井良さん】
「よくこの集落を盛り上げて、復活させていただいたっていうのはありますね。もう一度来たいなって思ってもらうためには(地元)住民の温かい気持ちや受け入れっていうのが大事じゃないかなって思うんです」
【glaminka 大野篤史 共同代表】
「グラミンカがハブになって、いろんな人たちを寄せ集めながら。グラミンカがあるから『佐用町に移住したいな』とか『残りたいな』とか『戻ってきたいな』とかっていうふうな声が聞こえるように、頑張っていきたいなって」
人を集め、まちの再生まで実現する「グランピング」。
楽しむだけじゃない「新たな価値」が、これからも生まれていきそうです。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年5月26日放送)