琵琶湖で開催されたボート大会で、耳の不自由な高校生が、国内で初めての挑戦をしました。
おしゃべりをしながら歩く、高田優貴さん、伊藤潤さん、青山颯太さん。
3人とも、滋賀県立聾話(ろうわ)学校の生徒です。
彼らが出場するのは、4人でオールをこぎ、500mの直線コースのタイムを競う「大津市民レガッタ」。
今回は、パラボートの国内トップ選手の力を借りて、初めてのレースに挑みます。
去年、聾話学校でボートの選手が講演したのをきっかけに、練習を始めた3人。
けれど、大会に出るのは無謀と思われていました。
その理由を、大会主催者の今村拓也さんはこう語ります。
【今村さん】
「“コックス”というかじ取り役に『強くこげ』と言われたら強くこいで『止めろ』と言われたら止めてというのを耳で聞いて反応するので、『聴覚に障害のある人はボートに乗るのは危ない』というのが常識みたいになっている」
3人とも補聴器を使っていますが、水に落ちると大変なので、ボートに乗るときは外さなければなりません。
【高田さん】
「ちょっと緊張しています。あまり表情に出ないタイプなので」
補聴器の使えない状況で、かじ取り役コックスの指示を、どのように受け取るか。
【コックス 小澤哲史さん】
「片方だけこいで船を回したりとか、いろいろな動きをしないといけないので、『1番・3番こいで』…こういう感じですね」
小澤さんの声に合わせて、聾話学校の先生が手を動かします。先生が一緒に乗り、手話ではない「ハンドサイン」で指示を伝えることにしたのです。
工夫を重ね、「非常識」を「常識」に変えるレースに挑みます。
いよいよレースがスタートしました。
ハンドサインに合わせて、強く!強く!
息をぴったり合わせ、ペースアップします。
そして…
6チーム中2位でフィニッシュしました!
【先生】
「お疲れー!速かったね!2位!」
【高田さん】
「めっちゃ疲れた」
【伊藤さん】
「腕が痛い」
【高田さん】
「足パンパンや」
大会を終えた3人。疲れたと言い合いながら、満面の笑顔です。
【高田優貴さん】
「僕たちは聴覚障害者で、『難しい』とか『これできない』とか思うことがあるかもしれませんけど、一歩を踏み出したら、聴覚も関係なくみんなで一緒に楽しめると感じました」
小さな市民大会に参加した3人が、大きな可能性を証明してみせました。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年5月26日放送)