ウクライナへのロシアによる軍事侵攻。
東京大学大学院の渡辺英徳教授を中心に、現地の被害状況を3D化して記録するプロジェクトが進められています。
ウクライナの首都・キーウ近郊を走っていたバス。迎撃したロシア軍のミサイルの破片が直撃しました。
現地のジャーナリストや市民がドローンで撮影した写真を3D化し再現したものです。
ロシアの軍事侵攻が始まって2日後に爆撃されたキーウの高層マンション。この被害の様子も3Dで立体化されデータとして残されました。
破壊された壁の奥に見える家具。ここには市民の日常がありました。
東京大学大学院の渡辺英徳教授が今、進めているのが、「ウクライナ衛星画像マップ」プロジェクトです。
渡辺教授たちは市民やジャーナリストが撮影した画像やアメリカの会社が公開した衛星写真などをもとに実際に被害が起きた場所を割り出し、地図に落とし込みます。
衛星写真と地上での画像を組み合わせることで侵攻の被害をより立体的に可視化して、デジタルで記録しているのです。
【東京大学・渡辺英徳教授】
「(ロシアの侵攻は)今は現在進行形なので、起きていることをなるべく曲げずに、そのままの状態で速報的に世界の人に伝えるという意味が1つありますね」
「戦争犯罪と言われてますけど、何が起きたのかということを未来に確実に残しておくと、検証することができますよね」
ウクライナの東部の町・マリウポリ。数百人の市民が避難する劇場が爆撃されました。
渡辺教授たちは、この劇場で起きた被害もデータ化しました。
立体的に可視化することで、被害のありのままを世界に発信しています。
【東京大学・渡辺英徳教授】
「もともとは、こんな素敵なこれはたぶんアートイベントなんでしょうね。そこが今見て頂いたように破壊されているということがこれで見るとよくわかりますよね」
「一から建て直すしか無いと思うんですけどそういった文化はもう戻って来ないんですよね。いくら建て直したとしてても」
渡辺教授たちのプロジェクトには世界中から有志が参加し、今では200を超えるデータが公開されています。
中には写真を撮影しその後、命を落としたウクライナの写真家もいました。その写真家、マックス・レビンさんがドローンで撮影した映像をもとにつくられた3Dでは、窓が燃えている建物の様子がはっきりと分かります。
【東京大学 渡辺英徳教授】
「即座にデータ化したことがよく分かるのが、窓が燃えていますよね。当時はロシア軍の制圧下にあったわけでその状態でドローンを飛ばすというのは相当に覚悟のいることだったと思います」
命をかけてでも、伝えなければいけなかったことが今、ウクライナで起きています。
【東京大学・渡辺英徳教授】
「(戦争は)戦場で兵士が戦うものと思っているかもしれないけどそうではないんですよね。僕らが住んでいるような普通のマンションが破壊されたり、あるいは市民が愛していたような劇場が市民もろとも破壊されたりするわけで、それが戦争なのかもしれない。そこを未来の人たちにメッセージとして伝える意味があると思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年5月4日放送)