さまざまな社会問題を解決してくれる可能性があると、今注目の3Dプリンター。
大きな3Dプリンターであらゆるものを印刷する、2つの企業を取材しました。
■複雑な形を短時間で 3Dプリンターの強み
まず訪れたのは、京都市の「エス.ラボ」。
3Dプリンターを使った商品を作るだけでなく、プリンター自体の開発も行っています。
東京オリンピックでは、表彰台前面の市松模様に、こちらで開発された3Dプリンターから出力したパーツが使われました。
【エス.ラボ 代表取締役 柚山精一さん】
「定められた納期まで、非常に時間が短かったものですから。金型も作れないし、3Dプリンターでしか作れないと」
表彰台のパーツは複雑な模様のため、金型を使う従来の方法では作るのに時間がかかります。
一方3Dプリンターなら、データさえ入力すれば短時間で作り出すことが可能ということで、声がかかったそうです。
■「やろうと思えば」 無限に広がる可能性
また「エス.ラボ」には、世界最大級の3Dプリンター「茶室」があります。
その名の通り茶室のような箱型で、高さ・横幅・奥行き各3メートルまでプリントできます。
取材中に出力されていたのは、長さが2.8メートルの流線型のベンチでした。
なぜ、このように大きな3Dプリンターを開発したのでしょうか。
【エス.ラボ 代表取締役 柚山精一さん】
「どんなものができるかっていうのは、まず機械がないと試せないですから。車の部品作ったり、船を作ったりですね。技術者として、そういうことをこの機械でどんどんやっていきたいですね」
ーーQ:船までできるんですか?
「やろうと思ったらほとんどできると思います」
この3Dプリンターを使ってものを作ることには、SDGsの観点からもメリットがあると、柚山社長は言います。
【エス.ラボ 代表取締役 柚山精一さん】
「(出力には)ポリプロピレンを使います。企業から出てきたリサイクルプラスチックとかをもう一回使って、価値の高いものを作る。そういう活動に、この3Dプリンターは最適なんです」
■3Dプリンターで日本初の「家づくり」
次に取材したのは、兵庫県の「セレンディクス」。こちらにも巨大な3Dプリンターがあります。
この3Dプリンターで出力されるのは、樹脂ではなくコンクリート。
先日、日本初となる、ある試みが行われました。
【セレンディクス 執行役員 飯田国大さん】
「10平方メートルの家を作ったんです」
プリントされたパーツを組み合わせて、およそ23時間で完成した家。
ユニークな形が特徴ですが、3Dプリンターで家を作るメリットはそれだけではありません。
■車と同じ値段で買える家
【セレンディクス執行役員 飯田国大さん】
「SDGsの1番は『貧困をなくそう』。貧困とは何かっていうと、やっぱり家がないことだと思うんです。車を買う値段で家を提供することができれば、もっと社会がよくなると私たちは考えているんです」
現在はグランピングや災害復興住宅として、企業向けに一棟300万円で販売中ですが、2022年8月には、一般販売もスタートします。
さらに2023年の秋ごろには、広さ49平方メートルの家を500万円で販売するのが目標だそうです。
3Dプリンターで、「安く」「早く」家を建てるのが当たり前になれば、住まいのあり方も変わっていくと、飯田さんは考えています。
【セレンディクス執行役員 飯田国大さん】
「政令指定都市の家は非常に住みやすいけど、一般のサラリーマンの方が払える値段かって言われると、もう払えなくなってきている。政令指定都市から90分離れれば、日本にはいくらでも土地があります。さらに、スカイドライブとか空飛ぶ自動車っていうのが大阪万博のある2025年に出てくると、本当に移動が自由になる。そうしたら、どこに住んでもいいって選択肢ができて。明るい未来が待ってますよ」
3Dプリンターで「安く」「早く」作られる家は、「SDGs」で掲げられる17の目標のうち、1番「貧困をなくそう」と11番「住み続けられるまちづくりを」を達成する一助となりそうです。
また、廃材が出にくく環境への負担が少ないことから、13番「気候変動に具体的な対策を」への貢献も見込まれます。
3Dプリンターが実現する未来に、今、期待が高まっています。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年4月28日放送)