【カンテレSDGs】実はすごい!地元産業 中学生たちが再発見 地元は全国有数の植木産地だった 職人技の魅力伝えるデジタル教材づくりに挑戦 2022年04月26日
持続可能な社会のために、2030年までに世界で達成を目指す目標「SDGs」。
今回取り上げる目標は、11番「住み続けられるまちづくりを」です。
あまり知られていないけど「実はすごい!」地元産業。
大阪府池田市の中学生たちが、そんな産業の魅力を発掘する教材作りに挑みました。
■池田市・細河地域の「植木産業」―需要減少や後継者不足の課題も
威勢の良い掛け声が飛び交うセリ。
大阪府池田市の細河園芸農協に集まった人たちのお目当ては、「植木」です。
丘に囲まれた池田市の細河地域。
水はけが良い土地を生かした植木産業が盛んで、「日本四大産地」の一つです。
しかし、近年は住宅の洋風化などにより植木の需要が減少。
現在およそ190世帯が植木産業を支えていますが、後継者不足にも悩まされ、衰退の一途をたどっています。
【細河園芸農業協同組合 籔内勝美さん】
「細河が植木の四大産地ということをもっと子供たちに分かってもらって、『僕も植木作ってみよう』と思ってくれたらいいかなと」
■地元産業を盛り上げたい!植木職人への取材に挑戦する中学生
そんな地元産業を盛り上げる取り組みに挑戦したのは、「池田市立ほそごう学園」の中学2年生。
池田市では、小学3年生で地元の植木産業について学びます。
しかし、教科書の説明だけでは、なかなか興味を持ってもらえないのが課題でした。
そこで、今回生徒たちが挑戦することになったのは、動画や写真を使った「デジタル教材作り」。タブレット端末などで再生できる教材です。
教材作りのためにまず必要なのは、植木職人への取材です。
生徒たちが訪れたのは「接ぎ木(つぎき)」という植木の技術を紹介してくれる職人さんの仕事場。
「接ぎ木」とは、育ちにくい木を別の木と接ぎ合わせることで、成長を促したり、優れた木の性質を引き継がせたりする技術です。
話をしてくれるのは、この道およそ60年のベテラン接ぎ木職人、谷向健司さんと息子の健一さん。
緊張していた生徒たちですが、教材作りに必要な情報を聞こうと、積極的に質問します。
【生徒】
「接ぎ木のテープはどんな感じのですか?特殊やったりとか…」
【接ぎ木職人 谷向健司さん】
「昔、私のおじいちゃんの時は、わらを柔らかくして縛って結んでました。今は弾力性、伸びのあるこういうテープで」
動画担当の生徒も、慣れない撮影に必死です。熱心に話を聞く生徒たちに、職人さんは思わず…
【接ぎ木職人 谷向健一さん】
「細河の植木、盛り上げなあかん。誰かやってくれるんやったらウェルカムや!」
取材を終えた生徒は、「調べ学習の時は緊張しないけど、人に聞きに行くとなるとすごく緊張する。どこで質問を投げかけたらいいのかとか、話の切れ間が分からんかったりはしたけど、思うようにはいきました」と、ほっとした表情を見せました。
生徒たちは接ぎ木の他に、剪定(せんてい)や盆栽作りなど8つのグループに分かれて、職人さんから話を聞きました。
■タブレット端末を駆使して試行錯誤のデジタル教材づくり
それぞれが持ち帰った情報や映像を共有し、早速、教材作りに取り掛かります。
植木の技術には専門用語が多く、説明が難しくなってしまいがち…。
どうすれば小学3年生に興味を持ってもらえるのか、生徒たちは頭をひねります。
【盆栽班の生徒】
「(盆栽の)成長の過程やっていきたいけど(写真が)ぶれてる」
【接ぎ木班の生徒】
「(接ぎ木の)テープ巻くシーンはほしいし。ほんまに動画(編集)難しすぎて。ユーチューバー、編集うまいな…」
完成までにかかった時間は、合計およそ20時間。
それぞれの工夫が光る、オリジナルのデジタル教材ができあがりました。
教科書では写真だけで紹介されていた寄せ植えの作り方も、生徒の作ったデジタル教材の動画では、職人さんの技術を目の前で見ているかのような仕上がりに。
試行錯誤を重ねた接ぎ木班の教材は、職人さんの緻密な接ぎ木の作業が動画に収められていて、細部までよく分かります。
さらに、小学生が楽しみながら学べるようにクイズを入れる工夫も凝らしました。
■完成したデジタル教材を池田市全域へー池田市教育委員会も絶賛
この教材を、学校内だけではなく池田市内全域の小学校で使ってもらおうと、先生が教育委員会に相談を持ちかけました。
【池田市教育センター 中野正敏さん】
「取材も編集も子供たちが?ナレーションも?すごいな、プロみたい。むちゃくちゃいいですね、むちゃくちゃいいです」
教育委員会の担当者も、そのクオリティーに驚きの声が止まりません。
【池田市教育センター・中野正敏さん】
「人に触れているから、動画の中に熱量が生まれていると思う。すごく温かみがある教材で、なかなか大人がパソコンの世界だけで作れるものではない。子供たちが学ぶにふさわしい教材だと思います」
後輩たちのために作った教材でしたが、生徒自身にも変化があったようです。
【盆栽班の生徒】
「編集がうまくなった。大変やったけど楽しかった」
【接ぎ木班の生徒】
「始まる前は(植木に)ほぼ興味なかったけど、始めてから新たな発見があった」
子供たちの地元の魅力の再発見が、まちづくりの一翼を担っていくかもしれません。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年4月26日放送)