小学校5年生の時から3年半かけて髪を伸ばし続けた、1人の男子中学生がいます。
彼はなぜ?髪の毛を伸ばし続けたのか。
目的に向かってまっすぐ進むなかで、経験した苦労と新たな気づきとは。
■小5から髪を伸ばし続けて71センチ…男子中学生の願い
長くて、サラッサラな髪の毛を持つ中学生。
ウィッグに使われる髪の毛として、自分の髪を寄付しようと、小学5年生の時から一度も切らずに大切に伸ばし続けてきたのは、川端祥也さん。
中学2年生の男子です。
髪の長さを測ってみると・・・
【祥也さんの母・川端かおりさん】
「71cm!」
【川端祥也さん】
「え、そんなあるん! 俺の髪の長さこれ?」
【祥也さんの友達・王楓斗さん】
「祥也が4・5年生の時は、ずっと丸刈りだったんですよ。それが突然、伸ばし始めた」
【川端祥也さん】
「キッカケは小学4年生のころ。友達が『ヘアドネーション』のことを題材にした夏休みの自由研究をやっていた。自分の髪で作ったカツラを使ってくれる人がいたらいいなって、使ってくれる人が喜んでくれたらいいなっていう思い」
ヘアドネーションとは、寄付された髪の毛から作った「医療用ウィッグ」を無償で提供することです。
祥也さんは、伸ばした髪の毛を、18歳以下の子供たちにヘアドネーションをしているNPO団体に寄付します。
祥也さんの髪を受け取る「Japan Hair Donation & Charity(JHD&C)」には、毎日およそ300人から髪の毛が届いています。
■医療用ウィッグ1つに30~50人分の髪の毛が必要
【JHD&C 渡辺貴一 代表理事】
「原毛をウィッグ用に使うために加工して、髪質と色を整えたのがこの加工毛。これが加工毛に仕上がったやつです。この状態になって初めてウィッグとなります」
【JHD&C 渡辺貴一 代表理事】
「ヘアドネーションの活動は、ゴミとなるはずだったものを拾い上げて、価値を付けて、アップサイクルして、ウィッグみたいな高級なものに作り上げて、お渡しすることなんです」
人の髪で作られる医療用ウィッグは頭皮にやさしいため、抗がん剤の影響で肌が敏感になっている多くの患者が望んでいます。
一つの医療用ウィッグを作るには、30人から50人分の髪が必要です。
JHD&Cからの寄付を待っている、脱毛症やがんの治療中の子どもたちは252人にのぼります。
ウィッグを受け取った子どもからの手紙には、「色々な人が色々な想いで寄付してくれているので、本当に大切にしようと強く思いました」と綴られていました。
【JHD&C 渡辺貴一 代表理事】
「お子さん用の(医療用)ウィッグって、既製品の展開が非常に少ないです。気に入ったウィッグって、大体セミオーダー・フルオーダーしかないんですね。そうなるとめっちゃ高額なんですよ。安くて30万とか、大体40万円台。なかには50,60万円のものも…。すごく高くなる。そういうものが無料で手に入るというその点については、めちゃくちゃ喜ばれていると思います」
■苦労も悩みも…大切に髪を伸ばした男子中学生
寄付するためには髪を31cm以上に伸ばさないといけません。
そのため祥也さんは3年半髪の毛を伸ばしてきました。
その間には、様々な苦労がありました。
【川端祥也さん】
「洗う時、シャンプーとかリンスの消費量がすごいなって」
【祥也さんの友達・王楓斗さん】
「ドライヤーが何分やったっけ?」
【川端祥也さん】
「長い…、大体30分くらいかかる」
【祥也さんの友達・王楓斗さん】
「ドライヤーに30分かけるのは、ちょっともったいないなって思った」
祥也さんはボーイスカウトに所属していて、5泊6日のキャンプに行くこともあります。
実はこれが大変だそうです。
汗だくになりながら山を登ったり、焚火で煙を浴びながら料理をしたり、そのままテントで寝たり…。
体力的にも、髪にも過酷な6日間を過ごします。
【川端祥也さん】
ーーQ:ボーイスカウトのキャンプ中にシャワーは?
「なしですね。帰ってきた時は髪はベタベタで、カチカチで、すごいことになってて」
家に帰ってきて、髪を洗うのも一苦労。
【川端祥也さん】
「(髪を)洗って、一回出て「煙くさ」ってことで、もう一回風呂場行かされて、もう一度、何回か洗ってから出る」
そして、髪が長くなるにつれ、別の「悩み」も。
【川端祥也さん】
「中学校に通い始めた最初の方は、学ランを着ただけで周囲からは『ええ!?』という反応があったし、公共のトイレに入ると変な目で見られないかなって思ったりしてました。髪の毛が長くて、見た目が女子っぽいからって、女子とは限らないし。髪長いから女子みたいな、身長が高いから男子とかはなくしてほしいかなという気持ちですね」
■大切に伸ばし続けた髪の毛…断髪の時!
周囲の目に悩むこともありましたが、それでも切らずに伸ばし続けました。
【祥也さんの母・川端かおりさん】
「野外活動とかも多くて、他の子よりも汗かくとか、お風呂に入れないことが多い子なんですけど、見た目で判断されるのが最初のうちは、ちょっと違和感があったとも言ってたんですけど、それも笑いに昇華して、3年半頑張ったなと思います」
いつの間に、伸ばし続けた髪の毛に強い愛着が湧き、必要な長さを超えてもなかなか切れずにいた祥也さん。
でも、本来の目的のために「断髪」を決意しました。
【美容室Synergy・春名康彦さん】
「仕上がりは?」
【川端祥也さん】
「全然思いつかなくて、流行りの中学生ぐらい・・」
【美容室Synergy・春名康彦さん】
「中学生・・(笑)もうバッサリ切っちゃっていい?どう、切る心境は?」
【川端祥也さん】
「めっちゃ今ドキドキしてます」
【美容室Synergy・春名康彦さん】
「ドキドキするよね。すごいな、すごい長い」
3年半、大切に伸ばしてきた髪。
お母さんに見守られるなか、まずは自らの手で鋏を入れます。
【川端祥也さん】
「誰これー!すっきりして清々しい気持ちはあるんですけど、若干悲しい。うわ!鏡みれへん・・・」
■大切な髪を誰かのために…
しっかりしたきれいな髪の毛がたくさん取れました。
断髪から、5日後。
大切にしてきた髪の毛を送り出します。
【川端祥也さん】
「18歳未満でウィッグを欲しい人って、何か特別な事情がないとあんまりいないと思う。だからウィッグは誰が作ったとかを意識するんじゃなくて、受け取る方には闘病生活とかを頑張ってほしいなと思います」
【川端祥也さん】
ーーQ:またチャレンジしたいと思いますか?
「ちょっと思ってます(笑)。もう一つウィッグ作れるってなったらいいし、回数はたくさんやった方がいいんじゃないかなと思ってます」
苦労もあったけど、楽しく大切に伸ばした髪の毛。
誰かの宝物になると信じています。
(2022年4月13日放送)