京都市で、個人制作の映像作品を上映してきた小さな映画館。
新型コロナウイルスなどの影響もあり、2022年3月末に、ひっそりと閉館しました。
その、さいごの日々を追いました。
■8ミリフィルムも上映 数少ない映画館
京都市下京区。古い町並みの中に、ルーメンギャラリーはあります。
【ルーメンギャラリー 代表 桜井篤史さん】
「2015年にここ(映画館)を始めました。自分らのやっている個人の作る映像を専門に上映して、見ていただける場所が欲しいな、と」
【桜井さん】
「他にはないと思います。フィルムをちゃんとしっかり上映できる環境」
今では珍しくなった、8ミリフィルムなどで撮影された映像を上映できる数少ない映画館です。
【桜井さん】
「動員がすごかったのは河瀬直美さん。あの人の劇場公開前の学生時代、講師時代の8ミリフィルムを20本以上かな。まとめてやったのは初めてじゃないかと思うんですけどね」
■新型コロナの波・・・7年間の歴史に幕
数多くの映像作家たちの作品が上映されてきた、この映画館。
実施した企画展の数は150を超えますが、3月末での閉館が決まっていました。
【桜井さん】
「ネットで見る、スマホで見るということが主になったというか。映画との向き合い方が変わってきた。厳しくなってきて、人が減ってきたな、と思っているところにコロナ。経済的な理由で(運営を)断念せざるを得ないということが一番大きな理由ですかね」
新型コロナの波は、細々と文化を育んできたこの場所にも、影を落としました。
■最初で最後の映像個展
3月中旬。桜井さんは閉館にあたり、この場所では最初で最後になる、自分の作品の映像個展を開きました。
「大勢のスタッフやお金がなくても、個人で面白い映像表現ができる」そんな思いで作ってきた作品たち。
【桜井さん】
「個人が作ったから、なんでもかんでも面白いとか、商業的な映画だからっていう風に否定することは、全くなくて。僕も劇場に映画を見に行きますし。選択肢がなくなるのが一番悲しいというか。8ミリ、ビデオ、データ、全部あると、今回はこの作品、フィルムで作ってみたいな、とかできるじゃないですか」
待ちかねたお客さんが続々と入ってきました。親子連れの姿も見えます。
【観客】
「今はパソコン、ネットで、どんな映画でもみんな見られると思っている。そういうところで見られない映画、個人の表現が、実際はものすごくたくさんある」
【親子連れ】
「ちょっと難しいかなと思っている内容でも、連れてくると自分でここが好きだったって。こっちが最初から幅を狭めるのではなくて、思ってもないところに引っかかる、そういう幅広さを体感させてもらったと実感しています」
万雷の拍手とともに、この場所での最初で最後の映像個展は終わりました。
後日、ギャラリーの後片付けを、スタッフみんなで行いました。
ルーメンギャラリー、最後のとき。
数々の映像作品を映してきたスクリーンも、その役目を終えました。
「冷酷なようですけど、下へ」と劇場外へ促す桜井さんの声。
温かい笑いが広がります。
この映画館だから触れることのできた作品が、きっとありました。
ルーメンギャラリーは、別のアーティストの手によって、新たな表現の場として生まれ変わります。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年4月11日放送)