新型コロナウイルスの感染拡大によって、かつてない苦境に陥ったのが、航空業界です。
減るフライトに、長引く出向。
それでも、懸命に1日1日働く、航空業界の人たちの今を取材しました。
■フライトが減ったCA 自宅学習の日も
3月中頃の早朝、伊丹空港入りした、近藤希美(こんどうのぞみ)さん。国内線で働くキャビンアテンダントです。
所属先「ANAウイングス」に入社して6年目。
この日は3月に入って4度目の乗務。同僚たちと会うのも、久しぶりです。
【近藤希美さん】
「出社する機会もすごく減ってきた時期があったので、こうやって出社して人と話す時間ができるのがすごく今ありがたい」
国内線は少しずつ回復傾向にあるといいますが、それでも近藤さんたちのフライト時間はコロナ前の3分の2程度に減っています。
空いた時間で、近藤さんは会社が提供する語学や接客対応などの学習プログラムを、自宅で受けてきました。
この日のフライトは、伊丹、仙台間の往復。
新型コロナウイルスの感染拡大で、機内サービスは、ゴーグルや手袋をつけて行う、重装備が当たり前になりました。
トイレも乗客が利用する度に触れる部分を入念に消毒していきます。
【近藤希美さん】
「マスクを着けているので、私たちCAの声が届きにくかったりとか、顔を近づけるわけにもいかないので、苦慮します。マスクをしてると口元が見えないので、目元からの笑顔をしっかり伝えることで、お客様の安心感やあったかさにつなげたい」
「今思い返せば、すごくフライト機会がなかったので、寂しい気持ちはあったんですけど、必ず航空業界は需要があると思ってますので、お客様が戻ってこられることを楽しみにフライトしています」
■出向4社目 「何のために働く」 それでも前を
一方、出向という形で、本来の「空の仕事」から離れざるを得ない人も多くいます。
関西空港の対岸にあるりんくうプレミアム・アウトレットのボディコスメショップで働く、芳村花(よしむらはな)さん。
国際線の地上業務を担うスイスポートジャパンの社員(入社5年目)で、もともとは、関西空港で手荷物の受け取り業務などを行うグランドスタッフとして働いていました。
【芳村花さん】
「高校卒業して留学に行ったんですけど、ニュージーランドと韓国に行きました。(グランドスタッフの仕事では)海外のお客様と、英語とか語学力を生かしてお話できるのも楽しかった」
関西空港の国際線旅客数は、コロナ前と比べると99%減少。スイスポートが取り扱うフライトも、週100便以上から2便にまで激減しました。
今まで通りの勤務が難しくなり、スイスポートでは、およそ3割の社員が出向。休業を余儀なくされている人もいます。
芳村さんも、2021年1月から出向していて、出向は4社目です。
【芳村花さん】
「倉庫内のピッキング作業と、コールセンターと、大型スーパーのレジアシスタントを経て今ですね」
「私が今どこで何のために働いているのか分からないという時期がつらかったです」
スイスポートでは、出向中の社員に、毎週、天気マークでメンタルの状態を上司に知らせるシステムを導入。
出向先がマッチしているかどうかや、社員の気持ちの変化に対応しています。
【スイスポートジャパン人事企画部・宮下竜蔵部長】
「会社としては、社員の雇用を守るということもあるが、働く環境を提供することも会社として非常に重要な使命だと思っています」
「出向先にいても問題があれば弊社の上長がケアをさせていただくということで、社員みなさんの負担を極力減らしたいという思いで進めています」
最初は悩んでいたという吉村さんですが、時間が経つにつれ、考え方は変わってきました。
【芳村花さん】
「出向しなかったらできなかった経験やできなかった仕事、一番が出会えなかった人が本当に多いと思ったのと、他社の中を見ることができたのが本当に良かったと思います」
「スイスポートにもいかせていけたらという点が多くあったので、持って帰れたらなと思います」
コロナの影響を直に受けている「空の仕事」。
いつか再び訪れる、人々が自由に行き来できる日に向けて、今だからこそできる出会いと経験を積み重ねています。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年3月29日放送)