2月、滋賀県で配られたピンク色のマスク。デザインしたのは地元の高校生達です。
実はこれ、世界的な「いじめ撲滅」の運動なんです。
オシャレなマスクに込められたメッセージを取材しました。
■ピンクマスク 実は世界的活動
2月23日、滋賀県長浜市には、ピンク色のマスクをした人たちの姿が。
このマスクを配っているのは、地元の高校生たち。
実はこれ、世界的に広がっている活動の一つなのです。
事の発端は2007年2月。
カナダでピンク色のシャツを着て登校した男子中学生が、「ホモセクシャルだ」とからかわれたうえ暴行を受けました。
このいじめを知った上級生が「あした、みんなでピンクのシャツを着よう」と呼びかけたところ、学校はピンク色の服などを身に着けた生徒で、いっぱいに。
この行動がきっかけで、2月の最終水曜日には、ピンクシャツでいじめ撲滅を訴える活動が、世界中で行われるようになったのです。
■中心メンバーは高校2年生
2022年、この活動に参加することにした、長浜市の県立虎姫高校。
シャツではなく、毎日つけるマスクを使うことにしました。
中心メンバーのひとり、2年生の林 久瑠海(はやしくるみ)さん。
自身の経験から、伝えたいことがたくさんあります。
【林さん】
「中学3年生の終わり頃とか中ごろやったんで、どんどん学校でも家でも勉強モードでどんどん行事もなくなっていく」
「その中で、(いじめた側の)その子のストレスがどうにもできなかった、ストレスが発散できるところが他にないから仕方ないって(先生に)言われて、何が仕方ないんだろうと思った」
「周りの大人に相談してって言われるんですけど、したって何も変わらんし、して何があるの、って」
学校に相談しても対応されず、高校進学は、地元から離れた虎姫高校を選びました。
【林さん】
「いじめから解放された時の帰りの空、いつも見ている空が、めっちゃ立体的に、めっちゃきれいに、めっちゃ青く見えて…それがきっかけで、世界ってこんなきれいやったんやなあみたいなのは本当に実感して」
生徒に提案したのは2年生の担任、杉山先生。前任地の横浜市で、この活動を知りました。
【杉山将崇教諭】
「(生徒が)こんなに集まるなんて思ってなかったので、すごくびっくりしています。彼らが彼らの思うようにやってくれたらいいんじゃないかなと思いますし、それが成功への近道なのかなと思います」
有志で集まった生徒たちは、自分たちでデザインを考え、クラウドファンディングで集めたお金でマスクを準備しました。
■小学校で授業 違いを認め合う大切さを
活動はマスクを配ることにとどまらず、自分たちで考えた授業を小学校で行うことになりました。
選んだテーマは「違いを認め合う大切さ」。
授業の日。林さんも教壇に立ちます。
【林さん】
「あ、ピンクの服着てる、とか言って、目立つように指摘していくっていうのが、一番だめなことで、これが無ければ、いじめは起こらないとわたしたちは考えています」
林さんは、「もしこの世に、自分みたいな人しかいなかったら、この世界はどんな世界なっていますか」と質問しました。
参加した小学生からは、「ずっと家でゲームしたりアニメ見たりしている。多分もう外見ても、誰も人が居んみたいな感じかなって思います」との答えが。
林さんは、「違いがあることは、本当にすばらしいこと。違いがあるからこそ、この世界はうまく成り立っていると思います」と小学生たちに訴えました。
【杉山教諭】
「ピンクマスクデーは、いじめや差別の撲滅を目指しているんですけど、根本はやっぱり多様性を認める、男の子がピンクのマスクをしていてもいいじゃないか、ピンクのシャツを着ていてもいいんじゃないか、というところが本質だと思う」
「人がこういう風に思うから自分はやらないんだ、とか、そういったネガティブなマインドではなくて、自分が本当にやりたいことをやりたいように、できるような教育現場っていうのを作っていけたらなと思っています」
■コロナ感染での中傷は地元でも…
マスクは地域の人たちにも配る計画です。
いじめは、学校や子供の周りだけで起きているわけではありません。
【虎姫高校の生徒】
「コロナになってしまわれた方に対しての、インターネットとかでの誹謗中傷が、すごいひどいなと感じました」
ネットだけではなく、感染した人の家に貼り紙をされたり、石を投げられたりすることが地元でも起きました。
今だからこそ、より多くの人に協力して欲しいと考えています。
【虎姫高校の生徒】
「ピンクで(街を)染めて盛り上げたいですね」
【林さん】
「いじめ反対差別反対の意味を乗せたピンク色で、染まればいいなって思います」
■街へ広げるピンクマスク 確かな手ごたえ
迎えた当日は寒さが厳しい雪の日。でも、準備は万全です。
賛同してくれる人に、マスクを配っていきます。
【賛同した人】
「いじめの撲滅というところで、賛同させていただこうと」
「自分たちの子供にも同じような気持ちをもってもらいたいなと思いますね」
「いろんな人が同じマスクをすることで、少しでも興味を持ってくれる人が増えたらいいなとは思いました」
林さんたちの授業を受けた小学生たちの姿も。
【小学6年生】
「なんかここのイラストがかわいいなって思いました」
【児童の親】
「(いじめ撲滅について)年の近い人に言ってもらった方が、胸にはとどめたみたいで、よかったです」
【杉山教諭】
「熱い思いを語っている様子はすごく良かったんじゃないかなと思いますし、あの熱意が大人に伝われば、また長浜市も少しずつ変わってくるのかなと思いました」
林さんも、手ごたえを感じていました。
【林さん】
「関心を持ってくださっている、それが本当に、今回だけじゃなくて、次につながるために一番良かったかなって思います」
「みんながみんなそれぞれ、人と同じところも違うところも認め合って、そういうつらい思いをしないのが普通である社会になっていってほしいなと思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年3月7日放送)