2025年の大阪・関西万博まであと約3年。
2021年12月に日本国際博覧会協会の副会長に就任した、ウスビ・サコさん(55)に大阪万博への思いを聞いた。
ウスビ・サコさんはアフリカのマリ共和国出身で、1991年に留学生として来日し、工学部で建築などを研究。現在は京都精華大学の学長を務めている。
2005年に愛知で開催された愛・地球博で、パビリオンのアドバイザーとして活動した経験などから、博覧会協会からオファーを受け、2025年大阪・関西万博に向けて万博の方向性やパビリオンのテーマの検討に携わっている。
■大阪万博を、「関係性」が生まれる場所にー
ウスビ・サコさんは、2025年に大阪で万博を開催する意義について次のように語る。
1970年の大阪万博では、人々がこれまで見たことのない文化や技術を体験することで衝撃を受けた。その衝撃は、その人の人生にまで影響を与えることもあった。
しかし、社会は発展し、ネットなどで世界中の情報が即座に手に入れられる時代になった。次の万博が世界に・人々に何を残すのかについても考え直す必要がある。
2025年の大阪・関西万博では、各国の文化や技術の展示で満足することなく、国同士・ビジネスをする者同士の「関係性」を生み、協力して課題を解決していくきっかけとなる場所にしなければならない。
例えば、京都の伝統産業。日本では後継者不足などの課題があるが、蓋を開けると世界各国の伝統産業が同じ課題を抱えていたりする。
モノだけを展示するのではなく、共通項を提示するという視点が重要だ。
そうすることで、ポテンシャルを持った企業がビジネス展開を検討するかもしれないし、国同士が協力し合って課題に向き合うきっかけとなるかもしれない。
デジタル化や環境問題など、世界各国が自国だけで解決することが難しい課題を抱えるいま、求められる視点だ。
■課題は機運醸成と参加国の招致―
大阪・関西万博の開催まではあとおよそ3年。ウスビ・サコさんが課題として挙げるのは、万博に向けた機運の醸成だ。
3年後に開催が決まっているのにも関わらず、国民の期待感があまり感じられないという。
万博に向けた準備は、博覧会協会だけで行っているというイメージが強いが、ウスビ・サコさんは、国民を巻き込んで作っていくものという意識が必要だと話す。そのために、万博に関する情報をオープンにしながら、透明性の高い活動を目指す。
もう1つの課題は、参加国の誘致だ。参加国の数の多さが、万博の盛り上がりを左右すると言っても過言ではない。
日本は150カ国・25の国際機関の参加を目標としているが、現在、参加を表明しているのは78カ国・6国際機関と、目標の半分程度にとどまっている。(2月21日時点)
参加表明の締め切りは設けていないが、パビリオンの建設開始まではあと1年半ほどしかなく、それまでに設計なども必要であるため、時間は限られている。
博覧会協会は、招致活動の一環として、現在UAE(アラブ首長国連邦)で開催されている「ドバイ万博」にスタッフを常駐させ各国のパビリオンの館長などに対して招致活動を進めているが、閉幕は3月末に迫っている。
これについてウスビ・サコさんは、ドバイ万博が終わってから次の万博への参加を考える国もあるのではないかと話す一方で、そもそもドバイ万博の開催がコロナの影響で1年遅れていることで招致期間が短くなっていると焦りを見せる。
ドバイ万博では、UAE(アラブ首長国連邦)が、各国にコンサルタントを付けるなどして招致活動を積極的に行っていたという。
ウスビ・サコさんは、日本でも、さらに速度を上げて招致活動を進めていかなければならないと話した。