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■住宅街の公園を進入禁止のバイクが走行

安全で身近な憩いの場といえば公園ですが、進入禁止のはずの「バイクの通り抜け」が後を絶たない公園が神戸にあります。
いったいなぜ通り抜けるのか…実態をツイセキしました。

神戸市須磨区にある「塩屋山手清玄高倉公園」
静かな住宅街にある公園ですが…。

【記者リポート】
「また1台来ました。犬を散歩している人の横を通り過ぎて、エンジンを切ることなく行きました」

■公園を通り抜けるバイク　理由は“近道”

バイクの走行は禁止されていますが、2時間の取材で7台の通り抜けがありました。

【近所の住民は…】
「（犬が）何度かひかれそうになって危ないなと」
「子供がここの道を三輪車とかで降りているときも、バイクがたまに横で通ったりするので、子供をかばうとかして当たらないように気を付けています。一日を通して何度も皆さん通られているので。もう時間帯は関係なく頻繁です」

神戸市では条例で公園内でのバイクの走行を禁止していて、違反すると５万円以下の過料・行政罰が課せられます。
それなのにいったいなぜ通り抜るのでしょうか？

【エンジンを切らずに走行していた男性】
ーーQ：すみません。ちょっとお話をお伺いしたいのですが、こっちの道を通るのはなぜですか？
「車道を通ると10分ほどオーバーになる」

「向こう側の垂水区の方に行くときに全然違うんですよ。だから皆さんたぶん通られると思う」

実は、この公園、住宅街の真ん中にあり、 高低差のある東側と西側を隔てているのです。 
このため、 西側から大型店舗がある東側のエリア（須磨駅方面）へバイクで向かうと大回りをしなければならず、6分以上時間がかかりますが…公園を通り抜けると、およそ半分の時間で到着できます。

条例ではエンジンを切って手で押すのであれば 通行が認められていますが…

【エンジンを切らずに走行していた男性】
「押すって言ってもね。上にのぼる道路なんかこんな重たいもの押せませんやんか。下から押せって言ったら、常識はずれなこと書いてますね。安全なことばかり言ってたら何もできませんよ」

横行する条例違反について警察は…

【兵庫県須磨警察署　安藤一平交通課長】
「公園内の道路を通行してはダメですよという内容の法律は道路交通法にありませんので、それを持って取り締まるのは現実的ではない」

須磨警察署によると、公園内の道は歩道でも車道でもなく法律上「道路」ではないため、取り締まりの対象ではなく、あくまで神戸市が管理するものだとしています。

神戸市建設局に取材を申し込むと、書面で回答が返ってきました。

【神戸市建設局】
「公園利用者にとって危険だという要望があり、5年前に出入口にU字パイプを設置しました」

何台ものバイクが通り抜けていたあの公園で5年前から対策を取っていたとは、どういうことなのでしょうか？ 

■公園通り抜けバイクに警察・行政の限界

【記者リポート】
「公園の入り口にはバイクの侵入を防ぐ柵がありますが、間隔が広いので、通り抜けることができてしまいます」

バイクの走行防止に意味をなさないＵ字型の柵。
間隔を広くした理由について神戸市は…

【神戸市建設局】
「完全にバイクの侵入を妨げると、バリアフリーの観点からも車いすなどの利用者が公園を利用できず対応が難しく、マナーの啓発に頼らざるを得ない状況です」

■通り抜けバイク阻止かバリアフリーか

バリアフリーとは、段差の解消や、車いすなどでも通れる幅の確保といった、障がい者や高齢者が暮らしやすくなるようにする取り組みで、国は公共施設などのバリアフリー化を推進しています。

2019年度時点では公園の道や広場のバリアフリー状況は５９％でしたが、2025年度にはおよそ７０％にする目標を国は立てています。

このU字パイプも国のバリアフリー整備ガイドラインに沿って設置された結果、バイクも通り抜けることができてしまったのです。

こちらは大阪府豊中市の公園にある回転式のゲート。 
バイクの通り抜け防止とバリアフリーを両立させるものとして ２２年前に設置されました。 
しかし、近年普及している大型の電動車いすなどには対応できず、国に苦情が寄せられています。

■進入防止柵の撤去の動きも

こうした現状を受け、大阪府は去年７月から実証実験を始めました。
寝屋川公園の出入口の一部の柵を日中のみ取り外す取り組みです。 

【公園の利用者】
「ちょうど空いているところが便利なのでよく使ってます。（ベビーカーの時は）ありがたいですね。ちょっと（間隔が）あるだけでスッと通れる」

これまで、大阪府は管理する19の公園のうち９つで柵を一部撤去していますが、撤去を始めた堺市の公園では1年間で97件のバイクの通り抜けが確認されています。

【寝屋川公園管理事務所　森宣之所長】
「バイクが入って万が一お客様がけがでもされますと大変なことですので、公園の管理者としてはそういう来園者の安全を確保しないといけないのでそこが悩ましい」

清玄高倉公園はその後、「バイク走行禁止」と書かれたコーン標識が置かれ、バイクの通り抜けは難しくなりました。  

一方で、公園から少し離れた、バイク走行禁止の道路では、 堂々と走行するバイクの姿が目立つようになったということです。
※歩行者・自転車専用道路のため、バイクで走行すると道路法違反に該当

対策をしても、同じようなことが繰り返されるいたちごっこ。
近道できるから、誰もいないから…どんな言い訳をしても、公園や許可されていない通路でバイクの走行はしてはいけません。
バリアフリーが抱える矛盾の解消は、運転手のみなさんのモラルにかかっています。

（2022年2月18日放送）