文部科学省の調査によると、高等学校の「男女共学」の数が増え、男子校・女子校の減少傾向が続いています。特に男子校は40年前の4分の1に。
男女共学が増える中、それでも貫く学校の存在意義とは。男子校出身の関西テレビ、新実彰平キャスターが取材しました。
■創立129年で決断 「女子校→共学」で生き残りかける
兵庫県姫路市にある「日ノ本(ひのもと)学園高等学校」。女子サッカー部はインターハイ優勝5回を誇る強豪です。
創立以来ずっと「女子校」でしたが、2021年、129年目にして「男女共学」になりました。
全校生徒410人中、男子はまだ14人だけで教室も別々ですが、4月からは新たにコースを増やし、男子の出願者は50人以上いるそうです。
共学化を決めたワケとは?
【日ノ本学園高等学校 中川守校長】
「男子だから女子だからという部分の性分化の問題に真剣に取り組まないと、社会では成り立っていかないのではないかなと思っている。それ(女子校)にこだわって生徒数が減っていけば、”男子を入れて学校を存続”していくというのがやはり同窓生の願いですから」
ジェンダーフリーと少子化の時代。生徒数を増やすために生き残りをかけた改革として”共学”にする私立の学校が増えているといいます。
女子生徒の反応は…
【女子生徒】
「びっくりはしましたけど、ああ、来るんやみたいな」
「行事とかも男の子もおった方が盛り上がりそう」
一期生となった男子生徒は?
【男子生徒】
――Q:この学校を選んだ理由は?
「髪の毛を伸ばしても受け入れてくれる(学校)ということで入学しました」
【別の男子生徒】
「男子か女子かどっちかってやるよりは、みんなで一緒にやった方がいいと思います。(学校は)めっちゃくちゃ楽しいですね」
文部科学省の調査によると、高等学校の「男女共学」の数は、この半世紀でおよそ1.5倍に。一方、男子校・女子校は減少傾向が続いていて、特に男子校は40年前の4分の1にまで減っているのです。
■この時代に女子校貫くワケは…「女性に合った教え方を」
【新実キャスター】
「大阪市にあります城南学園に来ました。女子校です。私男子校なんです。未知なる世界です。厳しい時代になぜ女子校貫くのか?そのあたり伺います」
創立以来、87年に渡って女子校を続ける、大阪市東住吉区にある城南学園。まず、”未知なる女子校”を、ちょっと見学させてもらいました。
【女子生徒】
――Q:女子校の大切さを取材しに来たんですけど、女子校でよかったことは?
「制服がかわいい」
――Q:女子校を選んだ理由は?
「保育コースがあったから」
選んだ理由は、「学びたい専門コース」や「入りたい部活」があったから「制服がかわいい」からなど。女子校だからという声は聴かれませんでしたが、じっくり話を聞くと、女子校の魅力が見えてきました。
【高2の女子生徒】
「男の子がいたら、男関係の揉め事が多いみたいなことを聞くから…先に好きになったのにとか、そんな揉め事がない分はいいなと」
【高2の別の女子生徒】
「”前髪”って女子って大事なんですよ!共学の子とかは前髪を気にしながら運動会を楽しまないといけなくて、女子校は女子しかおれへんから異性との目を気にせずにガチでできるん」「あと、男子がおったらできないデリケートな話とかも遠慮なくできる」
――Q:女性ならではの特有の話ってこと?
「そうです」
一方、心配な面もあるようです。
【高2の女子生徒】
「ほんまに男子としゃべらないんで、もうしゃべれるかなみたいな…」
【高2の別の女子生徒】
「理想がどんどん高くなっていって、恋愛とかもあんまり興味なくなってきます」
共学の友達からはうらやましい話も聞くそうで…
【高3の女子生徒】
「(学校内で)恋愛してたらカップルで盛り上がったりしてるから、それはうらやましいなと思う、借り物競争で…彼氏に…みたいな」
女子校の”現状”そして”存在意義”を校長先生に聞きました。
【城南学園高等学校 北川真校長】
「ジェンダーフリーの世の中であえて男子校、あえて女子校を選ぶっていう層が減っている。異性の目がないので、そういう意味では自分をさらけ出してのびのびと楽しく学校生活を送っているというのも女子校の特徴」
一方、教育面では創立当初、行われていた女子校特有の生け花や裁縫の授業は、今はありません。それでも校長は、女性にあった教え方をすることが女子校の存在意義だと考えているそうです。
【北川真校長】
「女性はコツコツやっていくのが非常に得意。本校でいえば女の子にマッチしたそういう教育を心がけている」
――Q:人それぞれ違いますが、概して、女の子に合った、男の子に合ったやり方というのがあると現場でお感じなんですね。
「いわゆるダイバーシティ(多様性)が声高に言われる世の中になり、男子校もあり、女子校もあり、共学校もある、そういう中から生徒が選択できる。そういう環境を設定してあげることが、我々大人がしておくことじゃないかなと思います」
■「男子校は残しておくべき」男子校の校長に聞く、貫くワケ
女子校の存在意義は分かってきましたが、残るは…
【新実キャスター】
「といことで、男子校にやってまいりました。京都の洛星中学・高等学校。私の母校です。久しぶりです。男子校出身なのに存在意義が見えなくなっておりますので取材します」
「女の子にかっこよく思われたいとかじゃない。野球が好きだから…」
1952年創立の「洛星中学・高等学校」。京都府内の男子校は、残り2校となっていて、まさに絶滅の危機状態です。新実キャスターもこの学校で6年間学び、野球部で青春時代を過ごしました。
【高1の男子生徒】
――Q:なぜ洛星に入った?
「野球と勉強が両立できる学校がいいなと思ったので」
【高1の別の男子生徒】
――Q:共学がいいと思ったことは?
「リスクは感じてましたけど、その分、何も考えんと自由にそのままの自分でおれるかなと」
【高1の別の男子生徒】
――Q:男子校の魅力とは?
「下ネタじゃないけど、そういう感じの話題も通して上(先輩)とつながりやすい」
――Q:異性とつながらないことで不安は?
【高1の男子生徒】
「6年間話せないというのは、女性に対する免疫が…ないので(不安)」
【高1の別の男子生徒】
「ここの学校に入学した時も自分はうまいこと対応できたので、どうにかなるやろうと」
【高1の別の男子生徒】
「僕みたいなあんまりコミュニケーション能力が高くない人でも仲良くなれるんで、やっぱり男子校は残しといてほしい」
最後は、新実キャスターもお世話になった校長先生に男子校の存在意義を聞きました。
【洛星中学・高等学校 阿南孝也校長】
「結構、凝る子がうちの学校には特に多くて、ほかのことはしないけど天文は大好きだとか、鉄道だけとかそんな感じの子たちが、もう身なりも考えずに一生懸命やっているわけです。男子校の良さを感じ、のびのびと学校生活を送りたいという子のために男子校は残しておくべき。(共学に)変える予定はないですね」
【新実キャスター】
「男子校だからこそのエピソードを1個、思い出したんですけど、先生とのエピソードで…九州で、阿蘇山に上って…覚えてます?」
【阿南校長】
「覚えてますよ」
【新実キャスター】
「阿蘇山で霧がかかっててめっちゃ寒いんですけど、上半身脱いで、友達を笑かしたいから。ほんなら、先生が、こういうの僕好きだよって言ってくれたんですよ。最高の校長だなって思いました」
【阿南校長】
「のびのびしているという1つの例かもしれません」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年2月2日放送)