壁を使って踊るおじさんたち。
再生回数400万回超えをしている動画です。
これ、れっきとした企業の“公式動画”で、出演しているのは、平均年齢61歳の役員たちなんです。
兵庫県明石市にある「三陽工業」。
バイクなどに使用される部品の研磨や、工場への人材派遣業を行う創業42年を迎える会社です。
ティックトック動画に出演していたのは、取締役・小杉義明さん、監査役・徳岡英樹さん、そして、顧問・森本憲二さん。
三陽工業を担う、おじさんティックトッカーです。
【三陽工業 顧問・森本憲二さん】
「“チックトック”と言ってます。もうこれで通しているんですよ。私こんなんですから、関西人ですから面白おかしく、健康のためもありますし、楽しくやらせてもらっています」
この3人をティックトッカ―にしたところ、会社は様々な"効果″を得ることに…。
【三陽工業 井上直之代表取締役】
「(TikTokを)やりたいっていう声が(小杉さんから)上がってきましたので、“じゃあやろう”と、瞬間に決めました。ティックトック経由で入社をしてくれる人たちっていうのも増えてきてますし」
コロナで進んだ様々な「オンライン化」。
企業の採用活動や説明会は、続々と対面から『オンライン』に切り替わってます。
コンサルティング会社が、2021年に就職活動をしていた就活生150人にヒアリングしたところ全体のおよそ6割が、オンライン参加の方が多かったと答えました。
【就活生(大学3年生)】
「やっぱりオンラインでの説明会とかインターンシップが多いので、その中でなかなか企業を絞るっていうのが難しくて」
【就活生(大学4年生)】
「オンラインだと社風とかも全然伝わらなくて、いざ面接で会社行ったら、全然雰囲気違うなということもあって。情報が多ければ多いほど有り難いので、SNSのアカウントがある方が有難いなと感じます」
三陽工業も、これまで「フェイスブック」などで事業の情報発信はしてきましたが、2021年2月、会社の雰囲気を伝えようと、事業とは関係のない“面白動画”をあげるティックトックのアカウントを開設。
動画投稿を毎日続けると、フォロワー数は1年足らずでおよそ57,000人になりました。
【三陽工業の広報担当者】
「みなさん、おはようございます! では、恒例のティックトック会議を始めたいと思います。最近、伸びが緩やかになってきています、なので、グンとくるのをできたら良いなと思います」
3人に比べずいぶん若い広報担当のリーダーに“厳しい現実”を伝えられながらも、社長も一緒にアイデアを出し合います。
【三陽工業 役員3人】
「きょうもよろしくお願いします」
会議が終わると、それぞれの業務へ。動画チェックで準備も怠りません。
【三陽工業 取締役・小杉義明さん】
「これですね…、では見てみましょうか。これ、難しくてできないんじゃないかな・・・」
【三陽工業の広報担当者】
「小杉さんのダンス、プロ並みになってきましたもんね」
【三陽工業 取締役・小杉義明さん】
「そんなことはないよ」
この日の撮影内容は、バイクのメーカーの名前をエンジン音で表現する、というものですが…
【三陽工業 監査役・徳岡英樹さん】
「ホーンダー、なんかちゃうな」
やや難しいのか、何度も撮り直します。
【三陽工業 顧問・森本憲二さん】
「3段階にして欲しい、スーズーキー、カーワーサキー」
和気あいあいと、でも全力で挑みました。
【三陽工業の広報担当者】
「はい、OKです」
撮影には、会社全体が協力することも。
【三陽工業の広報担当者】
「きょうの撮影で空き缶を使うんですよ」
社長のおごりで配られた缶ジュースをみんなで飲み干していきます。飲んだ後の空き缶は…
協力のもと、集まった貴重な空き缶を円形に並べたら…
「どうでもいいこと」といえば、そうですが、こんな動画を毎日のように投稿し続けると、興味を直接示す学生が現れました。
【内定者の千田亮太さん】
「ティックトックのコメント欄を使ってコメントをして、『新卒募集しています』とか、どんな会社なのかとか」
ティックトック経由で採用の質問を送った内定者の千田さん。
【内定者の千田亮太さん】
「そのコメントを、三陽工業の小杉さんがひろっていただいて、そのコメントに対しての動画をティックトックに出して頂いて、両親と一緒に見たりとか、こんな人が働いている、こんな人が上司にいるとかを知れるというのと、三洋工業さんを受けるときに内定が10社くらいあったんですけど、やはり自分がしっくりくるところで働きたかったので」
2022年4月に入社予定の新卒内定者のうち、およそ4割が「ティックトックを見たのがきっかけだった」といいます。
そして、ティックトック効果は採用活動だけではなく本業にも…
【三陽工業 明石支店長・石原克幸さん】
「営業サイドからしても非常にメリットがあったなと。恥ずかしいんですけど、一度だけ出演したことがありまして。『石原君出てたね』っていうようなことも、お電話を頂いたりとかありましたので、ひとつの話のネタとしてあるので、先方の役職者の方や決裁者の方と仲良くなれたりですとか。『じゃあ三陽工業さん面白そうだし取引してみるか』など、そういった反響もありました」
そして、新たな世界にはまった本人たちも…
【三陽工業 取締役・小杉義明さん】
「皆さんが応援してくれているっていうのは、ときどきのコメントだったり、声をかけていただいたりするときにすごく感じて元気づけられます」
【三陽工業 顧問・森本憲二さん】
「こんな面白い会社があるのかなっていう形で気軽に入ってきていただいて仲間を増やす。そういうことが出来たらいいかなって思います。チックトックのフォロワーを見るんですけれども、いろいろコメント入れてくれてますんでね。それを見ながら反省して頑張っています。ありがたいですね」
「バズる」を目指して全力投球の平均年齢61歳。
きょうも“どうでもいい”ことを撮影しています。
(1月31日放送)