コロナ禍で売り上げが伸びている、薄い紙のような「紙せっけん」。
昔からあるものですが、今その人気が高まっていて、コロナの流行前と比べて売り上げが100倍になった会社もあるそうです。
再注目の紙せっけんについて取材しました。
【薄田ジュリアキャスター】
「梅田ロフトにやってきました。せっけんコーナーに色々ありますが、紙せっけんは…ありました。ハートの形のものから、あぶらとり紙のようなもの、キャラクター商品など、色んな種類の紙せっけんが出ているんですね」
売り場の一角に設けられた紙せっけんのコーナー。去年から需要が高まり、売上も好調だといいます。
【梅田ロフト 健康雑貨担当 高橋城チーフ】
「以前だと1種類の取り扱いだったんですが、色々なメーカーから色々な種類のものが出てきて、すごいバラエティ―感のある売り場になっています」
他にも低価格の商品や、レトロ感のあるものまで、色々な種類のものが登場していて、どれも大人気だそうです
製造している三鳩化学工業によると、もともと60年ほど前から駄菓子やおもちゃを扱う店で子供向けに販売されていたという紙せっけん。
一般的に、固形せっけんを薄く削ったもので、当時は女の子がノートなどに挟んで香りを楽しんだり交換したりする人気商品でしたが、生産コストの上昇に伴い、その数は激減していったそうです。
■衛生意識の高まりが背景に…売上100倍の会社も
そんな中、なぜ今紙せっけんが注目されているのか…。
秘密を探るためにやってきたのは大阪府摂津市にある『石鹸工房コクーン』。
【コクーン 製造責任者 相田かおりさん】
「例えばこちらの炭のせっけんですと、消臭作用のある炭を配合しているので、料理をした後、魚とか調理した後にも、こちらで洗っていただくと手の匂いが気にならなくなるせっけんになります」
こちらのメーカーでは、6年程前から紙せっけんの生産を開始。
子供用や干支の柄のものまで、7種類販売していますが、数年前と比べると、売り上げが100倍に激増したといいます。
特別に製造過程を見せてもらうと…。
【コクーン 製造責任者 相田かおりさん】
「こちらは植物オイルなんですが、せっけんは油とお水と苛性ソーダでできていまして、こちらがオリーブオイル、ココナッツオイル、パームオイルを混ぜたものになります。これと苛性ソーダ、あとエキスですね、今日は柿渋エキスと茶乾留液が入っています」
作り方は熱を加えず、手作業が基本。
ブレンダーを使って材料を混ぜ合わせ、型に流していきます。
そこから45日間ほどかけて熟成させることで、アルカリ度をゆっくり下げ、肌に優しいマイルドなせっけんができあがるということです。
もともとは手で削っていたそうですが、生産が追い付かずスライサーを導入。
さらに工房を広げる改装工事も行っています。
【コクーン 製造責任者 相田かおりさん】
「手洗い頻度が上がったということで、手荒れをされている方も増えてきたので、優しいせっけんを探されている方が増えたかなという印象です」
紙せっけんを作っている会社が独自に調査を行ったところ、コロナの流行前と比較して8割の人が手を洗う回数が増えたと回答。
さらに手を洗いたいのに、せっけんがなくて困った経験があると答えた人はおよそ7割に上ります(ウエニ貿易調べ 去年10月 Web調査)。
衛生意識の高まりを背景に、その手軽さから子どもだけでなく大人まで広く使われるようになったことがヒットのヒミツのようです。
また、保存袋に入れると持ち運びにも便利で、災害時など緊急の衛生面の確保にも役立つことから、警視庁の災害対策課がホームページで作り方も紹介していました。
■コロナ禍で苦境の老舗も再注目
今年8月にリニューアルオープンした、あぶらとり紙で有名な京都の「よーじや」。
これまで修学旅行生や外国人観光客などが主な客でしたが、コロナの影響で一日の売り上げが8割以上減るなど大きな打撃を受けました。
そんな中、20年前から作っていた紙せっけんに注目し、商品を使用できる体験コーナーを新たに設置。
すると、その効果は想像以上だったようで、体験者のほとんどが紙せっけんを購入したそうです。
【よーじやグループ 國枝昴社長】
「今までよーじやでご購入いただけなかった方がご購入いただけるというのが最大の特徴です。紙せっけんをきっかけに、よーじやがあぶらとり紙だけじゃなく、普段使えるブランドだと認識していただけると非常にありがたいと思っています」
老舗の窮地を救うきっかけにもなった紙せっけん。その手軽さで、今後手放せないものになるかもしれません。
(関西テレビ12月14日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)