大阪府では、泉州地域などの郊外でとれた新鮮な野菜を、大阪市内に運ぶ「やさいバス」が運行を始めました。
こだわりの野菜を購入したい大阪市内の事業者と、泉州の農家を結ぶ取り組み。
安い配送料で、効率よく郊外と市内を結ぶ新たな流通のルートが実現しました。
■「バス」は野菜を回収 購入者は「バス停」で受け取り
午前8時。大阪府泉佐野市の農家に1台のトラックが到着しました。トラックの車体には「やさいバス」の文字が。
出荷準備を終えた白菜やブロッコリーなどの野菜の数々が、次々とトラックの荷台に乗せられていきます。
このトラックがバスと呼ばれる理由は、その仕組みにあります。
泉州地域の生産者は、大阪市内の飲食店などから注文を受けると「バス停」に見立てた近くの農家や直売所などに野菜を持ち込みます。
「バス停」にみたてた農家や直売所の前には、「ここは、おいしい地域食材のバス停です」と書かれたのぼりを立てます。
そこへ「やさいバス」が、路線バスのように巡回して野菜を回収し、購入した人はバスが来る時間に、最寄りの「バス停」に行き、野菜を受け取るシステムです。
送料は1ケース350円で、購入者が負担します。
■大阪市内まで運ぶには宅急便だと約2000円も
農地の面積が狭いことなどから大量生産が難しい大阪の農家。
泉州でとれた野菜は、泉州で消費されるケースが多かったということです。
というのも、大阪市内の飲食店から相談を受けても、宅配便ならおよそ2000円と高い料金がかかるため、取引が成立しないケースも少なくなかったというのです。
【生産者 泉州アグリ 加藤秀樹さん】
「少量の注文をどう届けるか、発注側も農家も課題だった。泉州域の消費だけではなく、大消費地の大阪市内があるから、そこで知ってもらうことで新たな収入源にもなってくるのかなと思います」
■大阪府が「やさいバス」と連携協定
こうした課題を解消するため大阪府は、静岡などで事業を展開していた「やさいバス」株式会社と連携協定を締結。安い配送料で、効率よく郊外と市内を結ぶ新たな流通のルートが実現しました。
【やさいバス株式会社 長谷川晃央・常務取締役】
「お話いただくまでは、大阪に野菜あるのかなと正直思っていましたけど、泉州地域に行くと、こだわった農家多くて、なんとかこういう人たちの作物をほしい人に早く鮮度良く届けたいと思って。難しいと思うのは、大阪は人口多いので渋滞だけですね」
午後2時すぎ、「やさいバス」が到着したのは、近隣住民らに定期的にやさいの販売などを行っている大阪市・中央区の複合施設「β本町橋」。
運ばれてきた野菜は、早速、店先に並べられました。
【定期的に野菜の販売を行う複合施設「β本町橋」・担当者:杉本容子さん】
「(この地域は)最近ファミリー増えていて、新鮮な野菜毎日食べてほしいと思ってお願いしました。(送料は)個人だと負担だが、町の施設が代表して買って近隣のみなさんが買いに来ると。新鮮で安い野菜が手に入るので全然送料負担にならないです」
「みなさん泉州とか南大阪まで、休みの日にわざわざ買いに行っているんですね。それと同じものが近くで手に入るのを期待していただいている」
大阪の地産地消を後押しする「やさいバス」
当面は週3回運行し、今後は、さらなるルートの拡大を目指します。
(カンテレ「報道ランナー」2021年12月6日放送)