14万5340人。
2020年の1年間で、中絶を経験した人の数です。(厚労省調べ)
避妊に失敗し、どうにもできずに中絶の道を選ぶ人もいます。
そんな、意図しない妊娠を防ぐのが「緊急避妊薬」です。
医師の処方箋がなくても薬局で購入できるようにすべきか、厚生労働省で議論が進められています。
■コンドームが敗れたことに気付かず…
大阪市中央区にある「スマルナステーション」
助産師が生理や妊娠、避妊といった性についての相談に乗ります。
助産師の上林比呂己さんが、相談の内容を教えてくれました。
【スマルナステーション 上林比呂己助産師】
「コンドームが破れてしまったということで気付かずにそのまま…。祝日だったのでどこにも行けないということで、結局、オンライン(診療)でアフターピル(緊急避妊)を購入されて」
■日本では医師の診療受けないと手に入らず…
「緊急避妊薬」は、72時間以内に服用すれば、排卵を遅らせたり着床をブロックしたりして高確率で妊娠を防ぐことができます。
緊急避妊薬の薬局での販売を求める団体が去年行った調査によると、緊急避妊薬を手にした1288人のうち、約7割の理由がコンドームの破損や脱落でした。
誰しもが避妊に失敗する可能性がある。
そんな不安を少しでも解消できるのが緊急避妊薬です。
早く服用すればするほど妊娠を阻止できる確率は上がり、WHO、世界保健機関によると、重大な副作用はないとされています。
しかし日本では医師の診療を受け、処方箋がないと緊急避妊薬を手に入れることができません。
スマルナステーションには、病院が空いていない祝日や大型連休の時に緊急避妊薬を求める相談が急増します。
【スマルナステーション 上林比呂己助産師】
「アフターピルに、たどり着かない方もいる。避妊に失敗してしまって、そのままどうにもできなくて中絶の道を選ぶ人だったり、産む選択をせざるを得ない人の対応もしてきました。傷ついている方もいたりしたので、緊急避妊薬が手に取れる場所で売られることは、すごくいいことだと思う」
■4年前の議論では薬局での販売は見送り
そんな現場からの声を受け厚労省は、2017年、薬局での販売について検討しましたが、「転売など悪用の懸念がある」「不確実な避妊法を繰り返す人が増える」などの理由で見送りとなりました。
しかしその後、新型コロナで妊娠不安を抱える女性が増えたこともあり、医師の判断で電話やビデオ通話での診療が可能となり、薬の宅配や処方箋原本なしでの調剤が可能となりました。
少しずつ手に取りやすくなっているものの、オンライン診療を行う医療機関が限られているなど、まだまだ課題はあります。
■厚労省が議論再開…反対論も
今年6月、国が薬局での販売を再検討するよう打ち出したことを受け、厚労省は10月4日、4年ぶりに検討会を開きました。
検討会では、日本産婦人科医会が産婦人科医を対象に行ったアンケート結果が公開され、薬局での販売について、「賛成」と「条件付き賛成」が約55%、「反対」が42%でした。
行なわれた議論では、こんなやりとりも…
【日本産婦人科医会 理事】
「薬局での販売は、確実な避妊法の普及を滞らせる可能性がある」
「性教育の充実がまず必要」
【推進派の産婦人科医】
「性教育の充実は、いつ誰がジャッジメントするのか」
「選択肢を広げるといった視点を持って、女性の健康と権利を尊重する社会に変わってほしい」
■婦人科医師「緊急避妊薬が一般に知られるようになれば」
大阪の婦人科の診療所の医師は、「緊急避妊薬が身近にあることで避妊について考えるようになるのでは」と話します。
【さくま診療所 佐久間航院長】
「緊急避妊薬というのがありますよということが、一般に知れるようになってくれたら、コンビニでコンドームが並んでいるのと同じような感じで意識を持てたら、変わっていくきっかけになるのではないか」
WHOは、「薬局での販売の検討を含め緊急避妊へのアクセスを確実にすること」を提言していて現在、世界90か国以上において薬局で購入することができます。
厚労省は今後、海外の状況について調査を行った上で、来年2月、再度検討会を開くとしています。
(カンテレ「報道ランナー」10月7日放送)