■自分で電波合わせ…ラジオ愛あふれる14歳
家の中でアンテナを伸ばし、四六時中ラジオを聞いている少年がいます。
神戸市に住む中学3年の桜涼(おうすけ)くん(14)です。
母・美保さん
「(コロナ禍の前に旅行に行ったのは)長野のほうとか、伊豆とか」「伊勢が最後かなぁ」
家族と旅行に出かけた時に、車でその土地のラジオを聞くのが好きな桜涼くん。
でも、新型コロナの影響からその機会がなくなってしまいました。
そこで…。
桜涼くん(14)
「家でもラジオを聞けるようにしたかった」
2021年1月ごろに、マイラジオを購入し、今では災害用など用途別に3台のラジオがあります。
ただ・・・ラジオを聞くだけならスマートフォンのアプリでも事足りる気もしますが・・・
母・美保さん
「私はどっちでも一緒かなぁと思うんですけど・・・」
桜涼くん
「ラジオは電波で、リアルタイムで聞いてこそだって言っている人がいて」
母・美保さん
「言っている人がいて共感したん?」
桜涼くん
「うん」
母・美保さん
「なるほど」
人と話すのが苦手な桜涼くんは学校に馴染めず、中学校に通っていません。
その変わり、2年前からある塾に通っています。
■ラジオを愛する14歳 その知識は膨大!
学校に通っていない小中学生が何かに挑戦する機会を提供する「イドミィ」。
通うことで小中学校の出席扱いとなります。
高橋先生
「CBCラジオは?」
桜涼くん
「(周波数)93.7」
高橋先生
「93.7 正解」
桜涼くん
「これも山にいったらよく受信できる」
高橋先生
「こっち拾いやすいもんな愛知の電波」
桜涼くんの挑戦はもちろんラジオ。
全国のラジオ局の周波数をほぼ全て記憶し、小さなコミュニティFMも含めて、日本全国のラジオ局の周波数や送信所の情報などを丁寧にまとめた「全国AMFM周波数パーフェクトブック」を作成しました。
桜涼くん
「これのおかげでタイピングも早くなって」
高橋先生
「それ間違いないよな、だって最初さぁつくったときさぁ、指一本で一緒にやったやん、それがさぁ毎週会うごとに早くなっていったもんな 明らかに、今もうほぼ見ずにいけるんちゃうん?」
桜涼くん
「見ずにいけます」
塾に通い始めた頃は誰とも会話せず、いつも下を向いていたという桜涼くん。
■目標は全国制覇! ラジオの“電波”を探す
ずっと一緒にいる高橋惇(たかはしじゅん)先生(31)は、変化を感じています。
高橋先生
「やっぱり挑戦することで、経験値をゲットして、自信を得たなっていうのは感じます、表情はよくなったな」
桜涼くん
「はい」
高橋先生
「うれしそうやん(笑)」
そんな桜涼くんが続けている挑戦が、身近な場所で聞けるラジオ放送の調査です。
実は、神戸の自宅で思わぬ場所からの放送の受信も確認しました。
受信状況の報告は、ラジオ局にとって、混信状況などを把握するのに役立つ貴重な資料なので、お礼として、このベリカードが届けられます。
全てのラジオ局のベリカードを集めるのが、桜涼くんの目標です。
桜涼くん
「こうやって認められるとすごくうれしいです、表をパソコンで作り続けることが、日課になって、生きがいというかそういうのになってます」
ラジオへの愛が止まらない桜涼くん、ついに…
母・美保さん
「ここまで来たかって」
山での受信調査のため、ネット通販で、自分の身長ほどの高さのアンテナまで買いました。
母:美保さん
「だいぶ自信がなかったところから、家族以外の周りからの反応とかいろいろもらって、自分のやっていることがいいんだ、大丈夫なんだって自信がついてきているので、それを持ったまま、もっとどんどんやりたいこと見つけて、していけたらいいかなと思う」
■淡路島で電波を探す“冒険” 新たな出会いも…
この夏、新たなベリカードを手に入れるべく向かったのは淡路島。
高橋先生
「あれ?」
桜涼くん
「いやぁ もっとあっちの方、多分一番高い山」
高橋先生
「あれか、見えんとこか」
桜涼くん
「雲がかかっている」
淡路島で最も高い山「諭鶴羽山」(ゆづるはさん)の山頂で、広島FMの電波を受信できると踏んでいるのです。
桜涼くん
「はぁ、ふぅ」
高橋先生
「霞かかってるなぁ」
桜涼くん
「神隠しに会うみたい」
険しい道の先に電波があると信じて進みます。
桜涼くん
「はぁはぁはぁ」
桜涼くん
「視界ゼロ」
高橋先生
「霧は電波関係ないっしょ」
桜涼くん
「はい。楽しさは3分の1減りました。景色っていう」
高橋先生
「あぁ、なるほどね(笑)山頂着いたんちゃうこれ? 来た」
桜涼くん
「来た!!」
<ついに山頂に到着です>
標高607メートルの山頂で自慢のアンテナを組み立て調査開始です。
桜涼くん
「ちょっともってるのしんどい」
高橋先生
「俺持っとくよ」
桜涼くん
「ありがとうございます」
桜涼くん
「広島FMは…、えぇっと78.2」
高橋先生
「うわ、入らんか」
桜涼くん
「入んない」
お目当ての広島FMの放送を聞くことができません。
しかし、小回りの聞く、ラジオの付属アンテナで調査を継続すると、、、
桜涼くん
「四国の坂出」
高橋先生
「香川県かな」
ーーQ:どこの局の電波が拾えたの?
桜涼くん
「えぇっと、、、、」
桜涼くんでも名前がすぐにでてこないラジオ局の放送が。。
高橋先生
「エフエムサンやって」
桜涼くん
「エフエムサン?」
高橋先生
「76.1、坂出。四国地方初のコミュニティFM、へぇ」
桜涼くん
「四国全然コミュニティFMないんですよ」
聞こえたのはおよそ90キロ離れた香川県の坂出市(さかいでし)と宇多津町(うたづちょう)をエリアとするコミュニティFMでした。
桜涼くん
「エフエムサン」
高橋先生
「エフエムサンか、せっかくとれたから、たぶん淡路からとったって初めてだと思うから、電話しちゃう?(電波)とったぞって」
桜涼くん
「なんか緊張する、、、」
桜涼くんたちはエフエム・サンに直接電話をして受診したことを報告します。
エフエム・サン チーフディレクター 宮崎敦士さん
「はい、もしもしエフエム・サンです」
桜涼くん
「もしもし」
宮崎さん
「初めまして」
桜涼くん
「は、初めまして(電波が)と、とれました」
宮崎さん
「私共の方は、香川県の坂出市っていうところからなんですけど、そこから淡路島まで飛んでるっていうのはちょっとびっくりしましたね。もし機会があれば香川県の方にも遊びに来ていただいて、スタジオの方にもぜひ遊びに来てください」
桜涼くん
「はい!ぜひ、コロナが落ち着いたら、行かせていただきたいと思います」
宮崎さん
「お会いできるのを楽しみにしております」
人と話すのが苦手。
でも、大好きな受信報告はばっちりできました。
この日は、みっちり2時間、調査を行い、さらに受信報告書をつくりました。
これで新たなベリカードが手に入りそうです。
桜涼くん
「同じようなことをしている同年代の子たちだったり、同年代じゃなくても、大歓迎ですけど、電波とかそういうのが好きな人と知り合いたいなって思ってます」
桜涼くん
「人生の中で、一番いい経験をした夏だと思います」