日本と同じく夏休みの時期を迎えているフランスでは、飲食店などでワクチンの接種証明の提示が義務となり、元の生活を取り戻しつつあります。
現地の人たちの受け止めを取材しました。
【記者リポート】
「パリ市内から国内外に出る 長距離列車の駅には、スーツケースを持ったたくさんの人が行き交っています」
夏休みシーズンまっただ中のフランスでは、大きなカバンを持って、遠出する人たちの姿が。
【家族4人】
「フランスの東の方に行きます。バカンスです」
マスクを除けば、コロナの流行前と変わらないように見えます。
しかし、彼らが鉄道を利用するには、条件があるのです。
【男性】
「ワクチン接種証明をアプリに入れています。4月にワクチンを打ったので、完璧です」
フランスでは、18歳以上の人を対象に高速鉄道を利用する際、「ワクチン接種済み」または、「検査陰性」のデータを記録したQRコードの「健康パス」の提示が義務づけられています。
【女性】
「(健康パスがあれば)電車に乗る際、感染のリスクがあまり無いと分かっているので、安心です」
また、飲食店でもパスの提示が義務づけられています。
警察が抜き打ちチェックをした際に、パスを持っていなければ、約1万7500円の罰金が。
さらに、店側も確認を怠ると、業務停止や懲役刑の恐れがあり、厳しい措置となっています。
このほかにも、映画館やイベントなど、多くの場面で健康パスの提示が義務化されています。
■接種証明の提示義務に反対派デモも
なぜ、厳しい措置は始まったのでしょうか。
【マクロン大統領】(7月12日)
「パンデミックを終わらせるには、皆がワクチン接種を受けなければならない」
マクロン大統領が、ここまで強硬路線に舵を切ったのは、ワクチン接種のペースが落ちていたためです。
しかし、自由と平等を理念に掲げるフランス。
7月、方針が発表された直後の世論調査では、賛成が6割、反対が4割と、国民の意見は割れました。
反発の声も多く、8月9日の義務化施行を前に、フランス全土で約23万7000人が抗議デモに参加しました。
【記者リポート】
「デモに参加する人たちは、我々に選択の自由を、と訴えています」
デモでは、警察官がケガをし逮捕者も。
彼らは「ワクチン接種を受けない自由」を求めたほか、「健康パスの導入は差別を生む」などと訴えています。
【ワクチン未接種の女性】
「1年も経過観察されていないワクチンを強制的に打たせるなんて、あり得ません」
【ワクチン接種済みの男性】
「私は反ワクチンではありませんが、反健康パスです。健康パスによって差別や分断が生じているのは明らかです」
■接種証明の提示義務化で接種率が増加
その一方で、健康パスの提示義務化は、「ワクチンの接種率」においては、絶大な効果をもたらしています。
マクロン大統領の演説の3日後に接種会場を訪れると…
【接種の担当者】
「とても忙しいですよ、1日15時間ぐらい働いています。以前は落ち着いていたけど、マクロン大統領の演説以降、90万人ぐらいの人が一晩で予約を入れたんだ」
ワクチン接種を完了した人の割合が、7月上旬は全国民の40%ほどでしたが、ここ1カ月で56%にまで増加。
接種を受けた人に、理由を聞いてみると…
【女性】
「(接種したのは)健康パスのためです。いつかは受けようとは思ってはいたのですが、映画館にも気軽に行きたいので」
【男性】
「これで電車に乗って旅行に行けるようになります。不安もあります。10年、15年先に体にどういう影響が出るのか」
男性は不安もある中、この措置に背中を押され、接種に踏み切ったそうです。
(カンテレ「報道ランナー」8月16日放送)