サントリーのお茶、『伊右衛門』。
昨年ペットボトル商品のパッケージがリニューアルされたのをご存知でしょうか。
淹れたてのような緑色がきれいに見えることを重視し、2004年の発売以来続けていた「竹筒型」をやめ、ラベルの面積を減らすことで、よりお茶の色が目に入るようにしたそうです。
その後、2020年4~12月の販売実績は、対前年比で3割増。
リニューアル2年目となる今年も順調に推移しているそうです。
商品をヒットに導くパッケージにはどんなヒミツがあるのか、取材しました。
■2秒以内で客に訴える
商品パッケージが人気と噂の、大阪市内にあるコッペパン専門店『コバトパン工場』。
コッペパンと並ぶ看板商品が、お店オリジナルのクッキー缶です。
4年前に販売されると、たちまちSNSで話題となり、今も缶を目当てに店に来る人が絶えないそうです。
【コバトパン工場 谷野恵子代表】
「来客数自体がすごく伸びているのもあって、缶と同時にパンの方もすごく伸びていますね。最初に目に触れるのは外側だと思うので、そういう意味でパッケージはすごく大事です」
売り上げを左右する商品パッケージ。
味の素冷凍食品『ザ☆シリーズ』は、他にはない黒を基調にした独自のデザインで売り場での注目を集めることに成功しています。
アサヒ飲料『カルピスウォーター』夏季限定パッケージは、飲み終わった後に、裏面のイラストが重なって一枚の絵が完成するというもの。
SNSで大きな反響を呼びました。
パッケージデザインの仕掛けづくりには、どんなヒミツが隠れているんでしょうか。
話を聞いたのは商品パッケージの企画・デザインなどを手掛ける松浦陽司さんです。
【パッケージ松浦 松浦陽司社長】
「お客さんが商品を見ている時間は2秒以内だとよく言われています。この2秒間であなたのための商品ですよというのをパッケージがお客さんに訴えかけてあげないとお客さんには『ない』のと同じなんですよ」
徳島市を拠点に各地からパッケージデザインの依頼を受け、売上アップにつなげてきた松浦さん。
たとえば30年間鳴かず飛ばずだったという焼き肉のタレ。
焼肉のイメージとかけ離れたラベルの色味とシンプルなデザインをリニューアルしたところ…
【パッケージ松浦 松浦社長】
「『今夜は焼肉じゃ』ってしたんですね。(依頼者の)お孫さんのセリフをいただいて。食欲減退色の青一色もやめました。こんな風に出したら売り上げが8倍になりました。貼ってるシールを変えただけなんですけど」
パッケージを選ぶ上で重要視していることはというと…
【松浦社長】
「重要な要素は色・形・ネーミングという順番に、人は商品・パッケージを覚えていくと言われています」
また、人は風景よりもキャラクターなどの目線に目を奪われやすいそうで、様々な要素を取り入れながら、人目に付きやすく、商品の魅力が伝わるようデザインされているそうです。
■ヒトの感覚からAI分析による判断へ
調べてみると、大手メーカーが最近リニューアルで成功していました。
発売から1年後の去年にリニューアルしたカルビーの『クランチポテト』。
改良した中身の魅力がより伝わるようロゴから背景、写真などを刷新したところ、売上が約3割もアップ。
リニューアルには、ある試みもあったそうで…
【カルビー マーケティング本部 福原椋太さん】
「中身の魅力をより伝えられて、かつお客様に好まれるパッケージデザインの改良の方向性を検討していくアプローチの一つとしてAI分析を活用しました」
売り上げアップに貢献したAI分析とは一体どんなものなのか。
このシステムを開発した会社に聞いてみると…。
【プラグ 小川亮社長】
「このパッケージデザインAIですけど、793万人の消費者調査の結果を学習しています。パッケージのデザインが消費者から見た時に、どれくらいの評価を得られるのかを推測するシステムです」
消費者が好むデザインかどうかや、かわいい・爽やかなどといったイメージを持たれるかなどを予測するといいます。
【薄田ジュリアキャスター】
「感覚だったものがキレイに可視化されますね」
【小川社長】
「おっしゃるとおりで、今後はトレンドも見ることができるようになるので、より魅力的な新しいデザインがどんどん世の中に出ていくことになるんじゃないかと」
■人と人とが喜び合える“つなぎ役”
商品パッケージのさらなるヒミツを求め、やってきたのは人気コーヒー飲料の限定パッケージのお披露目イベントです。
【森永乳業 西日本営業統括部 石川正部長】
「コロナ禍のストレスを様々な形で癒していきたいという思いの中で動物のふれあいで人々の心を癒すことがあるので動物園と水族館とのコラボを開始しました」
天王寺動物園のホッキョクグマの赤ちゃん「ホウちゃん」などが採用されたコラボパッケージ。
売上の一部は集客の落ち込んでいる動物園などにエサ代として寄付されるため、かわいい動物のパッケージに癒されながら支援ができるという仕組みです。
今年春の姫路セントラルパークなどとのコラボでは、去年の出荷本数を上回る2000万本を販売しました(4~5月 出荷本数前年比)。
そして、パッケージを生かして支援する会社は東大阪にもありました。
創業73年の「大阪製罐」です。
【大阪製罐 清水雄一郎社長】
「こちらに並んでいるのが僕らの会社で作っているお菓子の缶たちになります」
“心を動かす缶”をコンセプトに、宝石が埋め込まれたような加工を施したものや、絵本作家が手掛けたイラストなど、心躍る可愛さのデザインのお菓子缶。
これらはすべて個人で経営する洋菓子店のために作られています。
【清水社長】
「街のケーキ屋さん、お菓子屋さんの力強い味方になれるようにという思いを込めて『お菓子のミカタ』という名前をつけてやっています」
実は、お菓子缶の注文は普段3000個から受けているそうですが、小さなお店ほど、在庫を抱えるリスクを恐れて断念するケースが少なくなかったそう。
そこで、もっと気軽に使ってもらえるよう50個から注文できる自社ブランドを7年前に立ち上げました。
【清水社長】
「調子が良くなくて移転・縮小しようとしていたけどすごく缶が人気で(お菓子が)売れるようになって移転せずに済みましたとか、そういう話はいただいたりします」
今は全国の洋菓子店約1500店舗に提供していて、売上は7年間で100倍以上になったそうです。
社長にとって、商品パッケージとは?
【清水社長】
「もちろんお菓子の価値を上げたり、お店と人がつながるきっかけになったりとか。何よりお菓子を食べる瞬間がすごく豊かなものになって、人と人が喜び合えるようなつなぎ役みたいなものかなと思っています」
(カンテレ7月20日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)