不用品を再利用する「リサイクル」という言葉はよく聞かれますが、
今注目されているのは「アップサイクル」という言葉です。
これは付加価値を付けて、新たな製品にアップグレードさせるリサイクルのことです。
大量廃棄が問題となっている服の「アップサイクル」の取り組みを取材しました。
廃棄される衣服の山…、天井近くまで積み上げられています。
環境省の調査によると、2020年だけで51万トンの衣服(家庭や事業所から)がごみとして焼却や埋め立て処分されました。
1日当たりに換算すると、大型トラックおよそ140台分(大型トラック10t)です。
■廃棄される衣服・繊維に付加価値を付けて別の製品に。それが「アップサイクル」
こうした服の廃棄物が、ブックカバーやバッグや手帳に生まれ変わります。
これらの製品は、不用品の再利用としてのリサイクルではありません。
付加価値をつけて別の製品に生まれ変わらせる「アップサイクル」の技術が使われています。
この技術を考えたのは京都市のベンチャー企業「カラーループ」の代表で、生地デザイナーの内丸もと子さん。
――Q:「アップサイクル」考案のキッカケは?
【カラーループ代表・内丸もと子さん】
「これまでファッションやインテリアの素材づくりを行ってきました。ある時、繊維リサイクルの現状を知ったのですが、私が今まで作っていたものは、もしかしたらごみを作っていたんじゃないか…と思うくらい再利用されていない事にショックを受けまして。リサイクルできるシステムを作りたいと思いました」
複数の素材を混ぜて作ることが多い衣服の繊維は、アルミ缶やペットボトルのように素材別に回収することが困難で、リサイクル率は伸び悩んでいます。
さらに、繊維は混ざるとほこりくずのような色になるため、リサイクルされたとしても、災害用毛布や軍手など、地味で目立たないものがほとんどでした。
【カラーループ・内丸もと子さん】
「リサイクルされてるもの見せて頂きました。それを見た時に(色合いが地味で)コレでは売れないな…と。色を使って魅力的な商品を作るしかないなと。それにはリサイクルではなく付加価値を付けてアップサイクルさせて、素材を魅力的にするしかないと感じました」
そこで内丸さんは、京都工芸繊維大学の大学院に入学し、繊維を色で分けるシステムができないか研究することに。
素材別ではなく色別に繊維を集め、どのように混ぜ合わせたらリサイクルした際に魅力的な色が保てるか、試行錯誤を重ね5年がかりで技術を確立させました。
そして、色分けした繊維に樹脂などを混ぜることで、皮のような素材を作り、ペンケースや鞄などを作ることに成功しました。
■アップサイクルの技術が新たなブランド展開にも採用。累計2万点を超える売り上げに…
内丸さんの技術は、人気ブランドにも取り入れられています。
アーバンリサーチでは、2018年から、「コンポスト」というブランドを展開しています。
汚れや傷がついて売れなくなった衣服から作った素材でバッグやスマホケースを販売しています。
【客】
「服やとは思わなかったです、びっくりです」
「めっちゃオシャレやと思いました。可愛いなと思いました」
「リサイクル、自分ではなかなかできてなくて、こういう風にできたらすごいいいなって思います」
ただリサイクルした商品というのではなく、デザイン性を追及しています。
【アーバンリサーチ・萩原直樹執行役員】
「(持続可能な社会も目指す)SDGsの取り組み自体が、通常の商品よりもコストがかかるのが一般的。リサイクルするにしても同じで、ビジネスとして乗せるための課題は、売れる商品を作るというところ」
アーバンリサーチでは、これまでに2万点の商品を販売し売れ行きは好調です。アップサイクルに使う衣服が無くなってきていることから、この4月からは販売した製品の回収も始めました。
内丸さんは今、京都工芸繊維大学のチームとともに、色分けした繊維をインテリア素材に活用するための研究を行っています。
この日、持ち込んだのは、青いフェルトです。
固く加工することで、イスや机の素材にしたいと考えています。
【カラーループ・内丸もと子さん】
「リサイクル品だから買ってほしいとか、買わないといけないではないんです。これ魅力的だな…と思って頂いて、よく見たらリサイクル品だったんだ!という感じでお使い頂けるようになれば」
「その結果、自分たちが廃棄した服もボロボロになってもまだ使う道がある。素材として繊維を考えて頂けるようになったらいいなと思います」
ゴミとして捨てられる服が、生活を彩る素敵な製品に。アップサイクルの取り組みは進化し続けています。
(カンテレ「報道ランナー」 7月13日放送)