「さみしい」「居場所がない」
インターネット上にあふれる少女たちからのSOS。
こうした投稿をきっかけに、誘拐事件などに巻き込まれるケースが相次いでいます。
取材を進めると、外出自粛などの影響で、少女たちが孤独を深めている実態が明らかになりました。
ツイッターなどのSNSを通じて、少女が誘拐される事件が相次いでいます。
2021年5月、兵庫県丹波市の林道で、13歳の女子中学生の遺体が見つかった事件。
自殺を手助けした疑いで逮捕された男(23)は、SNSを通じて「自殺しよう」などと女子中学生を誘い出したとみられています。
警察庁が被害を把握しているだけでも、2020年、SNSで知り合った人物に無理やり連れ去られたり、自宅に連れ込まれたりする「略取誘拐」の被害に遭った18歳未満の子供は75人。
前の年から6割も増えています。
今、少女たちに何が起きているのでしょうか?
生きづらさを抱えた10代から20代の女性を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」。
LINEやメール、電話などで全国から相談を受け付けています。
【BONDプロジェクト 相談スタッフ】
「高校生からの相談なんですけど、家族関係がよくなくて、今は離れて生活はできているんですけど、寂しさが強かったり、家族関係に悩むところがあって、ネットの(男の)人と会う約束をしちゃうという内容です」
2020年、BONDが相談に乗ったのは延べ3万件以上。
2019年から約3000件増えました。
新型コロナウイルスの影響で、外出自粛が長引いていることが背景にあります。
【BONDプロジェクト 橘ジュン代表】
「もともと、家族による悩みを抱えている子たちからの相談が多かった。これまでは、家族との時間を過ごさないように、アルバイトしてたり、学校に行ってたりしていたのが出来なくなったことで、『家にいなさい』となって、自分のことを考えてくれる場所じゃない家族の関係だったら、辛くなりますよね。『電話できる?』って聞いても、『すぐそばに家族がいるから無理』と言われたこともあります。声を上げづらかったんじゃないかな」
■2週間監禁状態にされたことも…SNSで知り合った男性の家や職場に泊まる日々を繰り返す少女
BONDは、少女たちを中長期的に保護する施設も運営しています。
関西に住んでいた、ななみさん(仮名・10代)。
これまで援助交際や家出を繰り返し、2020年の秋ごろから保護施設で暮らしています。
小学生の頃から兄の暴力を受けていて、母親は家にいないことが多く、誰にも相談できませんでした。
【ななみさん(仮名・10代)】
「(家では)私がいたら殴られるとか、蹴とばされるとか、『存在してちゃだめなのかなぁ』って思っていて。『なんで生きてるんだろう』って思ってました」
――Q:何歳くらいの時からSNSで知り合った人と会っていた?
「中1です」
――Q:最初会うときは怖くなかった?
「怖くなかった。 嫌なことされるだろうなぁと思いながら、でも(家を)出るしかないなぁ…みたいな。家にいるよりましかなぁって」
SNSで知り合った男性の家や職場に泊まる日々。
悩みの投稿を見た人から「一緒に自殺をしよう」というメッセージがきたことも。
【ななみさん(仮名・10代)】
――Q:命が危険だと思ったことは?
「監禁状態にされたこと。2週間くらい」
――Q:危害を加えられたりは?
「首を絞められた」
危険と知りながらも、やめられなかった理由があります。
【ななみさん(仮名・10代)】
「家を借りてくれるっていう人がいて…借りてくれなかったんですけど、その時は信頼しちゃいました。優しくされたら嬉しいです。必要とされてうれしいと思うし、求めてくれる人がいるんだなぁって思います。体でも私を必要としてくれる人がいるんだなって」
SNSで心の空白を埋めたい。
見知らぬ人と出会うこともいとわない、少女たちの孤独。
街で聞いてみると…
【10代の女性】
「同じ中学だった友達が、お母さん厳しくて、人のぬくもりほしいみたいな感じでパパ活(援助交際)している。お金も欲しさもあるけど、家にいたくないって」
【20代の女性】
「出会い系は普通みたいな。前までやったら知らん人とそういうの(出会い系サイト)で会うの怖いとかあったけど、当たり前にみんなしてるんで」
■「グレーじゃないですかね」 SNSで知り合った若い女性とデートを繰り返す40代の男性
少女たちと会うのは、どんな人物なのでしょうか。
取材班は、SNSで募集した若い女性とデートをしているという40代の男性に話を聞くことができました。
【SNSで女性との出会いを繰り返す男性(40代)】
「日常生活がマンネリ化しない、いろんな形での刺激を受けることがメリットの1つかなと考えています。居酒屋に飲みに行く・遊びに行く活動と、場合によっては込み入った形でホテルに一緒に行くみたいな両方の活動」
いつも募集するのは、18歳から20代の女性。
1度のデートで約1万5千円から3万円を手渡していると話します。
呼びかけに応じるのはどのような女性かを聞くと…
【SNSで女性との出会いを繰り返す男性(40代)】
「一つは金銭的に事情があって苦しい、コロナの中でなかなかバイトや仕事のシフトを増やせない状況で、その時間を有効活用したいという思いでされている方、もう一つはお金に困っているわけではないけど、ブランドのバックを買いたい、整形したいなど高い目標に到達したいという思いでされている方の2パターンあるのかなと思います」
男性によると、中には、経済的な事情ではないケースもあるといいます。
【SNSで女性との出会いを繰り返す男性(40代)】
「家にいづらいとか、一人暮らしで寂しいとか、そういう方はいらっしゃいます。本当に普通の方で、両親と喧嘩したから家に帰りづらい、という方もいます」
さらに、18歳未満の少女から連絡が来ることも…
【SNSで女性との出会いを繰り返す男性(40代)】
「16歳から連絡もらうことはあります、時間を持て余しているから相手してください、と。その時点で15歳、16歳となればお断りしています。
――Q:罪悪感はないのか?
「グレーじゃないですかね、100%正しくて世の中に誇れますかって言われると、たぶんそうじゃない」
■安心してつながることができる場所を…生きづらさを抱えた少女を救うには
若い女性の支援をしている「BONDプロジェクト」。
「消えたい」「家出したい」などという投稿を探し、危険なつながりをもってしまう前に相談できる窓口をSNSで知らせています。
【相談スタッフ】
「危険度がより高くて、今にも極端な選択をしてしまいそう、他の人とつながって何か一緒に死にましょうとかって話になってしまいそうだったら、(SNSの投稿に対して)『bondプロジェクトです。よければお話聞かせてくれませんか』という旨のリプライを送ったりしています」
2020年は、この活動から1500人もの少女たちがLINE相談につながりました。
自ら相談したことで支援を受けることが出来たななみさん(仮名・10代)。
スタッフと一緒に暮らす中で、過去の自分を振り返るようになりました。
【ななみさん(仮名・10代)】
「シェルターに来てご飯作ってもらったり、帰って待ってくれている人がいたりして、(過去の生活は)普通じゃなかったのかなぁって思います」
――Q:これまで男性ってどんな存在だった?
「お金…か泊めてくれる人」
――Q:そうじゃない人もいることはどうして気づいた?
「ここ(シェルター)に住んでいて、『ああ、いいんだなぁ』って思いました。普通に生活して、『生きていていいんだなぁ』って思いました」
ななみさんは今、過去のトラウマを克服するために精神科の治療を受けています。
今後は、自立に向けてアルバイトを始める予定です。
【BONDプロジェクト 橘ジュン代表】
「自分で選んで行動しちゃったんだよねって思う人もいるでしょう。でも、そうせざるを得ないような状況だったんだよっていうのは、その子が話せる人にしか話せないことだから分かってもらいづらい。ちゃんと話を聞いてくれる場所はあるってことを分かってほしいなって思います」
SNSは、身近な人に悩みや本音を言えない人たちのよりどころとなっている一方で、悪用され犯罪に巻き込まれる危険もあります。
危ないつながりを持って2人きりで会ってしまう前に、安全な相談先を知ってつながってほしい。
そうすることで、何か糸口が見えるかもしれません。
生きづらさを抱えた少女たちは、安心してつながれる居場所を求めています。
(関西テレビ放送記者 竹中美穂)
<相談窓口>
◇BONDプロジェクト
LINE ID:@bondproject (月・水・木・金・土 午後2時~午後6時・午後6時半~午後10時半)
メール:hear@bondproject.jp (24時間受付)
◇子どもセンター ぬっく(大阪)
メールアドレス:kodomo@nukku.info
居場所のない子供110番:0120-528-184(月~金 午前10時半~午後5時半)