「まさに未来の耳」画期的な“第三の音”…軟骨伝導とは? いま、販促ロボットなのに“予期せぬ”大人気の「呼び込み君」の“音の秘密”とは いろんな音を考える 2023年03月03日
3月3日はひな祭りですが、実は「耳の日」…スーパーマーケットでよく聞く“あの曲”や注目の「第3の聴覚」、そしてビールが美味しくなる音など、いろんな「音」について取材しました。
■静かに浸透する「呼び込み君」の広がり
スーパーマーケットを訪れると、多くの店で流れているメロディ、それが「呼び込み君」。お店で商品に目を止めてもらうための販売促進ロボットで、なんと7万台が活躍しています。
【買い物客は】
「スーパー来ると必ず流れてますよね。ちょっと耳に入るので、気になるかな」
「ちょっと歌える、口ずさめる」
この耳に残る曲がいま、スーパーを訪れる“お客さん以外”にも大人気。関連グッズが次々に発売され、運を呼び込むクッキーやいつでも持ち歩けるミニサイズの「呼び込み君」など、メーカーの在庫がなくなるまさかの事態にも。
SNSでも可愛いと人気で、クリスマスのプレゼントに「呼び込み君」(実機)が欲しいという子どもまで。
さらには「呼び込み君」の替え歌がTIKTOKでバスり、2022年時点で440万回超の再生数をマークしました。この謎の替え歌がキッカケで、「呼び込み君」にハマったという人も多いんだそうです。
しかしなぜ、このメロディはここまで広まったのでしょうか?音のプロに調べてもらうことにしました。
調査をお願いしたのは、音響心理学が専門の津崎教授。分析の結果は…
【京都市立芸術大学 津崎実教授】
「こういう波形はシンプルですけど、自然な世界にはあんまりないということで、自然にないからこそ『あれなんだろう?』ってなる」
津崎先生によると、「呼び込み君」のメロディは、スーパーなど雑踏の中でも認知されやすい音になっているんだそうです。さらに…
【京都市立芸術大学 津崎実教授】
「楽譜情報なんですけれども、こうやって見ていくとですね、実はこれペンタトニックって言われている音階の、五つの音しか使わないっていうそういう音階で作られている。例えば素朴なわらべ歌とか民謡とかにわりとよく使われていて、何回も聞いていても、そんなに耳障りでなく聞いてられる」
「呼び込み君」の製造元の群馬電機に聞くと「そこまで計算して作っていたわけではなかったので、びっくりしてます」とのことでした。
続いては…世界初の技術「第3の聴覚」。
■耳をふさがないのに聞こえる新技術「軟骨電動」とは
開発したのは、奈良県立医科大の細井裕司学長です。長年、耳鼻科医として研究してきた“耳のプロ”がたどり着いたのが「軟骨伝導」でした。
【奈良県立医科大学 細井裕司学長】
「まさに未来の耳だと思います」
音を聞く方法は、これまで、2つしかありませんでした。1つ目は、空気の波が耳の奥を震わせる「気伝導」。もう一つは、頭蓋骨を振動させて耳の奥を直接震わせる「骨伝導」です。細井先生が新たに発見した「軟骨伝導」は耳の入り口にある軟骨を振動させて耳の中に音源自体を作る。分かりやすくいうと、耳がスピーカーの代わりになるようなイメージなんです。
【奈良県立医科大学 細井裕司学長】
「自分の耳の中で音を作ってるんです、つまり、隣の人は聞こえない。本人しか聞こえない」
軟骨伝導の商品としては世界初となるこのヘッドホンはイヤホンのように耳をふさがず、骨伝導のように骨を強く圧迫することもありません。
【吉原功兼アナウンサー】
「めちゃめちゃよく聞こえる。耳ふさいでないのに、耳をふさいでる感じで聞こえる。(イヤホンをしていても)ディレクターの声もめちゃめちゃ聞こえるけど、イヤホンからの音もめちゃめちゃ聞こえる。これが未来の感覚ですよ」
この軟骨伝導は、世界から注目されていて補聴器や、耳にかけるだけで音が聞こえるスマートグラス、などへの応用が期待されています。
【奈良県立医科大学 細井裕司学長】
「ずっと多くのいろんな製品にこう組み込まれるようになってくる。この未来の耳でいろんな企業がいろんなものに挑戦して欲しいと思います」
■飲みながら聞くとビールの味がおいしくなる音
最後はこちら…
“ある音”を聞けば、ビールがおいしくなる。そんな夢のテクノロジーが誕生しました。ビールで晩酌中の方は、ぜひ一緒に飲みながら体験を。
東京大学大学院の鳴海拓志准教授と博報堂で共同開発した「音」。聴覚と味覚が互いに影響しあう「クロスモーダル(五感の相互作用)」という現象を応用しているそうなのですが、要は、ビールの味を変化させたり、強調したりする音です。
【博報堂Humanxプロジェクトリーダー金じょんひょんさん】
「クリーミーだったりソーダ感だったり、のどごし感っていうところが、飲みながら聞くとそれぞれの感覚が増幅するようような音楽になってます」
【東京大学大学院の鳴海拓志准教授】
「250Hzぐらいの音と苦味と言うのが結びついていて、もっと高周波の音が酸味と結び付いてるみたいな。音と味の組み合わせを与えると、まあお互いを増幅しあって特徴が高めあうと言うことがわかっている」
ということで、早速私も飲み比べ!まずは普通にビールを飲みます。
【吉原功兼アナウンサー】
「く~!」
続いては、この「音」を聞きながら飲んでみると…
【吉原功兼アナウンサー】
「なんだろう?不思議だなあ、甘みも出てきた。角が取れてまろやか」
(ちなみに、どんな味の変化になるかは教えてもらわずに飲みました)
これはクリーミーさを増幅させる「♪CREAMY CREAMY」という音でした。低音と滑らかな音の変化が、そう感じさせるそうです。
皆さんも周囲の音に意識して生活すると、新たな発見や気づきが得られるかもしれません。
(関西テレビ「報道ランナー」3月2日放送)