新実キャスターが、ニュースの現場やトップランナーに迫る「新実取材」。
オリンピック開催について賛否両論が渦巻く中で、代表選手たちの思いとは?
前回のメダリストと、6度目の出場となるレジェンドのホンネに迫りました。
東京オリンピック開幕まで、あと45日。
【菅首相】
「まさに平和の祭典、安心安全の対策をしっかり講じた上でやっていきたい」
【尾身会長】
「今の状況で(五輪を)やるというのは、普通はないわけですよね」
今なお、緊急事態宣言が発令される中、開催を不安視する声が多くあります。
そんな中で、代表選手たちはいま、何を思うのか?
【飛込み・寺内健選手】
「オリンピックが開かれること自体がいいのか悪いのか、それは本当に今も分からなくてですね」
夏のオリンピックで日本人最多タイ記録となる6度目の出場を決めた飛込みの寺内健選手。
【カヌー・羽根田卓也選手】
「本来のオリンピックの素晴らしさは僕は変わらないと信じているので」
2016年のリオオリンピックで、カヌー競技でアジア人初のメダルを獲得した羽根田卓也選手。
オリンピックに人生をかけてきた2人が、1時間にわたって語ったホンネとは?
【新実キャスター】
「関西テレビの新実と申します。本日宜しくお願いします。お二人が直接会ったのは、最後いつになるんですか?」
【羽根田卓也選手】
「いつですかね」
【寺内健選手】
「去年の新年会の時かな」
国内でまだ感染者が出ていなかった2020年1月10日。
2人は同じ所属先の新春祝賀会に出席していました。
(祝賀会でのスピーチ)
【寺内健選手】
「今年の夏はメダルしか考えていません」
【羽根田卓也選手】
「自分にとっても皆さんにとっても最高のオリンピックにしたい」
【新実キャスター】
「2020年1月はどんな心境でしたか?」
【羽根田卓也選手】
「2020年1月はコロナのコがやっと出始めたくらい。自分たちオリンピック選手は、2020年の幕開けだったので勝負の年と思ってみんな同じ気持ちで1月を迎えた」
その後、新型コロナウイルスは世界的に広がり、オリンピックは1年延期に。
羽根田選手は、自粛期間のトレーニングの様子をSNSで発信。
毎年行ってきた海外合宿も制限され、この1年間での実戦はわずか1大会です。
寺内選手は、2019年9月を最後に公式戦から遠ざかっています。
さらに去年7月には、自身が新型コロナウイルスに感染。
本格的に練習を再開したのは、去年の末になってからでした。
それぞれの1年を経て、目前に迫った東京オリンピック。
しかし、世論は真っ二つに割れています。
【新実キャスター】
「すべての方が万々歳で皆さんの事を応援しようと無くなっているのは肌でお感じだと思いますけど、そこはどう整理つけているんですか?」
【寺内健選手】
「自分がコロナ陽性者として罹患したというところも含めて、人命が優先だということは確かでして、そこをないがしろにして開かれるオリンピックというのはいかがなものかという気持ちで進んできて、開かれること自体がいいのか悪いのか、それは本当に今も分からなくてですね。無ければそれは仕方ないよねという自分の中で諦めることを念頭に置いて過ごしていました」
中止の可能性を念頭に置く中でモチベーションを維持することはできたのでしょうか。
【寺内健選手】
「中止を念頭にというのはモチベーションが上がる下がるという話ではなくて、どこか落としどころっていうものをちゃんと覚悟をもった上で日々取り組む。その中でオリンピック開催されるかされないかは正直我々の力でどうすることも出来ないものですので、あるという前提でトレーニングが全力で向き合ってきました」
【新実キャスター】
「モチベーションにかげりが出る瞬間は、羽根田選手はこの1年1度もなかったと断言できますか?
【羽根田卓也選手】
「そうですね」
【新実キャスター】
「すごい、それはなぜですか?」
【羽根田卓也選手】
「なぜってそれは我々の仕事だからですよ。全力で夢に向かって目標に向かってトレーニングするのが我々の当たり前の行動で、それが東京オリンピックという一生に一度のオリンピック、本当にめぐりあわせの特別なオリンピックが目の前にあるのに自分はやる気を失うとかモチベーションを理由に立ち止まってしまうのはすごく自分に後悔が残る気持ちの悪い行動になってしまうと常に感じているので」
【新実キャスター】
「お二人にとっては当たり前のことだったと思いますけど、やはり次元の違うところにいらっしゃると感じましたけど」
【羽根田卓也選手】
「スポーツ選手が後ろ向きになったら、じゃあこの地球上にそれ以上に誰が前向きになるんだと僕は思っているので。それくらいスポーツ選手に求められることってポジティブさ、前向き、そういう諦めない姿勢以外なにものでもないと思っているので」
今懸念されているのがオリンピック開催で感染が拡大するリスクです。
そこで注目されるのがバブル方式。
2021年5月に行われたボートの国際大会では選手の移動を試合会場と宿泊施設に限定し、外部との接触を断つこの方式が採用されました。
寺内選手も、1ヵ月前の飛込みワールドカップの会場でバブル方式を経験しています。
【新実キャスター】
「実際バブル形式というのはどうでしたか?」
【寺内健選手】
「ホテル以外は外に出られない。選手も一歩もほぼ出られない状況でして食事も配られたおのを部屋で食べる、その中でPCR検査を毎日受けました」
【新実キャスター】
「一部、飛込み台の上で密になっているという指摘もありましたが?」
【寺内健選手】
「あの日以降はかなり距離を置くように、行き届いていなかったというよりかは選手たちが我先に練習をと気持ちが先走ったのがそういう形になってしまったと思うんですが、すごく選手として感じたのはスタッフの方がもちろん仕事でありながら大会をどういうふうに作っていくかをすごく考えられた中、我々選手が軽率な行動をとってしまっては作っていただいたものも台無しになってしまうので、選手も襟を正して感染状況拡大をしないようにバブルを守れるようにみんなとっていたと思います」
そして気になるのは競技以外の時間にも感染リスクを避けることができるのかということ。
寺内選手は自身の豊富な経験をもとに、こう話しました。
【寺内健選手】
「選手村って1回出るとすごく面倒くさいので、基本的にみんな出たくないんですね。入るのに何回もセキュリティを受けないといけないので。実は選手村ってお祭り騒ぎってわけじゃなくてみんなワイワイしているわけではない。もともと平時の時も、例えば今海外から来た選手が選手村飛び出してどっかで飲み歩いたりするんじゃないかということがありますが、ものすごく今回は厳しいですし、なかなかそういう環境にはなかったはずなので、オリンピック経験しているものとしては大丈夫なんじゃないかと考えていますね」
6月1日には、海外から初めてオリンピックに出場する選手団が来日。
全世界から集まる1万5000人以上の選手たちが、その行動を問われることになるこの大会に、2人はどんな意義を見出しているのでしょうか。
【羽根田卓也選手】
「僕はオリンピックは夢の連鎖だと思っていて、我々がオリンピックに出場して、活躍することで、次の世代の子供たちがオリンピックを見ることで、もしかしたら我々と同じオリンピックを目指すスポーツに憧れる子供もきっと出てくると思いますし/オリンピックのネガティブな面が見えたとしても、本来のオリンピックの素晴らしさは僕は変わらないと信じているので」
【新実キャスター】
「ポジティブなものが伝わると確信はもっていらっしゃいますか?」
【羽根田卓也選手】
「なるかならないかは我々次第だと思っています」
【寺内健選手】
「海外の選手からこの1年間連絡がいっぱいきて、最後に色んな選手が文の中に付け加えているのが、もし開催されたら正々堂々と戦って我々でコロナを国ごとではなく、世界で乗り越えられるように発信していこうとメールをいただくんですね。言葉の通り、しっかり戦って出るからにはもちろんメダルを目指して頑張ります」
【新実キャスター】
「本当にこのタイミングでお話を聞けて良かったと思います。アスリートの皆さんの思いを受け止めながら、しっかりと伝えていきたいと思います。ケガのないようにラストスパート頑張って下さい」
【羽根田卓也選手】
「こんなにオリンピックの話したの初めてです」
【寺内健選手】
「ほんまに今出しにくいご時世やから。ハネタクまたねー」
【羽根田卓也選手】
「はーい、ありがとうございました」