9人に1人。
女性が、一生のうちに乳がんになる割合です。
男性にとっても、家族や友人など、身近な人が乳がんになる可能性があり、決して遠い出来事ではありません。
その乳がんについて、いま心配されている事が…。
【乳腺クリニックの医師】
「2~3割は減っていると思います」
新型コロナの感染拡大による「検診控え」です。
今こそ知っておきたい「乳がん」のこと。
新実彰平キャスターが取材しました。
尼崎市に住む、渡辺愛さん。
3年前、左の胸にがんが見つかりました。
【関西テレビ 新実彰平キャスター】
「どういう形で乳がんだとわかったんですか?」
【渡辺愛さん】
「痛かったんですよ。生理前とかホルモンの上がり下がりで胸が張ったりして、そういう時は痛くなるよと言われていたのですけど、だから、この痛いのは乳腺症と思い込みたいのもあって。自分としては2年くらい経ったと思っていたのが、3年くらい経っていて。マンモグラフィとエコーをしてもらったら、2cmの大きさの乳がんがあった」
脇のリンパ節の一部に転移があり、がんの進行度を表すステージは「2・B」と診断されました。
【渡辺愛さん】
「自分が当事者になるのはすごく怖かった。色々な検査を繰り返したりとか、もっと怖い状態やったらどうしようって、家に帰って考えるのが一番怖かった」
■新型コロナで下がる「検診の受診率」
がんは「検診」がきっかけで見つかることが多い病気です。
しかし今、新型コロナウイルスの影響で、検診の受診率が大きく下がっています。
日本対がん協会によると、去年「がん検診(胃・大腸・肺・乳・子宮頸)」を受けた人の数は、おととしから約3割減ったということです。
協会は「少なく見積もっても、1万人以上のがんが未発見となっていることが懸念される」としています。
乳腺クリニックの医師に話を聞きました。
【関西テレビ 新実彰平キャスター】
「コロナで検診を受ける方が減った実感がありますか?」
【たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長】
「あります。明らかに減っていますね。2割から3割は減っていると思います。年1回、毎年何月ごろには来ているという方が、半年とか1年パスして次の年に来るとか。そういうことがありますね」
【関西テレビ 新実彰平キャスター】
「検診を避けてしまうことの影響は?」
【孝橋慶一 院長】
「大きいですね。乳がんは初期で見つかれば、治る確率が極めて高いんですよ。乳がんに限って言えば、ステージ1で見つかれば10年生存率が95%以上。ステージ0だと98%以上です」
孝橋医師に、検査機器「マンモグラフィ」を見せてもらいました。
【孝橋慶一院長】
「こっちにも倒れるし、台が下がっていきます」
【関西テレビ 新実彰平キャスター】
「こうやって検査するんですね。おーなるほど!これが痛いと聞くんですが…?」
【孝橋慶一院長】
「患者の痛みの度合いと相談して抑えていますので、限界かなとなったらストップしています」
孝橋医師によると、乳がんの検査は胃や大腸の検査と比べると患者の負担が少なく、超音波検査と組み合わせることで、自覚症状のない初期の段階でがんを見つけることができるそうです。
【孝橋慶一院長】
「乳がんに関しては、年1回検診に来ていたら、十分早期で見つかります。多くの医療機関・検診機関は、コロナ対策をしっかりやっています。怖がらずに検診に来てほしいです」
3年前に「乳がん・ステージ2」の診断を受けた渡辺さん。
手術で、左胸をすべて摘出しました。
【関西テレビ 新実彰平キャスター】
「乳がんといっても、ひとくくりではないんですね」
【渡辺愛さん】
「そうなんですよ。私も病気になって初めて知りました」
がん組織の遺伝子検査で、再発のリスクが低いと診断され、死へのおそれは薄れていったそうです。
【関西テレビ 新実彰平キャスター】
「何もわからない状態の中で、何に一番困りましたか?」
【渡辺愛さん】
「治療や手術の間だけ、家のことや子どものことが出来ないだけなのかなとか。この先ずっと時間がかかってしまうのかなとか。全然分からなかった。病気のことはお医者さんに相談できても、自分自身がこの後どうやって生きていったら良いのかはお医者さんにも分からないし、誰に聞けば分かるんやろうと。本当に先が見えない状態でした」
『治療をしながら生活を送っている、ロールモデルを知りたい』
渡辺さんは去年6月、患者の生活にまつわる情報などを集めて発信するために「リボンアール」という団体を立ち上げました。
活動の中で、いま反響を呼んでいるイベントがあります。
その名も「乙女温泉」です。
【渡辺愛さん】
「女湯側には、乳がん経験者。抗がん剤で脱毛されて、なかなかみんなとお風呂入りにくいなと思っている人に入ってもらいました」
銭湯を貸し切って、女湯を乳がん経験者に、男湯を乳がんを経験していない女性に開放するイベントです。
渡辺さん自身も、手術の痕を見られたくないと大好きな銭湯から遠ざかっていた経験があり、自ら銭湯にかけあい実現させました。
湯上り後には、座談会や乳房のセルフチェック講座を行い、がんを経験していない人も一緒になって、話が尽きないそうです。
【乙女温泉に参加した乳がん経験者】
「本当にお風呂が好き、温泉が好きだったのにっていうのがすごくあって。胸も全摘したし、髪の毛のこと(治療による脱毛)もありましたし。『そこまでして入りたいの?いや入りたい』というジレンマがすごくあったんですね。乙女温泉の記事を新聞で見たときは、あぁ入れるんだと素直な感動。もう嬉しくてすぐに電話をしました。嬉しかったです。湯舟に浸かりながら泣きました」
現在は、緊急事態宣言が出ているため開催を見合わせていますが、「オンライン乙女温泉」として交流を行っています。
渡辺さんは、約200人の乳がん患者の実体験を集め、ホームページに掲載しています。
「乳がんと診断されたばかりの人」や「これから経験する人」に向けたメッセージには、「検診の大切さ」を訴える言葉が目立ちます。
いま、渡辺さんが伝えたいことは…
【渡辺愛さん】
「乳がんになることは全然嬉しいことじゃないし、なって良かったって思うわけではないんですけど。乳がんを怖がりすぎないというか…乳がんをこわがらないで大丈夫って、そういうメッセージを伝えたいです」