家族の店を守るために、淡路島で再スタートを切りました。
4月、兵庫県淡路島にオープンした、屋外型フードコート「淡路シェフガーデン」
新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた飲食店のシェフたちに再起を図ってもらおうと、大手人材派遣会社が企画。
全国から15店舗が参加することになりました。
【東京・らんまん食堂 高野昌宏さん】
「東京は全部で10店舗。閉店に追い込まれたり休業しているタイミングもあったんですね」
【奈良・ナラムマサラ 稲次知己さん】
「実際開けても客来ないし、自分で店をやるより非常に良い条件で助けていただいている感じですよね」
【山本輝明さん(40)】
「新品っすね、どこでどうなってるんやろう」
淡路島出身のシェフ・山本輝明さん(40)。
神戸で飲食店を営んできましたが地元・淡路島に戻り、再出発することを決めました。
神戸市内のオフィス街にある「洋食酒場MARUWA(まるわ)」
【山本輝明さん】
「淡路島の玉ねぎです。私の同級生が作っているんですよ。剥いてあげるとすごく綺麗」
看板メニューの淡路鶏を使った「チキン南蛮定食」がサラリーマンから人気を集めています。
山本さん、お昼時にも関わらず、店の外に出ています。
【山本輝明さん】
「大通りに人が歩いていないので辛いですよね。ピークのないランチタイムって感じです。このままだとお店潰れちゃいますよね。ずっと続くと」
コロナで客足は遠のき、今は夜の営業も辞めています。
感染拡大前に比べると、売り上げは、半分以下に落ちてしまいました。
【山本輝明さん】
「日々朝から夜までお食事を提供してたのが、すごい病んでいくと思います」
家族で2店舗を経営している「まるわ」。
もともとは淡路島で喫茶店を経営していた両親がより淡路島の食材を知ってほしいと2013年に神戸で店を構えました。
父・秀明さんは今、引退を考えていると言います。
【父・秀明さん(69)】
「70が限度かなーと話していた。コロナでだんだんお客さんも減っているから、もういよいよかなと思っていました」
そんな閉塞感が漂う中、山本さんの耳に入ってきたのが「淡路シェフガーデン」の企画です。
期間は2年。初期費用はかからず、月約10万円という格安の家賃で店を構えることが出来るのです。
【山本輝明さん】
「めちゃくちゃ景色良いので、良いですよねー」
オープンまで、あと2週間。
【山本輝明さん】
「でかいっすねー」
作っているのは、新しい店で出す新メニュー。
淡路島産のハモを使った「ハモサンド」です。
まるわの別店舗を切り盛りする三男・貴之(たかゆき)さんらも加わり、家族会議が行われました。
【山本輝明さん】
「海見ながら写真撮ってもらうのが良いよな。」
【三男・貴之さん】
「見栄えが分かりづらい、切ったら分かるけど、断面が分からんな」
次男の琢也(たくや)さんは淡路島で農業を営んでいます。
自慢のネギを使って新しいドレッシングを開発しました。
【山本輝明さん】
「一番下の弟が開発してくれました」
【次男・琢也さん】
「すごいな生産して弟が料理して」
【山本輝明さん】
「僕が仕上げる。各工程が兄弟で違うっていう」
オープンに向けて、着々と準備を進める中、またしてもコロナが立ちはだかりました。
テレビで最新情報をチェックする輝明さん。
【山本輝明さん】
「どうなるんだろう、どうなるんだろうと…。もう、朝のニュースチェックは日課になりましたね、コロナでだしてからずっと」
兵庫県に緊急事態宣言が発令される中、迎えたオープン。
淡路シェフガーデンでは、酒の提供を辞め、時間を短縮して営業することになりました。
【主催したパソナグループ・田中康輔執行役員】
「この時代に即して安心してお食事を楽しんでいただける、飲食業の方々も応援したいですし、お客様の安全を確保しながら、こういう時期ではありますけどもオープンさせていただきました」
山本さんの店「淡路島食堂まるわ」にも続々と客が訪れます。
【お店のスタッフ】
「オーダーお願いします。ハモサンド1つ」
新メニューのハモサンド。食べやすいサイズに切り分け、ハモのインパクトを出すために断面を見せる形で盛り付けました。
【訪れた客】
「ジューシーでハモもめっちゃ載っていて満足感ありました。映えも100点でした」
【訪れた客】
「ちょっと安心感がありますね、屋内よりかは屋外の方が。頑張ってほしいなと思いますね」
お昼を過ぎても客足が途絶えません。
次男は食材を持って駆けつけてくれました。
【山本輝明さん】
「ネギなかったからちょうど良かったわ」
【父・秀明さん】
「いよいよ終わりました。ネタ切れです」
閉店2時間前には、完売となりました。
70歳で引退すると言っていた父・秀明さんは。
【父・秀明さん(69)】
「充実した1日」
【母・玉江さん】
「あと何年頑張れる?」
【父・秀明さん】
「5年はぼちぼち頑張れると思う」
【母・玉江さん】
「ちょっと若返ってない?すごいイキイキしてるよ」
【父・秀明さん】
「ありがとうございます」
【山本輝明さん(40)】
「この仕事を選んだのはお客様にありがとうという言葉を言っていただける。そういうふうな部分でこういう仕事を選んでいるので、ずっと『コロナで大変だね、頑張ってね』という声が多かったので、今日は『ありがとう、ご馳走様、美味しかったよ』という声が多かったので、気持ちも心もすごい晴れています、今は」
親から子へとつながる大切な店。
その看板を守り続けるために、家族で苦境を乗り越えます。