結婚しない若者が増える中、自治体が運営する「結婚相談所」に注目が集まっています。
婚活イベントは抽選になるほどの人気ぶりなのですが、民間と違う魅力はどこにあるのでしょうか。
■兵庫県の庁舎で「お見合いイベント」
【準備するスタッフ】
「コロナ対応でしっかり前回同様、消毒をしていきたいと思います」
「斜めにしますんで、こんな感じで対面で座るような形で」
ここで開かれるのは「お見合いパーティー」。
まだ40分前ですが、一番乗りの男性がやって来ました。
参加した岡田さんはコンビニエンスストアに勤務。
職場では女性と出会う機会が少ないといいます。
【岡田さん】
「楽しみすぎて早めに来ちゃってました。ワクワクしちゃって。年齢的にそろそろ結婚したいと思って。37歳なんです。周りが皆さん結婚して子供もおるんで、焦ってしまって」
パーティーが開かれているのは、県の庁舎。
抽選に当たった男女12人ずつが参加しています。
まず4人ずつのグループを作り、テーマにそって話します。
【岡田さん】
「どちらが好きかというと私はUSJ。その理由は行ったことがあるから。ディズニーランドは夢のまた夢、いつかは行ってみたい」
【参加者の女性】
「私もどちらかと言うとUSJの方が。関西圏にあってディズニーランドよりも身近な存在なので」
出だしから積極的にトークを繰り広げる岡田さん。
気になる人がいたら、連絡先を書いたカードを渡します。
このお見合いパーティーには、ある特徴があります。
実はこれ、「県の事業」なのです。
■昨年度127組が結婚…いわば「県営の結婚相談所」
【ボランティアスタッフ「こうのとり大使」】
「是非いい方を見つけて連れて帰ってちょうだいよ。おばあさん応援しますから」
会場でお節介を焼くのは、兵庫県から委託を受けたボランティアの「こうのとり大使」。
熱のこもった指導で、積極的な参加を促します。
【こうのとり大使】
「あなたも元気出して。食べ物にもちょっと興味を持って。やっぱり食べ物って大事やから」
【司会者】
「男性の方からお願いします。では移動してください」
続いては、12人の中から1人に声をかけてのフリートーク。
岡田さん、最初に話した女性に一直線です。
【参加者の女性】「どんな動画見るんですか」
【岡田さん】「アニメとか海外の動画とか」
【参加者の女性】「私もアニメとかお笑い系も見ます」
【岡田さん】「アニメは最近のやつですか」
【参加者の女性】「結構昔かもしれないです」
【岡田さん】「例えば?」
【参加者の女性】「北斗の拳とか」
【岡田さん】「あれはアツいですね」
【参加者の女性】「めちゃめちゃアツいんですよ」
兵庫県では1999年、女性が少ない農村・漁村で、男性たちに出会いの場を提供しようとこうした事業をスタート、その後、県内全域に広がりました。
イベントをプロデュースするのは、兵庫県が設置した「ひょうご出会いサポートセンター」です。
【兵庫県青少年本部・梅谷順子理事長】
「その頃は『行政が結婚支援をするのか』という、色々な意見があった。未婚化・晩婚化も進んでいたが、必ずしも望まないのではなく結婚したい人はたくさんいるけれど、なかなかいい方に巡り合えないという声が強かった。そういう意味で全県的にやろうと踏み出した」
センターの事業は、「イベントの開催」と「お見合い相手の紹介」。
現在3500人あまりの男女が登録していて、資料を閲覧してお見合いを申し込むことがきる、いわば「県営の結婚相談所」です。
昨年度は、127組がめでたく結婚。
そのうちの1組に、話を聞きました。
■入会金が安い、県が運営の安心感も
【夫・大谷直也さん】
「まずインターネットで見つけて、その入会金って言うのが安くて、それを1回払うと5000円ぐらいだったが、1年間ずっと登録できて」
【妻・大谷美希さん】
「ちょっと怪しいところとか、金額的にすごく高いところがあって、やっぱり県でやっている出会いサポートセンターの方がやっぱり安心感があった」
直也さんは家電量販店、美希さんはお菓子の工場に勤めていて、異性との出会いがなかったといいます。
【夫・大谷直也さん】
「第一印象は、そうですね、写真とあまり変わらない、綺麗な人だなっていう…」
【妻・大谷美希さん】
「いや~、初めて聞きました。『こんないい人に会えますよ』って言ってあげたい。結婚してよかったです」
さらに、去年からは新たなサービスも。
スマートフォンで会員の登録情報にアクセスし、条件に合った相手を探せる「スマホ婚活」が始まりました。
【兵庫県青少年本部・梅谷順子さん】
「コロナを想定したわけではなかったが、お家でお相手を探すという活動ができることになった。こちらのセンターに来られるよりも、家で情報を得られる方がすごく多くて、前年比47倍とか、すごい数の方がお相手をお探しになられていた」
■若者への経済支援、共働きの環境づくりも必要
自治体による結婚支援は広がりつつありますが、若者の結婚事情に詳しい専門家は、行政の仕事としては、「もう一押し」が必要だと指摘します。
【中央大学文学部・山田昌弘教授】
「多くの人が経済的に自信を失っている。特に男性が自信を失っている。『どうせ声を掛けたって選んでくれない』と。結婚した後まともな生活ができるかとうところがポイント。若者全般に対する経済支援と、特に地域では女性の活躍する場を増やすことが最も必要になる」
若者への経済的な支援と、共働きしやすい環境づくり。
根本的な解決には、この2つが欠かせないといいます。
さて、お見合いパーティーに参加している岡田さんの様子は…。
【司会者】
「ただ今から発表の方に移ります」
配られた封筒の中には、カードが入っていました。
【司会者】
「花丸がついている方はマッチングしています」
いいなと思った相手の番号をカードに書いて、一致していればカップル成立です。
【司会者】
「男性の12番岡田さん。女性の12番。おめでとうございまーす」
猛烈にアタックしていた女性に、どうやら気に入ってもらえたようです。
【岡田さん】
「きょうはいい出会いがあって、素敵な人と出会えて良かった。ここで勇気を出さないと自分の将来に繋がらないと思って、一世一代の勇気を出しました」
この日は、12組中9組がカップル成立。
まずはお友達から、少しずついい関係を築いてください。