神戸市中央区にある「神戸どうぶつ王国」。
訪れた人が楽しんでいるのが、鳥を操る、バードショーです。
屋内で行われるバードショーでは、体スレスレを飛ぶ鳥たちに、会場は大盛り上がり。
大人気のパフォーマンスです。
しかし、鳥は本来大空を自由に飛ぶ生き物。
新型コロナウイルスの影響で来場者が大きく減る中、どうぶつ王国は新たな目玉を打ち出しました。
バードショーを屋外で実施することにしたのです。
■初の屋外バードショー MCを任されたのは、最年少23歳の女性スタッフ…試行錯誤の日々
バードショーのスタッフで最年少の乾真美瑠(いぬいまみる)さん(23)。
ショーの合間に乾さんが向かうのは、園の隣にある空き地。
初挑戦の屋外バードショーへ向けた練習を行います。
屋外での大きな課題となるのが、風。
鳥は風の向きに逆らって飛ぶ傾向があるため、飛びやすいように体の位置や向きを変え、受け渡しする技術が問われます。
さらに、ヘリが飛ぶと、集中が乱され飛び立ちません。
【神戸どうぶつ王国・乾真美瑠さん】
「中の練習と一番違うのが風。ただ立ってるだけでも、風の向き変わったりして、真後ろから風が来ると、バランス取れなかったりして、人間も風を読む練習とかしてます」
閉園後は、本番に向けての会議が開かれます。
大空を舞う鳥の雄大さをどう表現するかがテーマです。
【神戸どうぶつ王国・佐藤哲也園長】
「雨が降ったり、あまりにも強風だった時に、できないというリスクがあっても、なぜ外でやるか。中でやるよりも鳥にとって素晴らしいし、ショーとしてもよりスキルの高いものになる。その代わり、それをやろうと思ったら、個人個人の技能がとても大事になってくる。これから俺もスパルタになってくる」
この道40年の佐藤園長。
日に日に、指導に熱が入っていきます。
【神戸どうぶつ王国・佐藤哲也園長】
「こういう時期ですけど、黙っていても何も起こらないと思うので、どん底から積極的な施策を進めていきたいと思いました」
起死回生をかけ大きな費用を投じた会場も、着々と完成が近づいてきます。
乾さんは初回の舞台、アナウンスをしながら進行するMCに抜擢されました。
この日、園長に初めて一連のプログラムを見てもらいます。
しかし、ショーの目玉の一つである鳥、ハリスホークをうまく操ることが出来ません。
【神戸どうぶつ王国・佐藤哲也園長】
「屋内と同じだよ。右肩開いちゃダメ」
喋りながら、風を読み、さらに鳥を操る難しさ。
身に着くまで、反復練習しかありません。
休日も、自宅で台本を読みながら、自分のセリフを確認します。
【神戸どうぶつ王国・乾真美瑠さん】
「もともとは、入社してすぐの希望ではドッグショーがやりたかったです。一番は猫。で次は犬が好きで。鳥は論外だったんです。鳥ってあくびするんですか?ってくらい知識なくて。でも関われば関わるほど、表情とかも見えてきて、鳥は今、めちゃめちゃ好きです。中のショーでも、コロナ禍ですごいお客様が少なくて、一本の列ガラガラ、一人しかいないとかいう時もあって、すごく寂しかった。外での迫力とかをしっかり感じてもらえるように、こっちもミスしないように、しっかり頑張りたいなと思います」
■迎えた本番当日…無事キャッチに成功!「ここがおしまいじゃなくて、ここがやっとスタート」
3月12日、新たなショーが始まる日がやってきました。
会場はお客さんでいっぱい。
しかし春の嵐が吹き付け、いいコンディションとは言えません。
【神戸どうぶつ王国・乾真美瑠さん】
「胃酸が逆流しないように押さえておかないと…」
【神戸どうぶつ王国・佐藤哲也園長】
「逆流したら飲んじまえばいいんだよ」
いよいよ本番。
大きな鳥が登場すると、会場も沸き立ちます。
そして、何度も練習をしてきたハリスホークの出番。
見事キャッチに成功します。
外ならではの演出を盛り込んだショーは、無事に初日を終えました。
【訪れた人】
「鳥もアクシデントあったりしたけど、それも含めて楽しかったし、換気もいいんで、安心して見られてよかったと思います」
【別の訪れた人】
「室内の時からいつも見ていたんですけど、外で大空で飛ぶ鳥たちを見て、その姿とか美しさとか感動しますね」
【神戸どうぶつ王国・佐藤哲也園長】
――Q:乾さんはどうでしたか
「いい点はないです。あえて言うなら、アトラクションの前は、おなか痛いって言ってましたけど、本番になったらああいう風に喋れるんだから、少しはプロになったかなと」
【神戸どうぶつ王国・乾真美瑠さん】
「やりきったってよりかは、やっとここに立てたって感じ。ここがおしまいじゃなくて、ここがやっとスタートくらいなので、どんどんいいものを作って行きたいと思います」
苦境を乗り切る新たな名物へ。
人と鳥が一緒になって、より高いところを目指します。
(カンテレ「報道ランナー」3/30放送)