京都・福知山市。雄大な自然の中でタカを操るのは、小学4年生の村上心夏さん(10)。
その様子を師匠の衣川正幸さん(68)が見守ります。
【衣川さん】
「左の足に乗っかって、もっとぐっと。後ろに手を引いて思いっきり投げる!そう!」
衣川さんはタカやハヤブサなど、10羽ほどを飼育し、調教しています。
状況に応じて鳥を使い分け、害鳥の駆除や、狩りなどをする伝統的な「鷹匠」の仕事を福知山で続けています。
去年11月、そんな衣川さんに心夏さんは弟子入りしました。
――Q:衣川さんはどんな人?
【心夏さん】
「すごい人。タカを操れるすごい人」
■なぜ“鷹匠”の門を叩いたのか きっかけはカフェでの出会い
普段は京都市内の小学校に通う心夏さん。
授業中は少し控え目ですが、友達と遊ぶ休み時間が大好きです。
【心夏さんの友人は…】
「鳥について、一生懸命になれるのがすごいなって」
「鳥のことめっちゃ知ってるから、勉強になる」
タカへの思いはクラスメイトみんなが知っているほどです。
家に帰っても、その勉強は欠かせません。
愛読書を見せてくれました。
【心夏さん】
「実際飼ってる人が自分の調教方法とか、エサが欲しいときのハリスホークの声とか、ハヤブサの声とか書いている」
最初は、ただ動物を飼うことに憧れていた心夏さんですが、自由に空を飛ぶ鳥にだんだん心を惹かれていったそうです。
鳥とふれあえるカフェで、初めてタカを飛ばす体験をした時に、その魅力に目覚めました。
【心夏さん】
「飛ばすのが楽しかった。初めてタカに触れ合えたところやったから楽しかった」
このカフェでは、タカを飛ばすこと1回につき500円でしたが…
【父・健介さん】
「それを際限なくやりだしたから、『ちょっと待てよ』と…」
当時の心夏さんのハマりっぷりを振り返るのは、父・健介さん。
心夏さんの興味はそれで終わらず、自力で鷹匠の衣川さんを見つけコンタクトを取りました。
【父・健介さん】
「もともとすごい活発だったりだとか、社交的だったりした方ではないので、自分で好きなもの見つけて色々調べたりだとか、そこに連絡を取ろうとしたりとか、すごい成長したなと思う。僕はその熱意と成長に感化されていますね」
■早朝から片道2時間かけて…鷹匠の基礎から学ぶ
―2月13日 朝6時―
台所に立ちお弁当を作る心夏さん
自分の事は自分でするというのが、お父さんとの約束です。
ほぼ毎週末、片道2時間。
お父さんの運転で福知山の師匠のもとへ向かいます。
この日の訓練の相棒は、オスのオオタカ、光蘭。
大好きなタカに会えるこの日を楽しみにしていました。
【衣川さん】
「(エサ)やったらすぐ閉める、ポケットに入れる」
【心夏さん】
「ありゃ」
【衣川さん】
「落ちた、ははは。これは失敗だな」
今教わっているのは、まだ鷹匠の基礎の基礎。
エサを使って、タカを呼び寄せる訓練です
しかし羽を広げたら1mを超えるタカに、片手でエサを与えるのは一苦労です。
それでもあきらめず、福知山の自然の中で、一歩づつタカとの信頼関係を育んでいく心夏さん。
時刻は昼過ぎ、ようやくお昼ご飯の時間です。
朝作ったお弁当を師匠におすそ分けしました。
【衣川さん】
「卵焼き自分でしたん?すごいね。うん、上手にしてるわ。バッチグーやな」
■生きていたウズラの解体も 10歳が肌で感じる“命の大切さ”
師匠に教わるのは、タカを操る技術だけではありません。
タカのエサは先ほどまで生きていたウズラ。
ハサミを使って、タカが食べやすいサイズに自分で解体します。
【衣川さん】
「動脈が通ってる。これをつまんで、首の骨と別個にせな」
【父・健介さん】
「すごい大事なことを教えて頂いてる。こういうことも知っておかないと。動物園とか、都合のいいところだけ見てるとわからないことばかり」
鷹匠は、多くの生き物の命によって、成り立つ仕事。
衣川さんは、10歳の心夏さんにもその重さを教えます。
訓練後は、師匠の家で勉強の時間。
歴史や文化をしっかり学んで、知識も技術も身に着けた鷹匠になることが心夏さんの目標です。
【衣川さん】
「本当に私としては、こんな小さい子が習いたいってことに対して、本当に喜んでいます。好きっていうのがむちゃくちゃ出てましたから」
【心夏さん】
「もっとタカに慣れてもらって、いろんなことができるようになりたい」
1000年を超える伝統の「鷹匠」。
10歳の新たな世代が、一生懸命その夢を追いかけています。
(カンテレ「報道ランナー」3/3放送)