兵庫県・加古川市のアパレル会社「ワシオ」。
3代続く家族経営で65年以上にわたって肌着や靴下などを製造しています。
【ワシオ株式会社・鷲尾光さん】
「弊社は起毛の肌着を作ってまして、この起毛が弊社独自の起毛方法になっています」
独自の起毛技術で保温性に優れた「もちはだ」という商品が長く愛されていますが…
【ワシオ株式会社・鷲尾岳さん】
――Q:実店舗での売り上げは?
「会社はゴリゴリ(売り上げ)落ちてます。実店舗のブランドからのOEM(委託生産)は軒並み落ちました」
新型コロナウイルスの影響で、百貨店などに卸すメーカーからの受注が激減。
一時、工場にある機械の稼働率は1割にまで落ちこみました。
そんな地方企業が苦境を乗り越えようと、新たな取り組みを始めました。
■住む場所も業種もバラバラな人材集結!リモートでも参加できる“副業”
―リモート会議の様子―
「足元が冷えますよね在宅(勤務)やってて。在宅×靴下とか、ニーズあるんじゃないかな」
とあるリモート会議に参加するメンバーたち。
実は、住む場所も業種もバラバラです。
【大手家電メーカー勤務(大阪)】
「普段は大阪で家電メーカーで勤務してます」
【たばこ産業(東京)】
「原料調達部門で事業計画とか(を担当)。勤務地は東京です」
「ワシオ」が活用するのは「ふるさと兼業」というサービス。
新たな人材を求める企業と、副業を探す人をつなぐものです。
企業側は「ふるさと兼業」を通して欲しい人材を募集。
応募があった“副業をしたい人”のなかから、運営会社が適任の人を選び、紹介してくれます。
短期集中でリモートでの参加もできるため、「ふるさと兼業」を通じて副業を探す人が増えているといいます。
「ワシオ」では、年に1回のオンラインセールにむけ、5人のメンバーが加わりました。
3か月間、週1回のミーティングで戦略を練ることに。
【「ふるさと兼業」に参加する小林冬馬さん】
「毎日来てます。土日もなんだかんだ。いいですよねここ、すごい気に入ってます」
今回参加したメンバーの1人、小林冬馬さん(27)。
神戸港を望むワーキングスペースで作業をします。
東京のIT企業に勤めていますが、完全リモートワークができるため、去年9月、神戸にUターン。
地元に貢献したいと参加を決めました。
【小林冬馬さん】
「自分のマーケティングの知識・経験を実際に生かせるのかチャレンジはありましたね。好きな商品を発信して得た知識を本業にも還元するのはいい循環が回っている」
この日は小林さんをはじめ関西に住むメンバーが工場見学に訪れました。
特許を取得した技術が詰め込まれた生産過程をその目で確認します。
【ワシオ株式会社・鷲尾岳さん】
「もちはだは(通常と違って)編みながら起毛するので、糸を切っているというよりも繊維をかき出している感じ」
【小林冬馬さん】
「めちゃめちゃ手間かかってますね。値段にも反映されているのが納得できて、より良さを多くの人に届けたいとなりました」
■SNSの改革も!副業人材による新たな風で“過去最高売り上げ”達成
従業員の平均年齢が49歳の「ワシオ」。
土地柄、若い人材が集まりにくく、SNSを使った情報発信に課題を感じていました。
【ワシオ株式会社・鷲尾光さん】
――Q:ネットでの拡散や広告は?
「主には私の方で。SNS関係ですね、やっぱり大事なのは自分でも分かっていて…ぼちぼち触りながらやっていたが、やっぱり苦手意識があって」
これまでは一方的な発信しかできていなかった「ワシオ」のTwitter。
小林さんは書き込みが多いことに目を付けました。
【小林冬馬さん】
「(商品の)ポテンシャルはあるけど生かせてない。お客さんがいろんな口コミをしてる。同じような悩み持ってる方多かった。どういうサイズ感とかどういうお手入れの仕方がいいのかなとか。そこにアプローチできていないのはもったいない」
「値段が高い」という投稿には…
暖房いらずという「節約」をアピール。
「買うべき商品がわからない」という投稿には…
シーン別の使い方を提案します。
地道で小さな工夫ですが、2か月で1000ものクリック数を獲得し、フォロワーも増加!
さらに、商品名やイラストがなかった広告用の写真もリニューアル。
「防寒」に関連する検索をした人に、集中的に広告を打つ戦略で、セールを迎えました。
果たしてその成果は…?
【ワシオ株式会社・鷲尾岳さん】
「結果なんですが、無事、過去最高の売り上げを達成することができました」
1日あたりの売り上げ100万円近く更新。
過去最高の900万円を記録しました。
【ワシオ株式会社・鷲尾光さん】
「内向きにやってきたことを皆様のおかげで新しい人に来ていただけたし、勉強になることも多かったのでありがとうございました」
【小林冬馬さん】
「残り4時間とかのタイミングで、『残りわずか!』みたいなSNSの広告を回すのもいいかと思う」
チームは2月で解散しますが、従業員だけでさらなる売り上げアップを目指してノウハウを共有します。
【ワシオ株式会社・鷲尾光さん】
「今までは肌感でしかわからなかったが、数字などの情報をもとに作戦立てられたのでありがたかったです」
コロナにあえぐ地方企業。
副業人材という選択肢が、1つの解決策になるかもしれません。
(カンテレ「報道ランナー」2/17放送)