大阪府茨木市の飲食店が、緊急事態宣言が始まってから“無料で”弁当を配り続けています。
時短営業で経営が苦しいにもかかわらず、無料にこだわるワケとは。
大阪府茨木市にある飲食店。
緊急事態宣言中の営業は午後7時までです。
【店長】「俺の時計まだ(午後6時)59分」
【客】「ラスト1杯ですね」
【店長】「ほんまやったら平均10杯ぐらい飲むから。まだ5杯やな。1時間半で」
店長の青木孝宏さん(53)
営業を終えた後にも関わらず…料理を作り出しました。
時短営業中、店で余った食材を使って弁当を作り、無料で配っているのです。
【会社員(営業)20代】
「遅くなることもあるので。ありがたいですね。自分で準備しなくていいので。知っている方が用意してくれていると思うと、一人暮らしなので温かみを感じますね」
一人暮らしの人や、アルバイト先が休業となり賄いがなくなった人のために1日に10食程度準備しています。
いつもなら賑やかな店内で、SNSで言葉を交わして客が来るのを待ちます。
仕事帰りのこの男性は、2回目のリピーター。
【会社員(製造業)20代】
「SNSでこういうの(お弁当が)あると聞いて。きのうも来て…また弁当食べたいなと」
――Q:きのう食べたのはどうだった?
「めちゃくちゃ美味しかったです」
【店長】
「美味しないって言われへんやん(笑)」
休業中の近くのバーから『弁当と一緒に渡して欲しい』と託された酒。
さらに近所の飲食店からは”おかず”のおすそ分けも…
【近所の飲食店の人】
「聞いていたので良かったらと思って。ちょっと残っていたので」
【店長】
「ありがとう!使うわ!」
■苦境のなか『無料』にこだわる理由…客「ここに来ると落ち着く」
時短営業で売り上げが激減する中、無料で弁当を配ることを決めたきっかけ。
それはがらりと変わった「夜の街」の姿でした。
【店長】
「みんな困ってるねんなと。晩飯ないよなって。コンビニも飽きるやろし。飲食店そこら中にあるのに出されへんのはおかしな話。食材余るし、暇やし、(食材)食べたら太るし、あげたら喜ばれるし、一石四鳥。それを楽しんでいるだけというのもある」
最近は開店休業状態もある日々。
営業を続けることは赤字だといいますが、青木さんは休むことを選びませんでした。
【昼食を食べに来た親子】
「ここに来ると落ち着く」
【店長】
「そんなん言うてくれる人おるから昼も(店を)閉められへん」
お腹を満たすだけではない、みんながほっとできる大切な場所。
弁当を求める客はあくる日も…
【お弁当を食べる2人】
「温かくて美味しいんです。夢中で食べちゃうね。青木さんの気持ちが嬉しくて」
店を訪れた別の男性。新型コロナで仕事が減り、生活費に苦しんでいました。
【会社員】
「きょうで2回目なんですけど。食費が苦しい」
――Q:前回食べた時は?
「涙が出てきましたね。あぁなんて優しい人がいるんだと」
男性は店長が拒んだにも関わらず、無理やり代金を置いて帰りました。
【店長】
「今回は見返りを求めない。見返りを期待していたらできひん。タダやから楽しんでできる部分もあるし、テキトーにできるところもある」
無料の弁当を誰も取りに来ないこと。
そして、店に賑やかな声が戻ることが青木さんの願いです。
(カンテレ「報道ランナー」1/29放送)