「自分を変えたい」
コロナをきっかけに人生の舵を切った元保育士の女性の日々を追いました。
コロナ禍で…続々開業するキッチンカー
移動しながら食べ物を販売する“キッチンカー”
新型コロナウイルスの感染が広がる中、「密」を避けながら本格的な料理を楽しめるため、人気となっています。
キッチンカーに新たな活路を見出す業者も多く、大阪府だけで去年175件が新たに登録されています。
経験ゼロ、運転免許すらなかった元保育士
大谷千晶さん、27歳。
飲食店につとめた経験はなく、運転免許すら持っていなかった彼女は、この日、キッチンカーでゼロからのスタートを切りました。
開業の約10日前、大谷さんの自宅を訪ねると、手作りで装飾の準備をしていました。
【大谷さん】
「イメージはキッチンカーが保育所みたいな。子どもの喜ぶ顔をイメージしたらどんどん手を付けくわえちゃうんですよね」
実は、大谷さんは元保育士。
キッチンカーには、子どもが自由に寄せ書きできるスペースを設けたいと考えています。
【大谷さん】
「“ありがとうの木”を作ろうと思っていまして、季節ごとに花は変えようと思っているんですけど。子どもたちもお母さんに対して言葉じゃなくてもこうやって形にして感謝を伝えられたらいいなと思って」
転職後、コロナをきっかけに決意
大谷さんは20歳から4年間、保育士として忙しい毎日を送っていましたが、もっと自分の時間をもちたいと思うようになり、転職しました。
【大谷さん】
「保育士を辞めてからは、将来のための時間を作ろうと思って、一旦OLをしていたんですけど、自信がなくて、コミュニケーションもすごく未熟でしたし、もともとこんな明るくもなくすごく人見知りだったんです。そういう自分を変えたいっていうのがあって」
去年の4月、在宅勤務になったとき、自分を見つめなおすようになりました。
【大谷さん】
「なにもしていない生活に、私なにも変わってないな」
そんな時に知ったキッチンカーのフランチャイズ加盟店の募集。
家族にも内緒で仕事を辞め、サポートを受けながら出店の準備を進めていきました。
この日は、キッチンカーの納車日です。
大谷さんの店の名前は「チアフルキッチン」
サーカスのテントをイメージしたデザインには、人々が集って楽しめる場所にしたいという願いが込められています。
車両代など開業資金は450万円。
今までの貯金をすべてつぎこみました。
【大谷さん】
「子どもたちが遊んでる風景とかをここから見られるのかと思ったら楽しみです。すごい!早く(キッチンカーを)出したい!」
突然、出店中止の連絡…指導を受け、備える日々
納車を終えたとき、大谷さんのもとに一件の連絡が…
緊急事態宣言の発令を前に、多くの集客が期待されるイベントが中止になってしまいました。
でも今はとにかく前に進むしかありません。
大谷さんが加盟するキッチンカーでは、出店者は販売する商品をシェフと開発し、仕込みが済んだ状態で仕入れるので料理経験がなくても簡単な調理で販売できるようになっています。
さらに、出店者の希望に合わせて商品開発も可能。
大谷さんはオリジナルメニュー「デーロンチーズスティック」を商品として出すことにしました。
噛むとチーズが”みょ~ん”と伸びて、子どもが喜ぶ仕掛けになっています。
この日は、コンサルティング担当者から、キッチンカーの設営や販売の仕方について指導を受けます。
準備だけでも想像以上に手間がかかります。
デビューの日…初めて両親に「全てを告白」
本格的なデビューの日
大阪府大東市にある商業施設で出店させてもらうことになりました。
もう頼れるのは自分だけ。しっかりとお客さんに笑顔を届けます。
「ありがとうの木」も大盛況。大谷さんが思い描いていた光景が現実になりました。
実は、大谷さん この日ある人を呼び出していました。
何も事情を知らなかった両親です。
大谷さんは、心配をかけまいと仕事を辞めたことも開業することも伝えていませんでした。
【父・昇さん】
「何してんねん!?」
【大谷さん】
「キッチンカー始めました!ひとりで!」
いつのまに始めたのかと驚く両親は、大谷さんが仕事を辞めたと聞いて二度びっくり。
しかし、大谷さんがひとりでお店を営業している姿を見て、受け入れてくれた様子です。
【母・万紀さん】
「こういう時期やからあれやけど、長く続けてくれたら」
【父・昇さん】
「わが娘ながら、がんばりよるなと思うわ」
両親にも背中を押され、心のつかえが一つとれました。
今だからこそ…本当にやりたいことを
この日、用意していた約80食分が完売しました。
人生の舵を大きく切った大谷さん
【大谷さん】
「コロナもあるのでこれからどうなっていくかわからないけど、でもじっとしていても何も変わらないなっていうのを今回感じたからこそ動いているので、“どんどん逆に動いていこう”って自分の自信に今日はつながった一日になりました。自分で自分を今日は褒めたいなって思います」
コロナをきっかけに見つめなおした“本当にやりたいこと”
これからも一歩ずつ歩んでいきます。
「ありがとうの木」もお披露目です。