過疎化が進む奈良県の村に、人を呼び込もうと都会から移り住んで活躍する、女性ガイドがいます。
外国人観光客が減り苦境に立たされるなか、女性が仕掛ける新たなプランとは?
奈良県十津川村で…「ワーケーション」
朝霜が降りる寒い朝。
屋外のベンチに腰掛けて、キャンプ用品を使って、湯を沸かしています。
「せっかく十津川に来たからには、ゆっくり時間を過ごしてほしいなと…」
コーヒーを淹れて男性をもてなす、角田華子さん(37)。
角田さんたちがいるのは、紀伊半島の中央に位置する、奈良県十津川村です。
角田さんが十津川村で広げようとしているのが「仕事=ワーク」をしながら「休暇=バケーション」も楽しむ、“ワーケーション”です。
【角田さん】
「いつ頃来たいとか、希望はありますか?」
【ワーケーションを希望する男性】
「平日はクライアントとミーティングがたくさんあって、通話が出来るようなスペースがあれば、平日に行きたいなと」
【角田さん】
「いま私がいる場所がKIRIDASという場所なんですけど、十津川の家具職人が家具を作っていて、それを展示しているショップ兼カフェ。ここは、コワーキングスペース(=共有の作業空間)として使えますし、コーヒーの提供も出来ます」
【ワーケーションを希望する女性】
「ちょっとマニアックな場所にも興味があって。B級スポット、カップルが行くにはオススメできないけど、マニアが行くには面白い、みたいな…」
コロナをきっかけに…観光から「転換」
角田さんは、村の臨時職員として働いています。
【角田さん】
「観光スポットで、十津川村のB級スポットって、ご存じですか?」
【同僚の男性】
「う~ん、難しいですね」
豊かな温泉にも恵まれ、世界遺産・熊野古道もとおる十津川村。
観光関連の会社で働いていた角田さんは、村に「外国人観光客」を呼び込むため、2019年に”現地在住のガイド”として移住しました。
【角田さん】
「(十津川に行くことになって)やった!と思いました。ずっと横浜に住んでいて、都会はもう十分住んだなと思っていて。次に住む場所はきっと、緑がたくさんあって、水が近いところだと考えていた」
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で観光客が減少。
心機一転「ワーケーション」の誘致に取り組むことにしたのです。
とはいえ、”近畿の秘境”と呼ばれる山深い場所で、本当に「仕事」が出来るのでしょうか…?
秘境も…ネット繋がれば「快適」
北海道からワーケーションに訪れた、佐々木大輔さん。
ノートパソコンを使い、オンラインで社内ミーティングをしています。
佐々木さんがいるのは、100年以上前に建てられた古民家を改修した、ゲストハウスです。
――Q:ネット環境はどうですか?
【ワーケーションに訪れた佐々木さん】
「全然問題なかったですね。オンラインミーティングをしたが、映像も全然問題ないし、音声も途切れなかったので。電源がちゃんとあって、ネットワークが繋がっていれば、どこでも仕事出来るので、そういう意味ではここは快適ですね」
一方、角田さんの姿は、十津川温泉にありました。
【角田さん】
「いま、十津川村に来たいという方の中に、車ではなくバスで来る人がいて。その人たちに『十津川温泉に宿泊して、電動自転車どうですか?』っていう話をしているんですけど」
ワーケーションをしたいけれども、十津川村のことをよく知らない…という人たちのために、角田さんは情報の発信に力を入れています。
足湯に柚子を入れているのを見た角田さんは、すかさずスマートフォンでその模様を撮影。
SNSに投稿しています。
【柚子を入れた女性】
「村にすぐ、情報発信できる人がいるっていうのは、すごいなと。ありがたいです」
村に移り住んだことで、角田さん自身にも変化がありました。
【角田さん】
「自然に夜になると眠くなる。今まで午前2時に寝るのが普通だったので、人間らしい生活しているなと」
移住者だから発見できる、地元の魅力も
仕事が休みの日。
角田さんは、地元の人たちから料理を教わっていました。
村を案内した人たちは、この場所で”お弁当づくり”を体験してもらっています。
単なる観光ではなく「生活そのものを感じてほしい」という思いからです。
【角田さん】
「地元の人とコミュニケーション取りながらお弁当作るって、結構貴重だと思う」
【地元の女性】
「(角田さんが)お客さんを連れて来てくることで、一歩向こうに進んでいるのかなと。今までしたことないことをさせてもらっている」
地元の人たちが気付かない、十津川村の”魅力”。
【角田さん】
「結構…その、『十津川村には何もない』って言う方がいるんですけど、全てがあるなと思っていて。いろんな人が来て、『ここ、いいところですね』と言ってくれれば、村の人も『あ、いいと思っている?』と、自分の村を自慢できるようになってくれるのではないかと」
翌日、角田さんはワーケーションで訪れた佐々木さんを連れて、村を案内していました。
玉置神社などを訪ね歩いた後、最後に訪れたのは国の名勝にも指定されている「瀞峡」です。
【ワーケーションに訪れた佐々木さん】
「なんか、中国の映画にも出てくる川みたいですよね」
【角田さん】
「もともと、橋が架かっていたんですけど、9年前の台風(紀伊半島水害)で洪水が起きて、水位が橋のあたりまで上がったんです」
ただ訪れるだけではわからない、十津川村の歴史です。
【ワーケーションに訪れた佐々木さん】
「洪水が実際にあった場所や水位が上がったのかを見ると、やっぱりすごいなという感想しかないですね」
――Q:また十津川村に来たいですか?
【佐々木さん】
「来たですね。ここは夏に来たいですね。川下りもやってみたいですし、冬じゃない十津川も見てみたいなと思いますね」
ーーQ:角田さん、また1人ファンが増えましたね
【角田さん】
「やりました!」
過疎と少子高齢化が進む、十津川村。
ワーケーションを通じて、村と関わり合いを持つ人を1人でも増やすことが、角田さんの願いです。