阪神淡路大震災から26年。
震災を経験していない世代が増える中、10代を中心としたグループが語り部の活動を始めました。
SNSなどを使って同じ若い世代に発信する彼らの思いを取材しました。
―今年1月 芦屋市―
【高校生】
「第2問です。大きな地震のため避難所、小学校の体育館に避難しなければなりません。しかし、家族同然の飼い犬がいます。一緒に避難所にいきますか?」
この日、若者たちだけで震災について語るイベントがありました。
避難所に犬を連れていくか…など様々なテーマを話し合います。
【高校生】
「犬の臭いとか吠える鳴き声とかが迷惑で、ただでさえ避難でストレスが溜まっているのに、さらにストレスを溜めるもダメかなって思って『NO』にしました」
【高校生】
「実際の話なんですけど、ペットを連れて行って、最初は犬だと吠えたりするので、アレルギーの人もいたりするので『何で連れてくんねん』って言われたんですけど、少し時間が経つと犬の周りが憩いの場所になった、そんな例もあります」
このイベントを企画したのは、 神戸市長田区に住む藤原祐弥さん(18)。
【藤原祐弥さん(18)】
「沢山の方から教えていただいた震災の記憶を、これから先どんどん忘れ去られていくのはすごく自分の中では不安です。阪神淡路大震災のような被害が二度と起こらないような世の中に自分もしていきたいです」
■インスタもフェイスブックも活用…若者ならではの伝え方
藤原さんが代表を務める語り部グループ『1.17希望の架け橋』は去年10月に発足。
メンバー22人全員(15歳~21歳)が震災を経験していません。
自分たちと同じ若い世代に関心をもってもらいたいとSNSを活用して発信しています。
この日はSNSに投稿するためのメッセージ動画を制作しました。
当時の阪神・淡路大震災の様子だけでなく、『語り継ぐ活動』への意気込みなどを動画に盛り込みます。
【藤原祐弥さん】
「めっちゃいい」
【動画を制作した高校生】
「よかった」
【藤原祐弥さん】
「ばりええやん、インスタにも載せたいし、フェイスブックにも載せたいし、出来たらYouTubeにも載せたい」
語り部グループ『1.17希望の架け橋』のインスタグラムには、被災者から聞いた当時の様子や動画を投稿して震災を伝えています。
■語り部になったきっかけ…「若い世代が希望」と震災経験者から託された想い
―去年12月 神戸ルミナリエ代替イベント―
去年は新型コロナウイルスの影響で中止となった「神戸ルミナリエ」。
代わりに開かれた催しで、藤原さんたちはイルミネーションには「慰霊」と「鎮魂」の意味があることを伝えました。
すると、イベント会場に被災した人たちが次々と訪れ、当時の状況を教えてくれました。
【藤原祐弥さん】
「ちなみにどこに住んでいますか」
【訪れた震災経験者】
「灘区です。自宅のトイレは水が出ないから区役所に行ったんですよ。トイレに入ったらとんでもない。使える状態じゃない。(トイレが)詰まる前にバケツで流していれば良かったんやけど、そういう事もみんな知らずにどんどん使って・・・」
藤原さんは高校で防災を専門に学び、卒業前に「神戸ルミナリエ」で初めて語り部をしたことが、『希望の架け橋』立ち上げのキッカケになりました。
【藤原祐弥さん】
「やっぱり(活動の)初めは不安があって、語ることで『君たち震災を知らないのに語らないでくれ』と言われるかなって思って参加したんですけど」
「『若い世代が希望だから語って欲しい』と言われたので、自分たちもどんどん語らなければいけないんだなと思いました」
【イベントを訪れた震災経験者】
「こうやって続けてもらえたら助かるわ。ありがとうございます。お願い致します」
■復興に尽力した祖父の思い…震災を知らない同世代へ伝えたい
藤原さんは高校卒業後、祖父が創業した建設会社に就職しました。
会社は震災直後からガレキの撤去など復興事業に尽力してきました。
【震災を経験した先輩社員・松山久司さん(71)】
「想像できひんと思う、あの凄まじい光景は。機械に乗って解体して、(家主に)『ちょっと待って』って言われたら待って…」
「『これ記念の茶碗や』とか『写真』とか何か出たら必ず待って、1日で終わる仕事も2日かかろうが3日かかろうが、(祖父は)持ち主の被災した人の気持ちになってやれと言っていた」
地元の復興のために力を注いできた祖父は2年前に他界。
震災当時の話を直接祖父に聞くことができませんでした。
色んな人の想いを胸に・・・震災を知らない世代へ伝える藤原さん。
この日は県立芦屋高校を訪れ、出前授業を行いました。
【藤原祐弥さん(去年12月28日)】
「おばあちゃんは当時、神戸市須磨区の東落合に住んでいて、地震が起こってすぐに僕のおじいちゃんとおばあちゃんは机の下にすぐ隠れろということで隠れて、ガスのカセットボンベが家にあったみたいで、カセットボンベで料理はできたんですけど、水は出ないということで…」
また別の出前授業では、先輩社員から聞いた『当時の解体作業の話』をしました。
【藤原祐弥さん(1月10日)】
「完全にペチャンコになった家の解体作業に入らせてもらった時に、通常だったら半日ぐらいで終わるところを3日から4日ぐらいかかったと聞きました」
「なんでかというと、当時、住まれていた人と立ち合いながら解体していたんですけど、当時の思い出の品であったり、孫からもらった手紙が出てきて、そういうのが1つでも出てきたら、ちょっと待ってくれと作業を止めて…」
「昔からいる従業員はやっぱり機械に乗りながら涙ながらに仕事をしていたことを聞きました」
【出前授業に参加した高校生】
「若い人からは聞くのは凄く身近に感じましたし、自分たちの(若い)視点だからこそ、出来ることがあった」
「同じ近い世代に、しっかり考えている人がいるのに、私たちはそこまでちゃんと考えられていなかったんだと気付いた。私も伝えていけるんだ。私も出来るんだ」
■震災から26年…次の世代へ「自分たちが特別じゃない、誰でもできる」
去年12月、神戸ルミナリエ代替イベント。
震災を経験していない若い世代から集めた「紙灯篭」6000個、それぞれの想いをつなぎます。
【藤原祐弥さん】
「自分たちのやっていることが特別じゃなくて、誰にでも出来ることなんだよっていうことをどんどんこれからも伝えていきたくて。若い世代が前に出て語っていくことは、これから重要になっていくこと。これから先も語る場を作り続けていきたい」
震災を経験していなくても出来ることがある
被災地の想いは次の世代に託されます。
(カンテレ「報道ランナー」1/14放送)