去年、耳を疑うような”ある事件”が明らかになりました。
性的暴行を加えた罪に問われた一人の男。
被害に遭ったとみられるのは”300人以上の男性”でした。
■「申し訳ないと思いながら欲求を満たした」…男の約16年にわたる犯行
【被害に遭った男性】
「(被害を聞いて)凍りましたね。寒気するくらいの感じで・・・」
「男性を見る目が変わりましたね」
大阪市立中学校の教師だった北條隆弘被告(42)。
睡眠薬や酒などを飲ませた男性10人に、性的暴行などを加えた罪に問われています。
裁判の中で北條被告は・・・
【北條被告】
「泥酔しているサラリーマンを連れ込んだりした」
「(被害者には)申し訳ないと思いながら欲求を満たしていた」
「ばれたら逮捕されるし、家族や友人に悲しい思いをさせ仕事も失うと思っていた」
【検察】
「いつからそのようなことをしていたのですか?」
【北條被告】
「26歳ごろからです」
約16年間にわたり犯行を続けた北條被告。
自宅から押収された写真データなどから、『被害者は300人以上』とみられています。
これだけの犯行がなぜ発覚しなかったのでしょうか。
■路上で寝てしまった男性…起きたら見知らぬ部屋に 北條被告の手口とは
取材班は、北條被告の被害に遭ったという男性に話を聞きました。
【被害に遭った男性】
「10年くらい前になるのであれなんですけど…。梅田のあたりで飲んでるときに記憶が飛んでしまいまして」
仕事帰りに酒に酔って路上で寝てしまった男性。
目が覚めると、知らない男の部屋で横たわっていたといいます。
【被害に遭った男性】
「最初は普通に助けてもらったみたいな感覚だったので、連絡先というかお礼含めてやりとりしたいなくらい(に思っていた)」
「北條なになにです。アドレスこれですみたいな」
帰ろうとすると、北條被告からあることを告げられました。
【被害に遭った男性】
「昨日のこと覚えてる?みたいな感じに向こうから言われまして」
――Q:被害を聞いてどう思った?
「凍りましたね。ちょっと酔っていたんですけど、それで一気に酔いがさめるというか。寒気するくらいの感じで…」
寝ている間に”わいせつな行為”を受けたことを知り、逃げるように部屋を出た男性。
しかし、警察に通報はしませんでした。
――Q:警察に行こうと思わなかった?
【被害に遭った男性】
「思わなかったですね。関係を持つのも怖かったので」
「やっぱり恥ずかしさといいますか…そんな話ないと思うんであんまり」
――Q:当時を振り返って『こうしておけばよかった』と思うことは?
「ニュースで結構被害者の方がいるのを見たので、自分が被害を届け出られていたら未然に防げたのではないかという気持ちになりました」
■男性への性犯罪…申告されず”氷山の一角” 『被害者は女性』という思い込み
2019年に警察が把握した『男性が被害にあった性犯罪の件数』は、性的暴行をする「強制性交等罪」は50件。
無理やり体を触るなどの「強制わいせつ罪」は139件となっています。
しかし男性が被害者の場合は、被害を申告することに抵抗を感じる人が多く、氷山の一角でしかありません。
男性の被害者の自助グループを運営する玄野さん。
自らの経験から、被害の深刻さは男性も女性も変わらないといいます。
【玄野武人さん】
「よくトラウマの記憶とか性暴力の被害の記憶とかって、”生の記憶”っていうんですけど。被害にあったときのそのままの記憶がいつも思い出されるわけですね」
「一日中過去のことが思い出されて頭から離れない、そのために頭痛もするし…。回復するのに20年ほどかかっているので」
内閣府の調査では、被害にあった後、『生活に変化が出た』という男性は69.6%。
「人づきあいがうまくいかなくなった」
「仕事をやめた、生きているのがいやになった」
などの回答が見られました。
【玄野武人さん】
「性暴力に関しては、『加害者は必ず男性、被害者は女性』という思い込み、固定観念がありますから、被害男性が話しても周りは信じない」
「まわりに信頼できる人間関係がある、健全な人間関係があることで回復につながっていく」
誰にも相談できず、被害者の声が埋もれていく現実。
玄野さんは、一人で抱え込まず、被害を打ち明けてほしいと訴えています。
(カンテレ「報道ランナー」1/13放送)