新型コロナウイルスの感染が収まらない中、宿泊療養の現場でも異変が出てきています。
医療体制のひっ迫で、これまでは入院していた高齢者なども宿泊療養になるケースが増え、急な容体の悪化や救急搬送が相次いでいるのです。
緊迫度が増す、年末の現場を取材しました。
12月30日の朝。
大阪府内の宿泊療養施設になっているホテルでは、24時間勤務の看護師が引き継ぎを行っていました。
【引継ぎをする看護師】
「先生(医師)の方から、また呼吸(の不調)があれば、すぐ相談してもらうようにと、本人にも伝えています」
30日の時点で、このホテルで療養するのは103人。
そのうち14人が65歳以上の高齢者です。
医師は常駐しておらず、看護師4人が手分けして電話で健康観察をしていきます。
【患者に電話する看護師】
「健康状態の確認の連絡ですが、特にお変わりないですか?よかったです」
「朝は酸素の値は測ってもらっていますか?98、よかったです」
しかし、朝の健康観察が始まった直後…
【大阪府の職員】
「10時台の入所を止めるかも。救急搬送が入ったので」
【救急搬送になった患者に電話する看護師】
「呼吸は大丈夫ですか?はい。(入院先が)決まりましたら連絡しますね」
64歳の男性患者の血液中の酸素濃度が低下。
病院に救急搬送することになりました。
ホテル前で待機する救急隊員に「本人、いま降りてきているので…」と説明する職員。
男性はなんとか自分で歩き、救急車に乗り込みました。
大阪府では宿泊療養施設からの救急搬送が、4月から6月までは24人、7月から9月までは113人でしたが、11月から12月は317人に急増しています。
この背景にあるのが、医療機関での病床のひっ迫による宿泊療養の運用の変更です。
感染者が急増してきた11月からは、これまでは入院していた高齢者と基礎疾患のある人も、無症状や軽症ならば宿泊療養になるケースが増えているのです。
【宿泊療養施設の看護師・田淵友佳さん】
「今は80歳に近い高齢者とか、持病をたくさん持っていても、(症状が)落ち着いているからということで入所される方も多いので、本当に何があってもおかしくないと思っています」
■電話に出ない患者も…設備のない宿泊施設で看護師から”不安の声”
こうした中でもホテルには次々と大阪府が手配した車で患者が搬送されてきます。
看護師はレッドゾーンにいる患者に、容体の変化を知るのに欠かせない、血中の酸素濃度などを測る医療機器の使い方を説明。
8台の機器を100人以上の患者が共有します。
【看護師・田淵さん】
「(血中の酸素濃度は)95以上が正常値になります。94を下回る場合は、その場ですぐに、(窓越しに)周りにいる方に声をかけていただきたいんです」
12月、神奈川県と愛知県の宿泊療養施設では、患者と電話で連絡が取れず安否確認に時間がかかったり、夜間に容体が急変したりして患者が亡くなるケースが出てきました。
【看護師・田淵さん】
「(電話に)なかなか出ていただけない場合は、何かあっても困りますので、(部屋に)突入させていただきますので、ご協力お願いします」
同じ日、大阪府内にある宿泊療養の看護師のオンライン会議では、病院のような設備がない中で、容体の急変をどう察知すればいいのか、次々と不安の声が上がっていました。
【大阪府内の宿泊療養施設の看護師】
「夜中に病院にいるときみたいに、2~3時間おきの生存確認がいるのかなと。何かあって、朝に(息が)止まっていたら、『じゃあ、どうしていたの担当の看護師は』『大阪府はどうなっているの』となってからでは、こちらも困るかなと思って」
【別の宿泊療養施設の看護師】
「ホテル療養で見ることが難しい人も、電話をかけてもかけても、しんどいから出たくないと、電話をかけても出られない方もいて」
大みそかの朝。
24時間勤務を終え、患者の情報を引き継ぎます。
【看護師・田淵さん】
「けさは38度ジャスト。呼吸は荒くはなかったが、引き続きイライラされていたので」
「昼ごはんを取りに来る時に(酸素濃度を)測らせてくださいとお願いしている」
ホテルの看護師たちも、ギリギリの状況での闘いが続いています。
【看護師・田淵さん】
「(病院と違い)本当に何もしてあげられないというのが一番です」
「受け入れる病院も大変なのがすごくわかりますし、もう何も私からは言えない。ただ、やっぱり、皆さん一人一人が、お体を大事にして欲しい」