病気と闘いながらでも世界中の素敵な料理を楽しんでほしい。難病ALSの患者のために新しいレシピが考案されました。
兵庫県西宮市に住む米田晴美さん(68)は、19年前にALS・筋萎縮性側索硬化症を発症しました。
ALSは全身の筋肉が徐々に動かなくなっていく難病で、味覚は変わりませんが飲み込む力も弱くなってきます。晴美さんの晩御飯は毎日、夫の裕治さん(69)の手作りです。
【夫・裕治さん】
「食べることは好きですよ。晴美さんは”がばがば”食べます」
「食はすごく大事なところ。できるだけ僕と同じようなものを食べるようにしてあげたい」
食べることが好きか尋ねると…にっこり笑う晴美さん。ALS患者は誤嚥の危険性が高いため食事をペースト状にした「ミキサー食」などを食べることが多いそうです。
【夫・裕治さん】
「ミキサー食っていうのが一番味気ない。何食べてるかわからない世界ですね。だけど安全といえば、もうミキサー食っていう人も結構多いんですよ」
そこで今回、日本の製薬会社で唯一『ALSの治療薬』の承認を受けている「田辺三菱製薬」が考案したのが…
【記者リポート】
「インドのカレー、タイのトムヤムクン、ベトナムのフォーレストランで出てきそうなこちらの料理…実はALS患者向けの嚥下食です」
考案されたのは、世界の名物料理のレシピをもとにした嚥下食です。
本格的な味のまま、とろみなどを加えてアレンジされています。
材料もスーパーで簡単に手に入るものばかり。
【田辺三菱製薬・河辺浩二さん】
「病気の初期に、なるべく適切なカロリーを摂取していただく。間違いなく薬物療法のみならず、食事というのは、栄養管理は重要なポイントになってくるかなと」
――Q:なぜ“世界の名物料理”?
【田辺三菱製薬・河辺浩二さん】
「患者さんひとりひとりと話をすると、やはり旅行に行きたいという願いを多く聞くんですね。(このレシピが)ひとつの楽しみになっていただければ、大変ありがたい」
レシピはWEBサイトで公開されています。早速、裕治さんは妻・晴美さんのためにベトナム料理の「フォー」を作りました。
【料理中の夫・裕治さん】
「麺や!ほんまに麺や」
「こっちが僕。こっちが晴美ちゃん」
晴美さんは、大の海外旅行好きでALSを発症してからも10ヵ国を旅しました。ベトナムも大好きな国のひとつです。
裕治さん手作りのフォー、いざ実食です。
【夫・裕治さん】
「美味しい?星いくつ?」
【晴美さん】
「すごい」
【夫・裕治さん】
「フエ(ベトナムの都市)を思い出した?まだ食べる言うてる~」
”旅をして、美味しいものを食べる”…そんな願いを少しだけかなえた時間でした。
――Q:食べることは晴美さんにとって?
【晴美さん】
「生きることそのもの」