■「かなり厳しい…」 ボーナスもらえる時期が一変
冬のボーナスシーズンがやってきました。
本来ならうれしいこの時期ですが、街の人に”懐事情”を聞いてみると…
【サービス業(50代)】
「かなり減りました。休業期間がコロナ禍でありましたので、かなり厳しかったのは事実です」
【公務員(20代)】
「公務員です。下がってますね」
【運輸業(60代)】
「たぶん出ないかなぁとみんなで噂はしてた」
【自動車販売業(60代)】
「若干減らされてましたね。もともと給与も5%カットされてますので。生命保険はちょっと見直しました」
収入が減ったという人が少なくありません。
そんな中、不動産業者に増えている相談が…。
【不動産業者】
「ローンの支払いは厳しいですか」
【一部上場企業の正社員】
「厳しいですね。売却も1つの選択肢かな」
全ての世帯の6割が持っている「マイホーム」。
今、危機にさらされています。
■”夢のマイホーム” 手放す事情とは?
取材班は大阪府内の一戸建てで暮らす男性を訪ねました。
――Q:どれくらい住んでいるんですか?
【大工の男性(60代)】
「15年ほどなんですよ。中古で買ったんで」
大工として働く60代の男性。
妻と2人の子どもと暮らすため、『29年ローンで2000万円』のマイホームを購入しました。
全て返済するまであと10年あまりですが…
【大工の男性(60代)】
「2カ月程、仕事がなかった。部材がないので、組み立てられないんですよ」
新型コロナウイルスの影響で中国から建築部材が届かなくなり、3月~5月にかけて、収入が”ゼロ”に。
月8万円のローンがのしかかりました。
マイホームを売り、手放すことを決心した男性が頼ったのは『ローンが残った物件を専門で扱う』不動産会社です。
【大工の男性(60代)】
「先行きがね。これがまたぶり返す…ちょっと分からないですよね」
【不動産会社『任意売却119番』・富永順三代表】
「住宅ローンに関しては、これから銀行さんと交渉して、売却時間は多分半年ぐらいはかかると思うので」
金融機関は家を担保に融資しているため、家を売る場合、基本的には住宅ローンの残高を一括で返済しなければいけません。
男性の場合、ローンの残高は『900万円』。
家が500万円で売れたとしても、差額の400万円も同時に返済する必要があり、それが出来なければ家は競売にかけられてしまいます。
そのため、不動産会社は”任意売却”という方法で、金融機関に対し、差額の圧縮や分割返済ができないか男性に代わって交渉します。
男性は買い手が見つかり次第、長年住み続けた家から出ていくことになります
【大工の男性(60代)】
「普通に返せると思ったんですけど、まぁなるようになるしかないかなと」
不動産会社『任意売却119番』には、新型コロナウイルスが原因の相談が毎月200件~300件寄せられていて、年末年始は相談が特に増えるということです。
【不動産会社『任意売却119番』・富永順三代表】
「この冬のボーナスが大幅にカットになる方々とか、もしくは無いという方々が増えてくると、やっぱりお金のことで『今年はどうしようか』など(家庭内で)話し合う機会が多いのかなと思うので、年始は(相談が)多いですね、毎年」
■コロナ禍で家を売却 行政の支援は?
そもそも、家を手放さないで済むよう国や自治体からの支援はないのでしょうか。
【麻生太郎財務相】(2020年3月)
「住宅ローンについても、いわゆる返済等についての支援が必要」
「5万円ずつ返済のところ2万5000円にする、5年のところを7年にしてくれとか、いろいろな発想がありますから」
国は収入が減った人を支援しようと、金融機関に対し、返済条件の変更に迅速かつ柔軟に対応するよう要請。
10月までにあった申し込み約2万4000件のうち、97.7%について、金融機関は当面利息のみの支払いにするなど変更に応じてきました。
しかし、収入やローンの残高などを踏まえ総合的に判断するため、金融機関ごとに対応は異なります。
■借金覚悟で”マイホーム売却”…具体的な支援は?
記者は、一部上場の大手百貨店で働いている20代の男性を訪ねました。
営業の自粛などで、夏のボーナスは3割カット。
金融機関に住宅ローンの残高3300万円の返済条件を変えられないか、相談しましたが…
【百貨店勤務の男性(20代)】
「真夏のボーナスの時、こんな状況なんでって言ったら、(ボーナスが)出ないという証明書みたいなのを下さいと言われて」
「まじかと思って。それは厳しいなぁ…」
金融機関が提示した条件は『ボーナスがゼロの場合か、年収が半減したケース』…
男性は返済条件の変更に応じてもらえませんでした。
返済は月々8万円あまりに、年2回のボーナス払い10万円。
一時は食費などを切り詰めて乗り切ることも考えましたが、業績が改善する見通しは立たず、男性は借金が残ることを覚悟で家を売ることを決めました。
――Q:冬のボーナスは?
【百貨店勤務の男性(20代)】
「もっと減るんじゃないですかね。一番中途半端なんですよ僕、たぶん」
「処置を受けるまでも下がってない。けど、ジワリジワリみたいな…少しずつ気づいたら、あれ?みたいな」
年の瀬を迎えても先が見えない日々。
住まいを諦めなければならないところまで、追い詰められています。
<ニュース解説>夢のマイホームを手放さないために…
住宅を売却せずに、債務を減らせる支援が12月から始まっています。
(国の後押しを受けて、全国銀行協会などがつくる団体が主体)
地震や豪雨などの災害で被災した人のローンを減免する制度が『コロナ版』として、12月から適用されるようになりました。(失業や収入減少した人が対象)
▼住宅を売却した場合…ローン差額分の減免
▼住宅を売却しない場合…住宅ローン以外(車のローンやカード支払いの債務など)が免除されたり、減額される
本人が銀行に申し出た上で、同意が得られた場合、弁護士を通じて、債務整理の調停を行います。
この制度のメリットは、弁護士費用が無料であったり、ブラックリストにも載らない点です。新たな借り入れが可能で、『“生活再建”がしやすくなる』と言えます。