36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件…
検察は16日、青葉真司被告を殺人などの罪で起訴しました。
関西テレビはこれまで、青葉被告の主治医に何度も取材をしていました。
最先端の治療を受ける中青葉被告が主治医に明かした胸中とは…
■死亡する確率95%…病院に運ばれた青葉被告
~緊迫した手術中の様子~
「大動脈が断裂してる」
「やるだけやろう」
鳥取大学・医学部附属病院救命救急センターの上田敬博教授。
今年2月まで近畿大学病院で勤務していて、京都アニメーションの事件が発生した当日は、やけどの専門医として「被害者の治療」にあたろうと奔走していました。
【上田敬博教授】
「被害に遭われた負傷者を一人でも、うちはやけどに強いので送ってくれと(京都の)病院に片っ端から電話をかけていったんです」
事件の翌日、京都の病院から1人の患者が運ばれてきました。
意識不明の状態の青葉真司被告です。
【上田敬博教授】
「診て欲しい人がいると言われて、もしかしたらと思ったらやっぱりそうだった」
「(京都の病院の)治療的には限界なんで先生の所でなんとかならないかと言われて…」
当時の青葉被告は、死亡する確率95パーセントと言われる状態。
このときから4ヵ月間、上田教授は青葉被告の”主治医”として最先端の治療を施すことになります。
■わずかに残った皮膚から…最先端の治療とは
――『自家培養表皮の移植』――
全身の9割にやけどを負った青葉被告に、正常な皮膚はほとんど残っていませんでした。
わずかに残った皮膚の組織を培養しシート状にして、患部に移植していきます。
また、全身の皮膚を取り除いたため感染症の恐れもあり、毎日2時間かけて数人がかりで体重100キロを超える青葉被告の体を洗浄していました。
治療開始から約1ヵ月後、青葉被告は呼びかけに反応するまでになっていました。
【上田敬博教授】
「俗にいう『葛藤』がなかったのかということに関しては、葛藤はないです。目の前で絶命しかけている人がいるので、救命しないといけない、それが一番強い。被害に遭った人とその家族が・・・なんというんですかね・・・気持ちじゃないけど(青葉被告を)絶命させたら全部終わっちゃうというのがあって、(家族を)落胆させてしまうんじゃないかという、勝手な気負いがあった」
■回復する青葉被告が医師との会話「ありがとうございます」
10回以上の手術と24時間体制の看護で、青葉被告は去年9月、気管に入れていた器具を取り外し声が出せるようになりました。
そして後日、上田教授にこんな胸中を明かしました。
【青葉被告】
「自分は底辺の人間だ」
「生きてる価値がない」
治療開始から4ヵ月、青葉被告は車いすに移ることができるまでに回復し、京都市内の病院に転院。
そして今年5月、殺人や放火などの疑いで逮捕されました。
上田教授と共に青葉被告を担当した近大病院の医師は…
――:Q青葉容疑者との会話で印象に残ってることは?
【近大病院の医師】
「…『ありがとうございます』ですかね。やっぱり。すごく違和感は感じました」
「それを言われた時の自分の感情がですけど。たくさんの方の命を奪った人ですし、その人を助けたんやっていう実感が湧いたというか」
上田教授は、重いやけどを負った患者を1人でも救いたいと、青葉被告を治療したことで得た知識や技術を学会などで発表しています。
【上田敬博教授】
「死なしたら駄目というような形でやっていた。そして今、だいぶというか、かなり良くなっている彼を見ると、やっぱり犠牲になった方を、お1人でも同じような技術で救いたかった」
そして16日、青葉被告が起訴されました。 真相究明の場は法廷に移ります。
【上田敬博教授】
「救命されたことで、逆に彼に命の重さというのを考え直させられたのであれば、治療した意義はあると思っています。逃げずに正面から向き合って、隠さず真実を述べて欲しい」