【自然と暮らす・佐藤洋造取締役】
「8000㎡は超えていると思います、山も合わせれば…」
紅く色づいた小高い山。
110円の赤い糸から始まった物々交換は…、なんと山に変わっていました。
大阪の一人の男性が始めたプロジェクトは68日間で予想を超える展開に…。
大きな支援の輪が広がった「赤い糸プロジェクト」はどんな結末を迎えたのでしょうか
■令和版『わらしべ長者』 110円の赤い糸から、目指せ“スーパーカー”
大阪市鶴見区を拠点に活動するNPO法人「みらくる」の吉村大作理事長。
【NPO法人みらくる 吉村大作理事長】
「コロナによって影響を受けている方は、今後さらに現れてくるので、そうした方に何かできるような形のプロジェクトにしたいです」
「寄付を大きくしたいと思って始めたので、スーパーカーとかになればいいな…」
物々交換を繰り返し、少しずつ高価なものにして、最終的には寄付をしようと考えました。
人と人とを結びつけたいという思いを込め、100円ショップで赤い糸を購入。
今年9月、ホームページで交換を呼びかけました。
最初は飛び込みで電話をかけて、交換相手を探しました
【NPO法人みらくる 吉村大作理事長】
「毎回しんどいんですけど、ご提案させていただいた時に『詐欺の電話か』とか言われ、それ以上のもの出されへんでって言われること多かった」
ようやく、鹿児島県のコーヒー豆専門店が協力してくれることになり、110円の赤い糸は8000円の“コーヒー豆セット”に。
その後、『マンガの制作権』、『元プロ野球選手のユニフォーム』、『色えんぴつ2000セット』、『イヤホン100個』と…
吉村さんのもとに次々と交換の申し出がくるようになりました。
イヤホン100個を提供したのは、鶴見区で会社を経営する中谷さん。
社会の役に立ちたいとプロジェクトに参加し、手に入れた色えんぴつは、幼稚園に寄付しました。
――Q;何色が気に入ってる?
【鶴見幼稚園の園児たち】
「赤と青と黄色と緑…」
「家ではめちゃくちゃ絵を描く」
そして、色鉛筆と交換したイヤホンは驚きのものに・・・
■110円の“赤い糸”が『一軒家』に! 物々交換によって繋がる“人の輪”
【記者】
「提供なさったイヤホンが“物件”になったそうなんです」
【ゴールデンダンス・中谷明子社長】
「え!?そうなんですか!初めて伺いました」
大阪市鶴見区にある一軒屋。
見渡しのいいベランダがある、5DK(のべ85平米)です。
家の管理人は、“社会貢献に使ってほしい”と「最大10年間無償で借りられる権利」を提供してくれたのです。
【NPO法人みらくる 吉村大作理事長】
「赤い糸がまさかお家に変わるとはって…僕自身も信じられない気持ちが強いです」
一軒家の使いみちを募集したところ、近所の主婦が名乗りを上げました。
【主婦・ムロモトチエさん】
「人と人をむすぶにひっかけた“おむすび”を握って、ふるまえたらいいなっていうのがあって」
「せっかくなら、わくわくするものを握れたらいいな」
契約が決まれば、小物作りなどのワークショップをしながら、月に一回、日曜日におむすびを無償で提供する「おむすびラボ」をしたいと考えているそうです。
【主婦・bobinさん】
「共通の知人がいてその人からお話きて、何か使ってくれるんじゃないかと言って頂いたのがありがたいし、それこそ本当に赤い糸で繋がってるのかなって思います」
■一軒家と交換に受け取ったのは…なんと『飴270個』
多くの人が参加できるように、もう一度少額の”飴”と交換することに。
すると企業の記念品などをつくる会社が、交換を申し出ました。
【生駒時計店・生駒琢磨取締役】
「2、3、4…135本です」
取締役の生駒さんは、飴135個と7万円分の記念品を制作する権利を交換。
受け取った飴は、パパ友グループの子供たちに配ることにしています
【生駒時計店 生駒琢磨取締役】
「思ったよりも多い数でわくわくしてます」
「人と人との繋がりが希薄になってしまっている。それを人と人とが繋がっているんだよっていうことを伝えられるきっかけとして、飴を子どもに渡すことができたら面白いかな」
そして、記念品の制作権はHP制作権へ交換されました。
プロジェクト開始から約2カ月、信じられない連絡が吉村理事長のもとに来ました。
向かったのは兵庫県との県境、岡山県美作市。
なんと、HP制作権と交換されたのは、こちらの古民家と山です。
古民家は築100年にもなるといい、台所には「かまど」も…。
さらに裏庭や山がついて約8000平米にもなります。
【アルファクトリー・田中昌浩代表取締役】
「でかいなって思いましたね。しかも土地もついてるし」
「来るときも、見ていて全然住めるし、ものすごい“いいやん”って思いました」
古民家と山を交換した地元不動産会社の佐藤さんは…
【自然と暮らす・佐藤洋造取締役】
「(最初は)怪しい話なのかなって慎重に…」
「世界中大変な状況で提供できるものを物々交換でやっていく、それ自体は協力する人もいそうだけど、実際に吉村さんをはじめ、具体的な行動に移している」
「そしてここまで繋がってきたことにはすごいなと思いました」
売却すれば、約220万円(古民家170万円、山50万円)の価値があるということです。
■予想以上に広がる“支援の輪” プロジェクトの結末は?
プロジェクトの最終日となった11月30日、吉村さんはある場所に向かいました。
【NPO法人みらくる 吉村大作理事長】
「もう終盤なんですけど飴と車を変えてもらいにきました」
締め切り直前になって、飴と軽自動車を交換することが決まったのです。
【ジェイ・ポート 樋下茂代表取締役】
「みんなが喜んで笑顔になっていただくことが一番かなと思う」
「車ですけど、無機質なものだけど、笑顔で温かくしてもらえたらなと思っている」
【NPO法人みらくる 吉村大作理事長】
「最後の最後に車になって皆さんに役立つものだと思う。みなさんの底力をみた気がします」
「“まだコロナに負けないぞ”とか、“まだ大丈夫だから”とか、“なんとかしたい”とか…そういったお気持ちが底力としてあったんだなと感じます」
終的にたどり着いた山や車は、これから一括して売却し、収益は生活支援事業などに寄付することにしています。
物々交換をきっかけに広がった支援の輪…
赤い糸がたくさんの「人の優しさ」を繋ぎました。